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紺青のユリⅡ  作者: Josh Surface
妻女編 西暦28年 13歳
21/302

第二章「ローマでの結婚式」第二十一話

結婚式の当日。

アウグストゥス霊廟で、ゲルマニクスお父様から無言の返答を頂いた後に、私達はようやく食事会へと流れていく。場所はパラティヌス丘の聖道ヴィア・サクラからすぐそばである、ティベリウスの宮殿。取り仕切るのは大母后リウィア様だった。


「皆様、この度はアエノバルブス家の長男グナエウスと、ユリウス家の長女ユリア・アグリッピナの二人の結婚式の為に、わざわざお越しいただいたこと、この大母后リウィアは心から感謝します」


ティベリウスの宮殿には、本当に元老院の有力者や実力者、貴族の人達が集まっている。当然階級では、元老院貴族と騎士階級のみ。


「皆様の温かきお心遣いと、寛容さに溢れたお気遣い無くして、今後、夫婦として迎える二人の船出には、決してなり得なかったでしょう」


しかし、ユリウスとクラウディウス氏族の養父である、現皇帝ティベリウスの姿は無い。彼がいつも座る椅子は、親衛隊長官セイヤヌスを右隣りに従えたまま空席。


「今後もどうか、この若い二人のこれからを、皆様の一つの家族として見守って頂きとうございます」


大母后リウィア様のお声は、本当に腹部から発せられ、宮殿の奥の奥まで響き渡っていた。これが、何十年とアウグストゥス様のお側にいらした迫力なんだと、改めて感じた。


「おめでとうございます!アグリッピナ様!」

「ユリア・アグリッピナ様、おめでとうございます!とってもお素敵でしたわ!」


まるで餌を求める鳩の群れのように、私の周りには多くの淑女の方々が詰め寄ってきた。彼女達は私の花嫁衣装や化粧を褒めたり。今までの正餐で扱われてきた、ゲルマニクスお父様の子供という立場ではなかった。


「本当に。やはりさすがは、神君カエサル様とアウグストゥス様の血を受け継がれてらしゃいますわ」

「とっても凛々しく、お美しいお姿でございました」

「あら、アグリッピナ様は、あの軍神アントニウス様とアグリッパ様の血をも受け継がれてらっしゃるから、奥様、豪傑さも兼ね備えてらっしゃるのでございますのよ」

「そうでございましたわ、とんだご無礼」


これか。

この時にも、大母后リウィア様が仰ってらした、奥歯でぐっと堪えて、大理石のようにすました表情でいることが必要って。いちいち彼女達のおべっかに、口元開いて下品に笑顔でニコニコ応えていたらキリがない。


「そうね、皆さんの仰る通りかもしれません。ですが、それでもわたくし、ユリア・アグリッピナは、ユリウス家の長女としてだけではなく、夫グナエウスの妻として、慎ましくそばにありたいと、願うばかりです。ありがとう」


私は姿勢を崩さず、その群れから自分を追い出してやった。"佇まいというものが、人に圧倒的な存在感を見せつける"。私が幼い頃に、大母后リウィア様から教わった気品の一つ。私は何処かで、注目される事に酔いしれていたのかもしれない。


「おい、グナエウス。やられっぱなしじゃないか」

「……」

「あの女は勝ち気だぞ。このままでは、沽券に関わるぜ?」

「黙れ」


そう、グナエウスの正体が、正に私を待ち構えていたのである。


続く

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