自殺希望絶望少女
とても短いですけど、誰かの心に残ってくれたら、と思って書きました。見てくれたら嬉しいです。
さて、この状態、いったいどうすればいいんだろうか。僕の目の前には屋上のフェンスの外側に立っている少女が1人、いわゆる自殺というやつだろう。なんで、ちょうどよく僕が忘れ物を取りに学校に戻ってきたタイミングなんだ。とは思わずにはいられない。だが一つ嬉しい点を挙げるとするなら、その少女が美人だということだ。長い黒髪のストレート、黒い制服ととても合っている。
まあ、先程、『どうすれば』なんて心の中で呟いたわけだけど、『どうする』なんてもう決まっているから、これはその面倒くささから目を背けているだけだ。
見てしまったのなら、助けないと。そう決まっているから。
そう思って、呟いて、僕は助けるために一歩前に踏み出す。そして、大声で叫ぶ。
「ちょっと待った!!!」
「は?」
これから自殺しようとしている人に相応しくないほどの鋭い声が聞こえた。
「ちょ、ちょっと、落ち着いてくれ、まず話だけでも聞いてくれ」
俺の言葉を無視して下を覗いていた少女にさらに言葉をかける
「はあ、まあいいわ。なんていうか大体わかるけど。話してみなさい」
すると少女はこちらを見て、話してくれた
そう聞くや否や、僕は……
「死なないでください!」
土下座をしながらそう言った
「確かに予想外で想定外の行動と言葉だったけれど、そんなパッションしか感じないような説得でやめると思う?」
少しばかり、目をぱちくりさせた少女は気を取り直してそう言う
「それに、なんでそんなに自殺をやめさせたいのかしら。自分に酔っているの?それとも体目的だったりする?あなたなんてお断りなのだけれど」
「僕は自分のことを普通だと思っているし、君のことは全然タイプじゃないから僕もお断りだよ。って、そうじゃなくて、僕は自分のために君に自殺をやめさせたいんだ」
僕は土下座の体勢から徐々に立ち上がりながら言う
「私に自殺させないことのどこら辺にあなたのメリットがあるの?ただ単に、どちらも不幸になるだけでしょう」
まあ、その疑問は言われると思っていたから。少し面倒だけど、僕の本音を語ろう
そう思って僕は自信満々にカッコつけて言った
「僕は幸せに生きていきたいんだ。楽しく生きていきたいんだ。君がこのまま死んでしまうと僕は、『なんで助けられなかったんだ』なんて思ってしまってもう楽しく幸せに過ごすことが難しくなる。だから、僕は君を助ける。自殺なんかさせない」
するとさっきまでの呆れた目が変わり、嘲笑、諦め、そして少しの期待がその瞳に映し出される
「……なるほど、それでどうやって助けるのかしら。こっちの事情なんか知らないのに」
「うん。だから、教えてくれないかな。大雑把な触りだけでも」
「…それで、それだけで解決する気?私がどんなに助かりたいって思っても、行動しても何も変わらなかったのに」
こんどは憤りを感じる。目だけじゃなく言葉からも
「でも、君が前に行動した時は僕はいなかったよね。だから、もしかすると解決するかもしれないよ。1人より2人の方ができることは増えるしね」
「安心させるためなんでしょうけど、そんな自信がありますと言わんばかりの顔で言っても逆に説得力ないわよ。……まあ、いいわ。話すわよ、どうせすぐ死ぬつもりだしね」
少女はフェンスに捕まりながら周りの景色を見始める
「よくある話よ。ただこの高校でいじめられて、それが嫌で自殺しようとしてるだけ。……面白みもない話でしょう」
「いや、実際に受けている人がいて、自殺まで考えている人がいるんだ。面白いとかそんなの関係ないよ。…………それで、その口調は素なの?」
いつのまにかこっちを見ていた少女は明らかに呆れたような口調で話す
「はあ、せっかくいいこと言っていたのにカッコつかないわね。……この口調はいじめを受けている時にせめてもの反抗としてし始めたものよ。まあ結局、舐めてるのかって怒らせてさらにひどくなったのだけれど。それが今も癖になってるだけ」
ちょっと照れ臭くて流れを変えようとしただけなのに……ちょっと申し訳ないな
「それで、解決できそうかしら」
明らかにその先に“できるわけないけれど”が付きそうな言葉だ。でも
「できるんじゃないかな」
そういうと、少女は驚きを押し殺し、続きを催促してくる
「いや、まあ…学校に行かなければいいんじゃない?例えば、不登校になるとか、転校するとか」
「そんなこと…できるはずないでしょう」
少女は目を背けながら言う
「それは舐められるからってこと?どんな理由があろうと関係ないよ。実際に自殺までいってるんだ、逃げてもいいんじゃないかな」
「……逃げる」
「うん。辛いときは我慢したり、対抗したりせず逃げてもいいんだよ。ほら、目の前に殺人鬼が現れたら逃げるでしょ、それと同じだよ。いじめなんて犯罪なんだから、逃げるのなんて恥ずかしいことでもなんでもない当たり前のことなんだよ」
少し考える素振りを見せる。だけれども、すぐに頭を振る
「それでも、そんなこと父が許してくれるわけがないわ……」
「どんな事情があるのか知らないけど、命がかかってるんだよ。頼んだらなんとかなるんじゃないかな。それに、きちんと勉強できていれば不登校になっても別に問題なんかないから。学校は勉強するために来るところだからね」
「それに……父には話しずらいわ。迷惑をかけたくないもの」
どこか言い訳をするように少女は言う
「だから自殺するの?確かに、自殺したらもう苦しむことはないかもしれないけれど、幸せになることもできなくなるんだよ。だから、まだやることがあるのに諦めるのはもったいと思うよ。もし自殺するなら、人に頼って相談して全部試してみて、それでも無理だったらしてみればいいんじゃないかな」
持論だけれど、大体の問題事は誰かに包み隠さず相談することで解決すると思っているから
「ほら、僕も協力するし、不登校や転校するのが怖かったり寂しかったりするなら僕が友達になるからさ。ああ、嫌だったら僕の友達を呼んでもいいけど」
「……そこまでしなくていいわ。元々友達なんていないもの」
「…………でも……話してみるべきよね…父と…」
少女は少し俯きながら、呟くように言う
「ああ、でも絶対に無理な理由があるならいいけど……たぶん、ないよね?」
「…ええ、ただ単にプライドが邪魔しているだけ。逃げることも、父に相談することも。そんなことも、さっきまで気づいていなかったけれど。…たったそれだけのことだったなんて」
たぶん、それだけではなくて、普通が変わることが、環境を変えることが怖かったということも理由の一つなんじゃないのかと思って、怒られそうだから思ったままにした
「……ねえ、もし、全部試して手を尽くして、それでもダメで自殺するしかない、諦めるしかないってなったらどうするの?」
「そのときは自殺するまでの間に、他の人が羨ましくなるくらい幸せな日々を送らせるよ。君がやりたいことは全部させるし、今まで経験したことないような面白いこともさせる。せめて、少しでも幸せなまま死んでほしいからね」
「…そう」
すると少女は、フェンスを掴んだまま、後ろに体重をかける
「もう一度聞くわね。どうして私を助けようとするの?」
「もう一度言うけど、最初から最後まで自分のためだよ」
少女は、彼女は、少し嬉しそうに尋ねる
「本当に自分のためなら、今日だけやめさせてあとは知らんぷりすればいいじゃない。そうじゃなくて、私を本当に救おうとする理由は何かしら?」
「何度聞かれても、やっぱり自分のためだよ。僕は、僕の知っている人が幸せじゃないと悲しくなるんだ。僕の幸せには周りの人が幸福なことも入っているんだよ」
「ふふっ。やっぱり、あなたは自分に酔っているんじゃないかしら、それか、体目的。まあ、私はまだ売るつもりはないのだけれど」
彼女はフェンスの上に立って言う
「私、父と話すことに決めたわ。不登校にしてくれって。だから、友達になりましょう」
え?僕が混乱していると続けて話してくる
「あなたが言ったんでしょう。もし逃げるのなら友達になってあげると」
フェンスからこっち側に飛び降り、スタスタと歩いてくる
「まあ、言ったけどさ…ちょっと急っていうか、いや別に友達になるのはいいんだけどさ」
「だったらいいでしょう。それで、友達になったのだし、名前を教えてくれないかしら」
目の前まで来た彼女は手を伸ばす
「まだ言ってなかったっけ、僕は進藤葉流。えっと、よろしくね」
その手に、僕は手を重ねる。いわゆる握手だ
「私は黒井灯華。改めてよろしく、進藤くん」
そう言って握りかえしてくる
「それで、今から父のところへ行って説明しようかと思うのだけれど、一緒に来てくれないかしら。説明をサポートして欲しいの」
「まあ、僕が言ったわけだしね。そのくらいなら、いいよ」
「あと、私のことちゃんと幸せにしてよね」
「えっ」
「私が幸せじゃないと悲しいんでしょ。ほら、行くわよ」
そう言って彼女、黒井さんは僕の手を引いて歩き出す。
僕は今日この日、1人の少女を救った。その代わり、人生を賭けて幸せにしなければならなくなったわけだけど……まあ、それは後の僕に託そう。ひとまず、この達成感に酔いしれることを選択した僕は黒井さんについて行った。
読んでくれてありがとうございました。
この小説は自殺を推奨するものではありません。




