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二人と二人  作者: 木本 厚(きもと あつし)


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乾杯

「水上くん、ちょっと」と第一事業部の課長が声をかける。

部屋全体が水上に視線が集まる。「何でしょうか?」と長身の背広姿の男性が立ち上がり課長が立っている部長席まで大股で近づく。

「今回のプロジェクトなんだけど、君の提案で進めようと言う事になった。」課長が言う。「本当ですか?ありがとうございます」はきはきと答えた。

「と言う事で、君がリーダーとして進めてもらう事にしたから頑張ってくれ」と部長が席の背にもたれながら告げた。

「頑張ります」と言って頭を下げる。

水上弘明 27才 長身で顔も良く性格も良く早々と係長になった光崎商事の優良株である。多くの女性社員から憧れをもって見られ誰と付き合うのか、恋人はいないのかと噂されている。当の本人は屈託なく社内の女性人と食事に行くしグループで遊びにも行く。ちょくちょく美人の女性と歩いている姿が目撃されているが特定の女性はいない様である。一部の男性社員からはプレイボーイとも言われている。ただ、実力、容姿ともに言い訳出来ないほど出来るので社内で大きな問題は生じていない。出過ぎる釘はたたかれないという事なのかもしれない。未だに大学時代のグループと良く飲みに行っていると言う事からそこにお目当ての女性がいるのではとの噂もある。

「カンパーイ」と3つのジョッキが合わさった。洋風居酒屋で水上と大学時代の友達が飲んでいる。水上の左には光明寺 静香が座っている。 現在公認会計士としてバリバリと仕事をしている。右には石塚さおりがビールを飲んでいる。彼女は新進料理研究家として名前が売れて来たところである。「ごめん、遅くなった」と前の席に座ったのは坂本 剛 、マンション管理人である。「大丈夫、今乾杯したばっかりだから、もう一度乾杯しよう」と水上。光明寺が「そうね、ビールジョッキもう一つ」と店員に声をかける。もう一つビールが届いたところで4人でもう一度「カンパーイ」とグラスをぶつけた。

水上と坂本は大学の経済学部の同級生、光明寺と石塚は3学年下で、大学時代にひょんなことからグループで遊ぶ機会がありことになり最終的に残ったのがこの4人だった。

「ところで今日の集まった理由は何かあるの?」と光明寺が誰ともなく聞く。

「いや、特に無いけどみんな忙しくなってきたので先に予定を決めて会うという事で2か月前から決めていた事でしょ。」と石塚。

「いつも忘れているなぁ」と坂本が光明寺に突っ込むと彼女は頬っぺたを膨らました。「そんな顔は学生までだなぁ、いい大人がする顔じゃない」とさらに突っこむと「私は今でも子供ですよ」とにらみ返した。「それでは、今回はたまたまだけど僕にいい知らせがあった事をご報告します」と話をわって水上が立ち上がる。「立たんくてもいいんじゃない。あ、これおいしい、隠し味にみりんかな?」と石塚が突っ込みながら料理を探る。「まあまあ」と坂本。

「実は、今度プロジェクトのリーダーを任されました」と石塚を気にせずに報告したが「お前さぁ、こんなところでそんな事言って良いのか?」と坂本が静かに上目つかいで話を止める。

「大丈夫でしょ、内容はしゃべっていないし」と水上がビールをあおる。

「おまえ、俺何してるか知っているだろう」と坂本が姿勢をかえずに言う。

「ああ」と水上。

石塚が「マンションの管理人」とボソッと言う。

「マンションの管理人は単なる表の顔よ」と光明寺が小さい声で石塚に言う。

「え、どういう事?」

「坂本は、株の投資家でもあるのよ。そして、その腕はとんでもなくすごくてその界隈ではそれなりに有名なの」と光明寺が続ける。

「大した事ないよ」と坂本。

「大した事がないなら私の会計事務所の大取引サマになるわけないでしょ」と両手を組んで偉そうにしている。

「え、静香のとこの会計事務所ってチョー有名じゃない。私もお願いしているけど静香の取り成しで相手してもらっている様なものだもの」と石塚が目を丸くする。

「さおりだってお得意様ですよ。今や有名な料理家ですから」とちょこんと頭を下げる。「でも坂本くんは規模がちがって上の人も重要人物だって言っているもん。それを私が引っ張って来たから私も結構大きな顔が出来るの」とふんぞり返る。

「綺麗な顔も偉そうにふんぞり返ると不細工になる」と坂本がぼそっと。

「あのね、会社でも一応整った顔と言われているの不細工なんて言われた事はない」と返すと「そんな事を会社で言ったらセクハラで首になるから誰も言わないよ」とさらに返す。「だからあんたは……」というところで水上が「ちょっとストップ、話がそれたよ」と止めた。「話を戻すけど、何が問題?」と水上。

「俺、光崎商事の株の様子も見ているんだけど、中身の半分ぐらいは想像がつくよ。それによって売り買いも考える。つまりインサイダー扱いになる可能性があるかもってこと」と淡々に話す。皆が一瞬静かになった。「今の話は聞かなかっとことにする」と言ってた坂本はビールをグーっと飲み干し「すいません。お替り!」と店員に叫んだ。「ま、ま、ま」と光明寺が止まった時間を動かすようにみんなに声をかけた。「水上くんの事はおめでとうと言う事で後はえーっと何をオーダーしよう?ここは値段の割に料理がおいしいんだよね。」とメニューを開ける。

すかさず「あ、これおいしいんじゃない?」と石塚、「どれ、あ、写真がおいしそうワインにも合いそう」と光明寺。「ワインに切り替えようか?」と石塚。

みんな良いよという感じで合図をする。「じゃあ、いくつか料理を決めましょう。

さおり、ワインと一緒に頼んで」と水上がメニューを渡す。

「いっつもそうじゃん、いくら料理に詳しくても味まではわかりません」と言いながらも「じゃあ、これと、これとそしてこれ」と店員にオーダーする。

「ワインは…… お、居酒屋にしては良いのがあるじゃん」と言ってオーダーする。

「石塚のオーダーに間違いは無い」と水上。「それはそうだ」と坂本ものる。

「ほめたたえよ、そして支払え」と石塚が言う。「割り勘ね」とあっさり坂本。

「だよね」と光明寺。「だめか、ワインの試飲は水上にまかせる」と石塚。

「光栄です」と水上が頭をさげているとワインボトルが届いた。

水上が真面目そうな顔をして試飲を済ませた後、4人に注がれた。静かに飲む。

「旨い、おいしい、イケる、こんなもんだろう」と4人それぞれ一言。

その後ブッファーラ、骨付きの豚の足のグリル、リゾットと料理がなんだか色々な感じで出て来た。ただ、どれもワインとも良く合った。

美味しくいただいた後、店を出てスナックへと行く。

馴染みのスナック「KOHAN(湖畔)」のカウンターである。

店は広くも狭くも無いちょうどいい感じの広さで腕に良いバーテンとママそしてもう一人かわいらしい子の3人で回している。

入口を入り左手8 人程度座れるカウンターその向かい側に4~6人程度で囲めるテーブルが3つほどある。

カウンターに入口側から坂本、光明寺、水上、石塚と座っている。

各自それぞれウイスキー、カクテル、ブランデー、ワインと違うものをオーダーするがバーテンが手際よく目の前に出してくる。

香ママが「この4人で来るのは久しぶりじゃない?」と気さくに声をかける。「2か月ぶりでしょうか?」と光明寺が答える。

「そうね、男性陣はもっと短い間隔かしら?」と少し意地悪そうに言うと

石塚が「あ、坂本くんと水上くんは違うんだ。どうせ美人を連れて来てるんでしょ」と言うと「連れてくる子が美人かどうかは別にして来てる」と坂本。「僕は美人と来てるけど光明寺さんや石塚さんにはかなわないレベルの子と」と水上。

「別に私たちを持ち上げなくても良いわよ、まあ静香を超えるのはそういないとは思うけど」と石塚。「石塚は美人というより、可愛い系だろう光明寺とは違う美人だよ」と坂本。「あれ、坂本くんがさおりを持ち上げてる」と光明寺が割って入る。

「光明寺は、誰が見ても美人系だろから言う事はないよ」と坂本。

「あら、それでも言ってほしいのが女性ってものよ」とママが一言。

光明寺が「水上くんは、色々ともてるから毎回相手が違うのよね」と坂本への攻撃を水上に変えた。「見てるような事をいうな。でもあたってるけど…… 大体食事の後に飲みに連れて行ってと言われるからここに来てるんだけど」と水上が言い訳の様に前を向いて言う。「そしてお持ち帰り」と光明寺が水上と同じ様に前を見て言う。「持ち帰りはないな。駅でサヨナラか、タクシーに乗せてバイバイだな」とさらっと言う。「本当?」と石塚。「ほんとほんと、デートはするけどそこまでかな。それで大体おしまいで次は無いね、だって、デートしてても面白くないし会話してても楽しくないからそれでおしまい。」とあっさりと言う。

「フーンそうなんだ」と石塚がワインを口に運ぶ。「で、坂本くんは?」と石塚。

「僕も大体、別れる時かな?」とぼそっと言う。

「えー」と光明寺。「なぜかここで飲んで黙っていると彼女がスーッと出て行くんだ。それで終わり」「追いかけないの?」と石塚。

「うん、もう色々と話したり、喧嘩もしたりしたから」と何かを思い出すように言った。石塚と光明寺は黙ってしまった。ママが「だからいっつも静かなんだ」と一言。「逆に水上さんは、よくしゃべっているわよね」水上にふる。

「場が持たないからですよ。で疲れちゃうし楽しくないのでそれでおしまいです」と苦笑い。「二人ともモテるけど大変ね」とママが半分呆れながらバーボンを飲む。「でも、この4人は長続きしているわね」と4人を見る。

「まあ、何となくわかるわ」とママがポツンと言った。


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