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Air Superiority!!!

『PROLOGUE』


 ――真っ青で、どこまでも高く見える天井。

 ――眩い光量が設定された、宙に浮かぶ照明。

 ――穴あきで、決まった形をしていない白い絨毯。

 これが、仮初めの世界(VR)でなければ、今すぐキャノピーを吹き飛ばして、ペイルアウト(緊急脱出)して、数十億円分の贅沢な空を、この身一つで独り占めしたかった。

でも、今は――――


《まもなく、目標空域――各機構えろ!》


 無線からは、生唾を飲む音が聞こえてくる様な静けさと、緊張が。

 各編隊の隊長機からの報告を基に、先ほどの無線の男が指示を伝える。

 おびただしい数の――()精密機械(・・・・)で出来たとされる――鳥の群れを追う形で、ぼくという鳥もまたこの空を飛んでいた。

 みんなの後ろを飛び、みんなの声を聴き、みんなの姿を見据え…………

 ……その更に先、遥か彼方、この群れが向かうその場所(空域)に、ぼくは焦点を合わせていた。

《そしてここからは個人回線っと……よォ、見えたか?》

「いや……時々うっすらと見え……たかもってだけで、まだ偵察スキルの範囲外。本当にこの距離でアイツは交戦してくるのか?」

《言いたい事は分かる。リーコンスキルやカスタムに特化したお前が捉えられない距離にも関わらず、あの野郎はこの距離でブチ中てやがったんだ。しかも一撃で、無誘導、何機も落とされた》

「僕みたいに、リーコン特化のスキルで、且つ僕以上の特化ビルド機で狙ったとしても、撃墜にはウィークポイントにクリティカルで最低二撃必要…………」

《あぁ。だから〝解らない〟んだ。公式の発表通り『バグデータ』なのか、海外のゲームデータ解析チームが言う『未実装のハイエンドNPC』なのか、俺らの弾丸調査で掴んだ『未発見の理論値機体とスキル構成の凄腕プレイヤー』という推測で合っているのか……アイツが一体何者なのか、さっぱりだ》

「…………」

 アイツ……としか呼べない程、正体が分からない存在と、今ぼくらは対峙している。

 そして、そのアイツを、たった〝アイツ一機〟を落とす為に、今ぼくらはアイツのもとへ向かっている。

 こんなゲーム史に残る様な、前代未聞の異常事態。たった1機に〝128機〟で挑む暴挙。

 だが、その128機を集め、指揮する人間は、『数で押せばいい』だなんて発想でこの数を集めた訳では無い。ましてや彼は〝アイツ〟に対して最も挑んだプレイヤーでもある。

 そんな彼が、この数を前にして『むしろ戦力不足だ』と言い放つような相手…………

 ぼくは無事成果を……ぼくに与えられた役目を果たす事が…………――――

《まぁでも、俺らが言える事は――――》

 ――その時だった。


「ジャス、飛翔体複数目視で捉えた!」


《チィッ》

 会話の最中、じっと見つめていた〝アイツ〟の居る方角から、無数の弾道がこちらに伸びているのが見えて、咄嗟に叫んだ。

《――全機緊急回避のち散開! 打ち合わせした順にフレア及びECMを射出! CIWSは温存しておけ!》

 眼前に広がっていた――様々な形やペイントのされた――空に浮かぶ壁が如く数の超大編隊が、ある程度の法則を持ちつつも、それぞれ思い思いの方向へ散っていく。

《おぉい少し大袈裟過ぎねぇかぁ? まだなぁんにも――》

「……! 別飛翔体直上! 急速降下! アクティブか、パッシブか……!」

《つべこべ言ってねェでさっさと避けろォ!!》

《わぁった分かりまし――――――》

 ノイズ。同時に轟音。HUDには、爆発のあった個所に【撃墜】のマーク。

 宙に浮かぶメニュー項目を弾き、編隊リストを開き、名前の背景が赤く染まっているプレイヤーの数を数える。

「全128機中、撃墜4機! さっきのはアクティブレーダー!」

《このクソ野郎! いいかテメェらキビキビ動かねェとあのクソッタレの後を追う事になっからなァ!》

 声を荒げ強引に編隊の指揮を執るジャズ。

《グラッセス! 情報を逐一報告しろ!》

「り、了解……」

 その声の矛先がこちらに向き、やはりつい一瞬身が竦んでしまう。

 焦り、言葉を噛みそうになる口をなんとか制し、情報伝達を再開する。

「……直下更に飛翔体、直上と同タイプと思われる!」

《真下から来るぞ! 俺より高度高い奴は上! 低い奴は速度上げて下に突っ込めェその方が安全だ!》

 僕が情報を伝え、ジャズはそれを元に全体へ指示を流す。

 今回の僕の役割は〝交戦〟では無く〝状況の分析〟だ。

 僕はジャズの目となり耳となり、ジャズはそれを元に手駒を動かし、口で士気を高める。

 ジャズが檄を飛ばすと、これまた音が割れんばかりに各々の言い方で《了解》と帰ってくる。

 こういった騒がしさに慣れていないが故か、少し頭痛がしてくるのを堪えて、ぼくは3Dマップやレーダーを参照しつつ、肉眼での情報も得ようと機体を反転、また反転――。

「――更に左右、同タイプ! 前方飛翔体分裂を確認! 直上更に飛翔体接近! 恐らく上下左右より何派か波状攻撃を仕掛ける可能性アリ! 敵との距離や攻撃方法から考慮するにこちらの戦力は読まれていて、それを踏まえての兵装変更及び波状攻撃で、こちらが敵をキルゾーンに持ち込む前に戦力を」

《いっっぺんに喋んな眼鏡(グラッセス)野郎!!》

「ご、ごめんなさい…………」

 ジャズの目や耳になるとはいえ、伝える情報の量を誤ると正確な指示が出来ない……のは解っているのだが、僕はそれが苦手だった。

 故に、本来僕が直接指揮を執ればいい所を、態々ジャズを介して指揮を執ってもらっている。

 ジャズもジャズで、「大雑把過ぎる指揮が多少マシになるから」と快く引き受け――もとい、僕に協力を依頼してきてくれた。

《まぁ良い整理する……全機よォく聞けェ!》

 さて、何故僕とジャズがこんな関係なのか……は、戻り過ぎてしまうので、

《あの正体不明機に、俺らが言える事ぁただ一つだ!》

 この戦いが何故起こっているか、どの様な過程で今ここにいるのか――――、


《――俺らの制空権、返して貰うそォ!》

《《《制空権に(to Air Superiority)!!》》》


 ――順を追って、話していこう。

「戦闘機でこう……ぐわーっからのダッでぎゅーんのばばばっドーンって感じの、あり得ない機動だけど格好良い空中戦ってギリギリ映画『スターウォーズ』くらいだよね」

「そういえばVRモノで戦闘機モノとかそーいうのあんまりないよね」

「丁度良い。ゲーム内補正で変態機動可能という事にして、VR空戦モノ書こう」

という三言即決で書いた作品の冒頭部分です。

あまりキャピキャピしたモノや、ネタだけ扱う様なネトゲ物ではなくて、ネトゲなりのギスギス感やノリノリ感を取り上げて書いてます。勿論“作品”としての浪漫やキャラクターも別でまた然りですが。

実際に僕がプレイして、そこから参考にしているゲームが少し多くあるので全部は載せませんが、所々その空気感が作れるように書きますので、「あ、○○かな?」とか考えつつ楽しんで頂けるように、また書く時は書きたいです。

実はこのゲームの設定資料を軽く書いてあるので、それを基に、またこれも気が向き次第、これは一作品として完成に持って行きたいなと思ってます。地味に二人主人公の凸凹感と、後に出てくる敵機の俗に言う『TAS』感が好きなのでw

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