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紺青のユリⅡ  作者: Josh Surface
妻女編 西暦28年 13歳
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第一章「新たな生活」第三話

「メッサリナ!」

「アグリッピナお姉ちゃん!」

「まぁ、わざわざ一人で来たの??」

「ううん、もう一人連れてきたんだ」

「まぁ!あんたは!」


ティベリ・ゲメッルス。

ドルスッス叔父様とリウィッラ叔母様の双子で、初めて会った時はウンコお漏らし小僧のくせに、生意気なガキンチョだった。双子の弟にゲルマがいたけど、ドルスッス叔父様が亡くなられた同じ年に亡くなってしまった。姉の高慢ちきなリヴィアは、ネロお兄様と結婚。今は一人でリウィッラ叔母様と一緒にいる。ティベリは後に養父のティベリウスの遺言で、兄カリグラと共にローマを共同統治するよう指名される人物となる。


「ティベリ!大きくなったねぇ、あんた、今いくつよ?」

「十歳だよ」

「あんときは、まだまだ四歳のガキンチョだったのがもう十歳だなんて」

「ガキンチョって言わないでよ、アグリッピナさん」

「だってそうでしょ?あんたのオムツには、いつも暖かいこんもりした……」

「だーーーー!ダメ」


するとメッサリナが不思議そうにティベリに聞き返してた。


「何?暖かいこんもりって?」

「な、何でもないよ、メッサリナ。何でもないんだ、うん」


ティベリのやつ、真っ赤になって照れてんの。ははーん、まさかメッサリナの事が好きなんか?もっとからかってやろうかな。すると、兄カリグラがフラッとアトリウムにやって来た。


「うん?アグリッピナ、お前誰と話してるんだ?」

「あ、ガイウス兄さん」


当時は想像すらしなかったけど、後にティベリウス皇帝の後に、若くしてローマ皇帝となるのが、このガイウス兄さんで、別名カリグラ。そして、後々に、ティベリを抹殺さえする非情な兄でもある……。


「こっちはリウィッラ叔母様の長男ティベリで、こっちはレピダさんところの長女メッサリナ」

「こっちは三番目の兄貴で、ガイウス兄さん」

「やぁ、ティベリ、メッサリナ。よく来てくれた」

「こんにちわ、ガイウスさん」

「ありがとう、メッサリナ」

「ども」

「なーんだ?ティベリ。カチカチになっちゃって。共に親戚同士仲良くやろうぜ」


兄カリグラは、外向けの顔の時には、とても気さくな人間になり、誰からも愛されるほどの人格者を演じ切れる。裏表のある兄らしい性格だが、短気な性格は、兄弟の中で一番飛び抜けている。この時も、その片鱗が強烈に出てきた。


「そう言えばガイウスさんて、小さい時から英雄ゲルマニクス様とご一緒に、戦場に出られてたんですよね?」

「ははは、まあな」

「リヴィア姉さんの話じゃ、軍靴のカリガから、"カリグラ様"呼ばれてたんですよね?」

「ああ、多くのローマ兵の猛者どもから慕われてたんだぞ!カリグラ様ってな」


この時までは、カリグラ神話は兄の自慢だった。だが、ティベリの余計な一言が、兄の逆鱗に触れてしまったのだ。


「で、何をしてたんです?」

「うん?」

「戦場で、軍靴まで履いてて」

「いや、だからそれは……。」

「"カリグラ様"って呼ばれてただけで、まさか何もしてないって分けないですよね??」


質問したティベリには、決して悪気は無かったと思う。子供らしい純粋な問いかけで、兄カリグラも決して機嫌を損ねるほどでは無かった筈だと。だが自分が今まで浮かれていた事が、実は無能の象徴であると言われれば別。


「ウッグググ!」

「ガイウス兄さん!!?」

「ティベリ?!」

「ガキくせに調子乗ってんじゃねぇよ!」


こめかみ辺りに血管をピクピクと浮かべ、眉間はまるで二つの渦を描くように、ティベリの首を締めた兄カリグラは怒り心頭だった


「ちょ、ちょっとガイウス兄さんってば!やめてよ!ティベリを離して!」

「うるさい!アグリッピナ。こいつは俺を無能呼ばわりしやがったんだ!俺が居なければ、ゲルマニクスお父様には勝利をもたらす事は出来なかったのにだ!!」

「ウッグググ、苦しいよ」

「今すぐここで殺してやる!!」


兄カリグラは本気だった。

そばにいる女の私にはどうすることもできず、ましてはメッサリナは怯えてあたしにしがみついている。兄カリグラは本当にティベリを殺すのだと。


「ガイウス、やめろ!」


だが、ティベリの首もとを苦しめていた兄カリグラの右手は宙を舞い、あっという間に地べたへ尻餅をつかされた。玄関からすかさずティベリの命を救った人物。それは私にとって二番目のお兄様。


「ドルススお兄様!!」


続く




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