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勇者34歳  作者: 神剣 龍
■安穏とした日々を約束されたと思っていたのに
2/5

◆一癖も二癖もある仲間たち

まずは入社以来悪友といえる関係を築いたイルルに声をかけてみる。


「ぷっ…34歳の勇者w」


予想どおりの反応だがここでめげてはいけない。


「イルルは刀も使えるし素手でも戦えるし、適任だろ。」


見た目が可愛らしく

29歳という年齢を感じさせない幼い外見だが

実は刀を自在に使いこなせる特技がある。


難点は毒舌、ワガママ。


「延々と普段着ばかり作り続ける作業よりはいいか」


忘れていたが、

織工ギルドも今は地震からの復興で

服を大量生産している。


「作っても作っても終わらねんだ。」


いつの間にか寄ってきたリーヴェも愚痴を言う。


「会社辞めてぇw」


ここでリーヴェまで釣れるとはラッキーなのかアンラッキーなのか。


何しろ俺はリーヴェの特技を知らない。


「辞めたいならついてくればいいんじゃw」


「そうすっかw」


オマエが一緒にいたいのはイルルじゃねぇのかと心の中ではつっこみつつ

リーヴェの本当の動機はスルーした。




勝手についてくることになってるリーヴェ。


イルルがいつの間にか仲良くなっていた。

仕事はできる…らしい。


俺と同年代の33歳。


俺はこいつのことをよく知らないが

イルルがなついているから悪い人間ではないんだろう。


この際まともかどうかは言及しない。


誰が好きこのんで、

今までに討伐の成功例がない魔王退治に行くってんだ?


ついてくる奴なんて酔狂しかいないに決まっている。

反論は認めない。




「イルルちゃんも行くの?」


イルルのお袋さんが出てきた。


61歳現在無職。


教会横の病院でバイトしているらしい。


「心配だわ。ママもついていこうかしら。」


イルルのご両親の仲は南極が生温く感じるくらい冷えきっている。


あんたも旦那を置いて脱走したいだけじゃないのか。


とか思いつつ曖昧な笑顔で誤魔化す俺。

大人の対応である。


それに回復魔法が使えるイルルのお袋さんは誰よりも役に立つ…かもしれない。




そして奇妙なパーティが完成した。


イルル(侍:元織工職人)

リーヴェ(遊び人?:元織工職人)

ツキヨ(治癒士:元無職)




3人をぞろぞろと連れて城の近くにある本社へ行く。


「話は聞いたよ!行っておいでよ!」


胡散臭い無能上司の笑顔。


「大丈夫ぽこぽん君ならなんとかできるさ。」


言葉が軽いですね、役員さん。


そのとき、城からの使者が勝手に扉を開けて

役員室に入ってくる。


「この度ぽこぽん様に勇者の印が現れましたのでぽこぽん様はこの会社を辞めていただくことに…。」


「ええ承知しておりますとも!」


「少ないですがぽこぽん様が抜けるにあたって損失補填を…。」


使者は言葉の途中で運んできたでっかい箱を開ける。


中に入っていたのは大量の金貨。


「なんだこれ?俺は国に売られるってことか?」



「そっ…そそそそんなこと、ななな…ないない…よ!」


挙動不審になる役員。


「わかりやすく申し上げますと、そのとおりです。ぽこぽん様。」


オブラートに包むという表現を知らない使者のようだ。




「くっそこんな会社っ!や め て や る 〜 ッ !」


俺の絶叫は本社中に響き渡った。




「辞めるも何もそのアザが現れた瞬間からぽこぽん様は公僕です。」


そうなのか?!


「驚いたようなお顔ですが志半ばで朽ち果てるまで国が面倒を見ることになっております。」


やっぱりこいつら俺が死ぬの前提じゃねぇか!


「ところでそこにいる2人を連れていくのなら我が社から3人も抜けるということかな?」


イルルとリーヴェを見て無能上司が問いかける。


「そうですね、このままじゃ俺たち会社に殺されますし。」


イルルは

使者の前で馬鹿正直に事実を言ったが

もう俺にはこの会社が罰金で傾こうが

知ったことではない。




こんな会社、

国の労働組合に潰されればいい。





そして冒頭に戻るのだった。


ちょっとばかりシニアなパーティだし

それは散々色んな人につっこまれたんだけど


34歳で

錬金ギルドと自宅の往復しかしてない奴が

勇者適齢期のお子ちゃまと

お知り合いになれるわけがないんである。




え?


30過ぎても勇者適齢期の人と知り合える?


それは俺がプレイしてる人生とは別物だ。

参考にならない。





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