2/6
~序章~
『俺はいつからこうして自ら眠っていたのだろうか? 眠りについてからどれくらいの月日が流れたのだろうか? この俺を目覚めさせる素質を持つ奴は、いったいいつまでこの俺を待たせるのだろうか……』
暗く、音のない世界でそんな考えだけが何度も巡る。
『それにしても――遅い…………遅すぎるっ!! 何十年、何百年と待ち続けてきたが、もう我慢の限界だ!!!』
怒りをぶつけようにも思考のみしか動かないので、どんどん物騒な考えが浮かんできてしまう。
『このまま俺がゆっくり待っているだけだと思ったら大間違いだっ! この俺を待たせるとは良い度胸だ!! 俺を待たせた事、後悔させてくれよう!!!』
暗い洋館の奥で、勝手に決意を固めている男。
この男が後に、ある青年の日常の平穏をことごとく砕く事になろうとは、この時、誰も想像すらしていなかった……。