表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者34歳  作者: 神剣 龍
■安穏とした日々を約束されたと思っていたのに
1/5

◆始まりは些細なことだったんだ

「勇者ぽこぽんの誕生じゃ!」


国王に手を取られ勝手に天井へ向けられた。


なんか集まった人たちも不安そうな、不満そうな眼差し。


そりゃそうだろう。



ぽこぽんは34歳。


勇者を名乗るにはちょっとばかり年をとっている。


え?ちょっとどころの話じゃないって?


まぁ聞いてくれよ。


そもそもコトの始まりはこうだったんだ。


今朝起きたら


おでこにアザができていた。




オデコにアザとかできてても


34歳


当然仕事には就いてるわけで。


たかがアザだけで仕事を休めるわけもなく


今日も

働きたくないでござるとか言いながら

職場に行ったんだ。


職業は錬金術士。

錬金ギルドで毎日薬品作ってた。


天変地異クラスの大地震があったから

ここ3ヶ月の勤務時間は軽く900時間を越えている。


作っても作っても終わる気がしない…。




オデコのアザを隠しもせずに出勤する。


働く前にタバコで一服。


「よぅ、今日も働きたくねぇなぁ!」


喫煙所で

いつもどおりの挨拶をしてきたのは

織工ギルドのイルルとリーヴェ。


今日も仲が良さそうだな。


「会社爆ぜろw」


「禿同w」


朝からきゃっきゃと元気な連中だ。




「ぽこぽん頭どうしたよ?」


失礼な。

俺の頭はいたって正常。


ちょっと眠いのを除けばクリアな状態だ。


「そうじゃなくてそのアザどうしたし。」


アザのほうかよ。


「起きたらできてた。」


ありのまま今朝起こったことを話す。


「寝てる間にぶつけたか。」


「頭はヤバイぜ。病院行っとけよ。」


イルルとリーヴェに心配される。


「いやいや休んだら明日のノルマになるだけだし。」


このときは明日のノルマが増えるのが嫌で

病院に行くのを拒否した。




数時間後、


「ぽこぽん君に何かあったらボクが責任追求されちゃうんだよね!」


責任から逃れたい上司に

問答無用で教会の横の病院に送り込まれた。


あの無能上司め。


教会横の病院でイルルのお袋さんにアザを見てもらう。


痛くないのに氷が詰まった袋を渡された。


イルルのお袋さんは

俺にちょっと待つように言うと

どたばたと教会の方に走っていった。


あれはすぐにバテるパターンだなと思いつつ

痛くもないオデコを冷やしながら待つ。




教会の偉い人がばたばたと診察室に入ってきた。


いい大人が病院で走っちゃだめでしょう。


とか思ったけど曖昧に笑ってお辞儀。


大人の対応。


とか思ってたら。


「間違いない!印が!」


その後は印が印がと言われ


「印って何ですか?」


と聞いても答えてもらえず、

果てはお城から偉そうな人が来て俺をつれていこうとするもんだから


「だから印がなんだってんだ!?」


とブチキレて

やっと説明してもらえた。




城から来た使者は非難するかのような目で教会の偉い人を見たけども


「拙僧どもはこの印を見たときに報告する義務は果たしましたので」


お役所仕事だ。


一般人はお役所仕事をバカにする傾向があるが

自分の仕事する範囲をはみ出さないのも仕事では必要だったりする。


全部やってたら終わらないよマジで。


しかし善良な一市民である俺を不安にさせるのはいかがなものか。


俺がいらついてたら目付きが悪くなっていたようで

城の使者が腰も引け気味に説明を始める。



―ぽこぽん様のオデコのアザは勇者に現れる印なのです。―




え?




何の冗談?




え?




え?




それから城につれていかれ

前回勇者として旅立った少女が亡くなったことを知る。


前回の勇者が死ぬと次の勇者に現れる印とのことだった。


おいちょっと待て。


俺なら死んでいいとでも?


「と、言われましても勇者は代えの効かない存在ですので。」


何人の勇者が死んでるんだ。


「最も長生きした勇者で8年でございます。」


なんで34歳になって出てくるんだ。


「光の精霊の御心は我々人間のあずかり知らぬところにありまして」


出てくるならセオリーどおり10代〜20代の間に出てこいよ…。


平凡な人生を送れるものだとばかり思っていたのに。



使者と押し問答をしているうちに王様が出てきた。


「ぽこぽんよ、そなたが今回の勇者か。」


王様は残念そうだ。


すみませんねぇ、若者じゃなくて。


「まずは仲間を集めるがよい。1人で旅立った勇者は1年以内に天に召される。」


さらりと恐いこと言ってないか?


「生存率から言えば親しい者をつれていった方が長生きするようじゃ。」


それは俺が死ぬ前提で話してますよね?


「今まで誰も魔王討伐に成功しなかったから此度そなたが選ばれたと言えよう。」


前例がないものを成功させろと?


「知ってのとおり勇者は替えが効かんのでな…。」


人の話を聞こうとしない王様だ。


「とりあえず会社に報告したいんですけど。」


やっと口を挟めたかと思うと


「では8時間猶予をやろう。仲間を集めて再び戻ってくるのじゃ。」


理不尽しかない言葉だが勅命だ。


当面は最初は同期の奴らに声をかけて連れていってみるしかない。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ