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異世界転移したら反抗期の娘もついて来た。しかもどうやら俺より強いらしい…  作者: 三毛猫ジョーラ


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最終話 金色の大豆


 魔王の部屋に静寂が訪れた。


「やった……やったー! 倒したー!」


 咲耶がぴょんぴょんと飛び上がりながら喜んでいる。どういう訳か呂布と両手でハイタッチをしているじゃないか。


「ううっ……」


 倒れていたアレックスのうめき声が聞こえた。おれは急いで彼の体を抱え上げた。


「大丈夫か!? マリアさん! こっちへ!」


 マリアさんが慌てて駆け寄ってきた。急いで回復の呪文をかけると、アレックスがようやく意識を取り戻した。ホッとしたのも束の間、突然、部屋全体が激しく音を立てて崩れ始めた。


「まずい! 逃げるよみんな!」


 テルマが叫び走り出す。おれはアレックスに肩を貸しながら出口を目指した。

三人はすでに外に出た、後ろからは崩れ落ちていく瓦礫の音が聞こえている。

あと少し、もう少しで出口だ……。


「どれ、最後くらい力を貸そう」


 刀からそう声がした。信長の姿が現れおれの体と重なる。

するとみるみる力が――


「ぐっ! 体が重い……」


 力がみなぎるどころか足が急激に進まなくなった。


「いや、すまんすまん! 久し振り過ぎて体がなまっておった! わっはっは!」


 いや笑い事じゃねぇよ! このままでは二人共瓦礫の下敷きだ。おれは渾身の力を込めてアレックスを出口の外へと放り投げた。後はおれが走り抜けるだけ。


「パパーーっ!!」


 咲耶がこっちへ手を差し伸べている。動け! おれの足!


 するとその時、どこかで聞いた音が――


 「バチンッ!」


 また切れた。アキレス腱が……。

轟音と共に目の前が真っ暗になった。






 目を覚ますと薬品の匂いがした。顔を上げを周りを見渡すとどうやら病院のようだった。ベッドの横では咲耶がゲームをしていた。おれの視線に気づいたのか、ゲームの手を止めイヤホンを外した。


「あっ、起きた。ママー! パパが起きたよー」


 咲耶が振り返りながら声をかけると、病室の外から真樹がやってきた。


「まったく……なんでアキレス腱切って気失うのよ? どう? 足痛む?」


 ベッドの手すりに手を掛けながら真樹がおれの顔を覗き込んだ。

おれは思わず彼女の手を見る。魔法とか出さないよな?


「う、うん。痛くはないかな。ところで、なんでおれ病院にいるの?」


「体育館で気絶したんでしょ? 覚えてないの?」


 真樹が言うには、おれはアキレス腱を切ったショックで気絶したらしい。そして救急車で運ばれ、怪我の処置を受けて今に至ると。


「そっか……」


 やっぱりあれは夢かなんかだったのか。確かに異世界転生なんてマンガやラノベの話だよな。咲耶の様子もいつも通りだし。


「一応三日分の着替えは持ってきたから。会社には明日私が連絡しておく。じゃあ私達帰るわよ? なんかあったら連絡して」


 そう言って真樹は病室の出口に向かった。咲耶はおれの顔をじっと見ていた。


「あのさ、咲耶。おれ達――」


 喋ろうとすると咲耶がゲーム機をおれに押し付けた。


「これ貸してあげる。病院だと暇でしょ? ちょっと前のゲームだけど結構おもしろいよ?」


 そう言って咲耶がゲームを起動した。画面に現れたのはドラゴンや魔法使いや剣士のキャラクター。ちらっと武士のようなキャラも見える。


「これね~武器に歴史上の偉人が宿っててね、戦闘で助けてくれるんだよ。信長の刀だけは選んじゃダメだよ? 使えない武器で有名だから」


 そう言って彼女はニヤリと笑った。それってもしかして……。


「あとこれ、無事治りますようにってお守り」


 咲耶がおれの手を広げ何かを握らせ、そして耳元で囁いた。


「オニハソト、フクハウチ」


「え?」


「じゃあねパパ! お大事にー」


 咲耶は手を振りながら病室から出て行った。握った手を開いてみる。

するとそこには金色の大豆が一粒、手の平の上に乗っていた。





 手術も終わり、おれは無事に退院できた。まだ松葉杖はついているけどもう大丈夫だ。あれから、咲耶と異世界について何度か話した。やっぱり娘もちゃんと覚えているらしく、どうやら本当に俺たちは異世界を旅したらしい。


 おれは気を失っている間に。そして咲耶は部屋でうとうとしている時の出来事だったようだ。


 あれ以来、咲耶はちゃんと学校に行くようになった。なんでも登校拒否になったのは担任の教師にいろいろ嫌がらせをされていたらしい。


「おまえなぁ、そんなのちゃんと親に言えっての」


「だってぇ、パパとママに心配かけたくなかったからぁ」


 上目遣いでそんな事を言った。


「うっ……いつの間にそんな技を」


「あはっ。でももう本当に大丈夫。あのクソ森川の顔の魔王を倒したでしょ? なんかあれ以来いくら睨まれても平気になっちゃった」


 娘はそう言ったがそれだけではないような気がする。最近の咲耶は昔みたいに明るくなった。きっとあの異世界で何かが変わったのだろう。


「そういえばさ~パパが見えてたのはどんな魔王だったん?」


 おれは焦った。死んでも真樹が魔王だったとは言えない……。


「ま、まぁあれだ! あっそうそう、そういえば金の大豆はどうしたんだ?」


「あーあれ? あれなら庭に植えといたよ。もしかしたら天まで伸びてまた異世界に行けるかも!」


 咲耶は嬉しそうに笑っていた。今度はジャックと豆の木かよ。

でもおれもできればそうなって欲しいと思った。

また咲耶と、そしてあの三人と一緒に旅をしたいもんだ。





     ――完――





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