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モデル転校生に一目惚れした私は彼女と絶賛百合ライフ中でしたが、実は極度のメンヘラで追い詰められています  作者: 結奈城 黎


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第8話 私たち、ズッ友だからね!

私はそっと彼女のストローに口をつける。


口の中にキャラメルの甘ったるい味が広がっていく。

タピオカもモチモチしていて美味しい。


けれど…!


「ん、どうしたの?」


美月の大きい瞳が私を覗き込む。


間接キスってことを忘れて味わいたいのに、美月の顔が近すぎて嫌でも考えてしまい、恥ずかしくて耳が真っ赤になる。


「う、うん……美味しかったよ…」


「そう?良かった」


小声でつぶやいた美月はそのまま私のカップをとると、これ見よがしに口を付けた。


「…うん、やっぱり甘いね」


それ、どっちのこと言ってるの!?


心臓がオーバーヒートしそうになる。


私の頭の中は紅茶に入れられたミルクのように、恥ずかしさと好きな気持ちが混ざり合っていく。


ふと見上げた美月の横顔は綺麗だった。


それはまるで、暗い夜空に輝く三日月のようで。


彼女の何かが欠けたその儚さに、惹かれていたんだ。


~~


食べ終わった私たちはお店を出て、二階へと上がっていた。


店の中心のイベントスペースがよく見えるエスカレーターへと乗る。


「タピオカ美味しかったね!

今まであんまりタピオカ飲んでこなかったんだけど、これはリピートしちゃうな~」


「ふふ。愛ちゃんが喜んでくれて何よりだよ」


「美月はよく来るの?」


「ん~そこまでは来ないかな。モデルやってると甘いものとかあんまり食べれないから」


「そっか。じゃあ今日はありがとうね」


「ううん。むしろ、愛ちゃんと一緒に来れたから私の方が嬉しかったり?」


「それは照れるな~」


エスカレーターを降りてしばらく歩くとゲーセンが見えてくる。


その入り口にはデカデカとプリクラを撮る機械が何個も置かれていた。


私と美月は一番正面にあったプリ機へと入る。


中は思ったより狭くて、美月と肩が触れ合う。


美月はオフショール(肩出しされている服)なため、健康的な生肌が艶めかしい。


硬貨を入れると謎の洋楽?らしき曲と合成音声が流れ始める。


「私、プリはじめてなんだよね…」


「大丈夫だよ~!リラックスリラックス!」


2人がカメラの視界に入っていることを確認すると、合成音声は意気揚々に指示してきた。


「モードを選んでね!」


どうやら、友達、恋人、大人数っていう3つのモードがあるらしい。


この場合、モードは友達になるだろう。


「じゃあ恋人モードだね!一緒に盛り上がっていこう!」



──違うが?



「ちょっ!どういうこと美月!?」


「ごめ~ん、愛ちゃん」


気まずそうな顔で美月が見てくる。


「間違えちゃった…」


「いやいやいや!?何してるの!?」


「いや、ごめん!ほんとに」


恥ずかしい気持ちと一握りの怒りたい気持ちが溢れてくるけど、今は我慢!


「…仕方ない!もうこうなったら恋人として楽しもう!」


「……っ!うんっ!」


何だか美月は頬を赤く染め、妙に嬉しそうだった。


再び合成音声がナビゲートし始める。


「じゃあまずは2人でハートマークを作っちゃおーっ」


「は、はい…」


私は照れながらも半月を作った右手を差し出す。美月の右手と合わさると、ハートが生まれた。


緊張と照れで顔がものすごいことになってそうだけど、必死に笑顔を作る。


いつも私をからかってばかりの美月も今日だけは、顔を真っ赤にして私から目を合わされなかった。


「はいポーズ!」


その声と共にパシャ、とフラッシュが光る。


その後は手を繋いだり、肩を組んだりと割と羞恥心が刺激されるポーズが続いた。


陽キャの方々は、よくこれを楽しめるな。


…と思っていたのだが、美月曰く陽キャは自分の顔が加工される様を楽しんでいるらしい。どっちにしろあまり理解できないが、美月が楽しそうなら私はそれでいいや。


続けて次のポーズへと移る。


「最後のポーズは~、ハグ!」


~~っ!


思わずそのオーダーに悶えそうになる。


確かに、恋人モードなんだからハグがあってもおかしくはないけど!


「愛ちゃん…」


美月は私に対して腕を広げて待ってくれていた。


小悪魔の照れた姿は、言葉ではうまく表現できないけどすごい可愛いらしい。


胸の高鳴りが抑えきれぬまま、美月の腰へとゆっくり手を回す。


そのまま美月を手繰り寄せると、ゆっくりと抱きしめた。


美月の柔らかい肌とやや高めの体温が全身を包む。


美月の胸からは心臓の鼓動が聞こえてきて、美月の生命の鼓動を感じると共に、美月もちゃんと恥ずかしがってるんだな、という高揚感が得られた。


抱き合っていた時間はシャッター音と共に、すぐ終わりを告げる。


私は手をほどくと、2人の距離は元通りになった。


「……めちゃくちゃ恥ずかしかったね」


「ほんとだよ、もう」


私たちはプリクラから出ると、付属の台で先ほどの写真をデコり始める。


「って、私の目でかすぎない!?」


「プリクラってこんな感じだから…」


「いや、もうこれ宇宙人だって」


そう言うと美月は、愛ちゃん面白い視点だね、なんて言って吹き出した。


プリクラの写真には、文字を入れたり、絵を描いたりできるらしい。


私は美月の顔の横に、猫のイラストを描く。


「あ~、ネコちゃんだ。愛ちゃん絵上手いね」


「へへ、そうでしょ。美月、前ネコ好きって言ってたし」


美月は、何書こうかな~なんて悩んでいたが、やがてペンをとるとハグ写真の下に、ピンク色のペンで文字を書き始めた。


──私たち、ズッ友だからね!


「えっと、これはなんかプリクラの定番っていうか!あと恋人の写真だからちょっと恥ずかしいっていうのもあるし…!」


「あはは、美月焦りすぎだって。それに…」


私は一息置くと、美月の顔を見る。


「私だって、美月とずっと友達でいたし」


「そっか、私たち相思相愛だね」


そう言うと、私たちは向かい合って笑った。


~~


プリクラを撮った後は、服を買おうと思ったけどいい感じの服が見つからなくて結局買わなかった。


あまり遅くなるといけないため、夕暮れ空が見えてきたタイミングを境に私たちは帰路へとついた。


美月は今日の出来事がよほど楽しかったのか、


「えへへ、モデル用のインスカに匂わせ写真あげちゃおっかな~」


なんて電車の中ではしゃいでいた。ちなみに美月のインスカグラムはフォロワーが6000人くらいいる。


そんな人数相手に匂わせする度胸はなかったので、美月にはなくなく断っておいた。


2人で過ごす時間はあっという間で、電車はそのまま私たちの駅へと着く。


駅を出て、しばらく暗い夜道を歩いていたが、次第に私の家と美月の家への岐路へとたどり着いた。


今日は名残惜しいけど、これでお別れだ。


「またね、愛ちゃん」


「美月も。バイバイ」


そう言って、2人の時間は終わりを迎える


──はずだった。


その言葉を言い合った次の瞬間、ザアーッと音を立てて雨が降り始めた。


それはたちまち強くなり、無数の雨粒が地面に打ちつけられていく。


あいにく傘は持ち合わせていない。


「愛ちゃん!」


美月は私の手を取ると、そのまま駆け出す。


水たまりを踏んづけ、アスファルトを走る。


しばらく走ると、美月の家が見えてきた。


そこは、白い壁の二階建ての一軒家だった。


初めて見たけど、大きい。


ワインレッドの扉を開けると、美月に家に入れてもらった。


「お邪魔します…

大丈夫?こんなずぶ濡れで入っちゃって」


「いいから。愛ちゃん、風邪ひいちゃうよ」


美月を玄関でぐちょぐちょの靴を脱ぐと、そのまま上着を脱衣し始めた。


「ちょっ…!美月、何してんの!?」


「こんなに濡れてるんだから、身体ちゃんと温めないと。ほら、愛ちゃんも脱いで」


「あ、うん、分かった。…て、え、何で!?」


「一緒にお風呂入るからに決まってるじゃん」


今から美月とお風呂入るの!?


まずい、心臓が過去一バクバク言ってる。


更衣室ですらあんな感じになるのに、お風呂ってそれ…私どうなっちゃうの!?



次回──第9話 一緒にお風呂なんてムリムリ!(ムリじゃなかった!?)

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