◆なんで俺が欲しい物はいつも手に入らないんだ?!
宿屋に適当に荷物を放り込み、ツキヨさんを留守番に置いて
俺とリーヴェとイルルで飛行車のレンタル店を探すことにした。
飛行車は最近はあまり出回ってないから簡単に借りれる
と言ったのはリーヴェだったんだが。
世の中そんなに甘くなかったんだよな。
もうため息しか出てこねぇ。
「えぇ?!金があるのに借りれないってどういうことだ!」
哀れな町人相手に怒鳴り散らしているのはイルルだった。
「飛行車が壊れてて、半年後に修理素材が届くから営業再開はそこからなんです。」
「普通半年も営業しなかったら店潰れねぇか?」
イルル、右手で刀の柄を握るのはやめなさい(滝汗)。
「レンタカーは八百屋の合間の副業でして。」
道理で店主がのんびりと構えているわけである。
「どうしたらすぐに借りれますかねぇ?」
リーヴェも胡散臭い笑顔はやめなさい(滝汗)。
「そりゃ修理素材が届けばすぐにでも。」
修理素材はどこから届くのやら。
「もしかして取ってきてもらえます?」
「うぜぇ。誰もやるとは言ってない。」
イルル、言葉遣いにちょっとは気を付けてねー?!
この調子じゃチンピラ御一行様だな…。
重量級のため息が自然と漏れた。
きっと少しばかりエクトプラズムが混入してるに違いない。
イルルとリーヴェを押し退けて俺が前に出る。
平和的に事情を聴く。
最初からこうすりゃよかった。
素材自体はメルスベルク鉱山で取れる物で、
それを修理素材に加工してもらって始めて修理ができるそうだ。
イルルとリーヴェに聞き込みはやらせられないな。
再び重量級のため息をついたとき店主から同情するような眼差しを向けられた。
正直、先が思いやられる…。
「でさぁ…物流が滞ってるのってどこだ?」
メイン八百屋副業レンタカー経営の店を出た後イルルがボソリとつぶやいた。
「鉱山か、部品屋じゃねぇ?」
リーヴェがイルルの問いに応じる。
イルルとリーヴェは、まともじゃないけど
普通程度の思考力があって安心した。
念のために言っておくが
すっごく失礼なことを考えた自覚はあるぞ。
俺たちは部品屋へと向かった。
しかし、夕方を過ぎ夜に差し掛かっていたせいか閉まっていた。
「今日は無理だな。」
「そうだな。」
「明日明日。」
元々俺らはやる気がある方じゃないのでこんなものである。
熱意だけで魔王を倒せるなら今までの勇者の誰かが倒してるはずだっての。
ツキヨさんには悪いが俺たちは晩飯を食ってから宿屋に帰ることにした。
必要経費は国が出してくれるとはいえ元々は俺たちが納めた血税だ。
遠慮なく使うとしよう。
「たこわさ」
「オムライス」
「ジンジャーエール」
「お客様、申し訳ございませんがたこわさは本日はきれておりまして」
なんで俺が頼んだものだけないんだ…。
不満しかなかったが
料理はうまかったので
良しとする。
しかし
今日は人生最悪の厄日だ。
もう宿屋で眠って忘れてしまおう。