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少女 1

私は、貧しい村の長の家に生まれた。

村長とは名ばかりで、父は威張ることもなく持っているものはなんでも皆に分け与えた。

この村は皆で助け合って日々を生きている、とても良い村だと思う。


ある日、父と山菜採りに出かけると、村外れの木の下にうずくまる男の子を見つけた。

「父さま、あの子はなにをしているの?」

一向にその場から動かない男の子を指差し聞いたら、父さまは悲しそうな顔をした。

「あの子の親が二人とも亡くなって、一人ぼっちになってしまったんだよ」

でも信じたくないんだろうね、あの場所で両親の帰りを待っているのかも知れないね。と父さまは続けた。

「じゃあ、うちに来てもらえばいいじゃない」

そう言うと父さまは首を横に振る。

「そうなんだが、いくらうちにおいでと言っても首をたてに振らないんだよ。きっと両親の思い出がつまった家を出たくないんじゃないかなぁ」

「ご飯はちゃんと食べているのかしら」

「それは、皆で交代でお世話をしているから大丈夫だよ」

「そうなの。でも、一人ぼっちじゃ淋しそう」

私は、男の子にかけより声をかけた。

「私は村長の娘よ。うちで一緒にくらしましょ?」

にっこりと笑ってそう言ったら、男の子はほほを真っ赤に染めてポカンと私の顔を見上げていた。

家に向かう間も、男の子はずっと私の顔を見ていた。

「ほらここが私の家よ、今日から一緒にくらそうね」

私がそう言ったら、男の子はハッとしたように、家をみて、私を見て、父さまを見て、ずい分慌てた様子だった。

それから男の子は、下働きの者の手伝いをするようになった。でも、まだ小さいからあまり手伝いにならなくて、そんな時は私が迎えにいって、一緒に畑に行ったり、木の実採りに出かけたり、そんな風に時を過ごした。

そして男の子は、私の大切な人になっていた。


成人したら私はこの人と一緒になるのだろうと思っていた。そんな矢先に、私の体に異変が起きた。

ある朝私は起きようとして起き上がれなかった。

体を支えて起き上がろうとしても、支えるうでが崩折れてしまうし、足にも力が入らない。

何が起きたのか分からなかった。私は大声を出して人を呼んだ。


村はそれを切っ掛けにして、浮き足立ったような騒ぎになった。

でも私は、それを気に止める余裕などなかった。


どうして?

なぜ?


そんな言葉が、胸を占めていた。






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