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紺青のユリⅡ  作者: Josh Surface
妻女編 西暦28年 13歳
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第一章「新たな生活」第七話

「リウィッラ、どうして?」

「ううう、だって、ドルスス兄さん。メッサリナはぶりっ子なんだもん」

「ぶりっ子?!」


メッサリナがぶりっ子?

それは正に寝耳に水だ。単なる幼い女の子だと思っていたのに。年が近いリウィッラからすれば、そういう微妙な雰囲気を感じ取ってしまうのかもしれない。


「それにさ、アグリッピナお姉ちゃんは、あんなぶりっ子のブサイクばっかり可愛がって、あたしのこと放ったらかしだもん!」

「リウィッラ……」


そんなことないよ、リウィッラ!あんたは私と似てて好きだし、あんたはとても素直な性格だから、すっごく羨ましいの。あんたにあたしの名前を呼ばれると、本当に嬉しいんだから。


「まぁ、メッサリナはそうかもしれないけど、アグリッピナは結婚式の準備で大忙しだろ?協力しなくちゃ」

「分かってる~!分かってるの。アグリッピナお姉ちゃんには迷惑掛けたくないの!でもね、でもね」


するとまた末妹のリウィッラは、末っ子らしくドルスス兄さんへ泣きついてる。そんな姿を影から見せられたら、あたしは居ても立っても居られない。


「ほら!リウィッラ!こっちおいで!」

「お、お姉ちゃん!!?」


まるで主人の声を聞いて、駆けずり回る子犬のようだった。リウィッラは私の身体へ飛び込んで、甘えん坊になって泣きついてる。こいつはこいつなりに、いろんな事を我慢しているんだなって。


「バカだな~。あんたは気を遣わないで、素直に甘えればいいの」

「でも~!でも~」

「はいはい、よしよし。寂しい想いをさせちゃって、本当にごめんね」


すると今まで泣いていたリウィッラの顔から、パァーと明るい表情が姿を表して、いつもの元気な姿に戻ってきた。


「リウィッラ、あんたがメッサリナが苦手ならそれでもいいよ。でもね、あたしが今度グナエウスさんと結婚したら、親戚になるの。みんな仲良くしないとさ」

「うん……」

「大丈夫、あんたのお姉ちゃんは私一人だけだろ?あんたが困った時には、いつだって駆けつけてやっから」

「本当に?!」

「ああ本当に!」


微笑みながら見守るドルスス兄さんを尻目に、私はリウィッラと駆けっこしたり無邪気に遊んでいた。兄さんもまた、家族の中にあって孤独を抱えていたのかもしれないから、人一倍、リウィッラの寂しい気持ちを理解しようとしていたのかも。


「アグリッピナ様!!」

「あああ!?ジュリア?」

「ジュリアさん?!」

「ワァワァ!ジュリアさんだ!」


セイヤヌスの長女ジュリア。

親は母と対立しているが、彼女は以前に、父ゲルマニクスの弟クラウディウス伯父様の長男ダルサスと婚約をした事がある。不幸にも不慮の事故で結婚相手を亡くした彼女は、悲しみに打ちひしがれていた。そんな彼女の心を救ったのが、寡婦として生きる祖母アントニア様の勧め。ローマの最後の良心を護る、火床の女神ウェスタの巫女達の手伝いをしながら、ジュリアは純潔と処女を護っている。


「リウィッラちゃん!今日もとっても可愛いわね」

「ありがとう~リウィッラさん。前に貰ったお人形まだ持ってるよ!」

「本当に???嬉しいです!」

「こいつ、リウィッラは、ジュリアが作ってくれた人形が無いと寝れないんだよ」

「テヘヘ、実はそうかも」

「いっつも親指舐めながらな?」

「あ!お姉ちゃん!」

「それ内緒だっけ?」


さらさらしたおかっぱの髪が、そよ風と踊りながら、ジュリアはいつも子犬のように笑う。まるで慈母のような心。ここまで優しくて、穏やかな人柄は見たことない。まぁ少し不思議ちゃんのところはあるけど。


「ジュリア、今日はどうしたの?」

「お人形を作りにきました」

「でもジュリアさん、あたし、持ってるよ」

「リウィッラちゃんのじゃなくて、アグリッピナ様の」

「へ?あたしの人形??」


続く




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