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モデル転校生に一目惚れした私は彼女と絶賛百合ライフ中でしたが、実は極度のメンヘラで追い詰められています  作者: 結奈城 黎


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第5話 好きだよ

私はベンチに行儀悪く寝転がると、美月の太ももにそっと頭を乗せた。


耳に彼女の柔肌が触れると、心臓がバクバクと音を鳴らす。

体中の血液が顔に巡ってるんじゃないか、ってくらい顔が熱い。


こんな顔、美月に見せられないよ…


美月から溢れる香りが、私の肺を静かに満たしていく。


今日の美月はいつもの花のようなフローラルな香りではなく、汗拭きシート特有の清涼感のある香りを纏っていた。なんだか鼻の奥がスースーする。


ふと美月の顔を見上げると、彼女は慈愛に満ちた表情で佇んでいた。目が合ってしまい、赤い顔を隠そうと思わず顔を背ける。


けど、美月はそんな私の気持ちも知らず、


「顔が真っ赤だよ、愛ちゃん」


「〜〜っ!」


ささやくような甘い言葉で、私のハートを射止めてくる。


その言葉は、あまりにもこそばゆい。涼しい風が吹いても、じんじんとした熱が耳に残り続けた。


そしてしばらくの間、私たちは言葉を交わすこともなく、2人だけの時間を味わっていた。


私も美月も互いに触れ合い、互いの温もりを感じ合う。それが、夏の終わりの乾いた空気には、丁度よかった。


美月の太ももに触れているという気恥ずかしさの一方で、授業を抜け出して膝枕してもらってるというこの状況への背徳感を感じる。


何の変哲もない体育館裏の並木が異国の森のように思え、時間が流れるのが遅かった。


このまま、時が止まってしまえばいいのに──


そう思ってしまうほどに、その時間は心地よかった。


その静寂の中、美月は私にそっと話しかける。


「ねえ、私の膝枕気持ち良い?」


「……うん…」


気持ち良いどころか、極楽なまである。


「愛ちゃん、今回は素直だね」


美月の声は、まだまだからかい足りないとでも言うようだ。


けど私からしてみれば、頑張って取り繕っているだけで、めちゃくちゃ恥ずかしい。


彼女の言葉は、弾むように続く。


「じゃあ、私の膝枕好き?」


美月はニヤニヤと笑いながら、私を見下ろす。


「~っ!

もうっ!美月、いっつもワンパターンすぎる!

今回はその手には乗らないんだから!」


「えー?逃げるの?」


「………ううん、今回は逃げない」


美月の子供じみた煽りに対抗するように、私は彼女をじっと見つめる。


私だって、やられっぱなしじゃいられないんだ!


「私、好きだよ。美月も、美月の膝枕も」


勇気を振り絞ってその言葉を吐く。

胸の内を吐露するようで、なんだか今までとは違うドキドキがあった。


次の瞬間、私たちの間を風が通り抜ける。


枝が揺れ、葉が宙を舞う。ひゅう、と風が空気を切った。

それにつられて、彼女の髪も風になびく。


私の言葉を聞いた美月は一瞬、頬が赤らめたように見えた。


だが、それは本当に一瞬でそのまま風に吹き消されて見えなくなってしまう。


「…ふふ。愛ちゃん、言うようになったね」


彼女は不敵に笑う。その顔は、どこか嬉しそうだった。


「そりゃあ、私だってからかわれてばかりじゃいられないし!」


「うんうん、じゃあこれからも頑張ってね」


どこか挑発するようなその眼差しを受け止める。

また美月との距離が少し縮まった気がして、そしてようやく彼女と対等になれた気がして、胸の奥が静かに満ちていく。


「ちなみに」


美月はそう言葉を告げると、一息おく。


「あと5分で授業終わっちゃうって話聞く?」


「えぇ!?」


私はあわてて起き上がる。


よろけそうになりながら、そのまま美月の手をとる。


「急がないと!美月、転校初日に叱られちゃまずいって!」


「えへへ。そしたら不良デビューかな?」


「そんなこと言ってる場合じゃないよ!」


私たちは、木漏れ日が揺れる並木道を駆け抜けた。


足元では風に舞った葉がふわりと跳ね、頬を撫でる風が心地よい。

私たちはそのまま体育館目指して走っていった。


~~


キーンコーンカーンコーン


チャイムが学校の終わりを告げる。

美月と過ごす初めての1日も終わり…と考えると何だか物寂しい。


もちろん明日だって会えるわけだが、私は特別な1日というものにどうしようもなく、意味を見出そうとしてしまう生き物なのだ。


そう思っていると、美月がスマホ片手に私に話しかけてくる。


「愛ちゃん、LIME交換しない?」


「あ、うん。たしかに、まだだったね」


私もカバンからスマホを取り出す。


美月のスマホに表示されたQRコードを読み込むと、猫のアイコンをした可愛らしいプロフィールが現れた。


「可愛い~!これ、美月が飼ってる子?」


「ううん、これはいとこので…マロンちゃんって名前なんだけど…」


一通り話すと、美月はスマホをギュっと握りしめ、カバンを背負った。


「えっと愛ちゃん、引っ越しの荷ほどきがまだ終わってないから、今日は帰るね。また明日!」


「うん、また明日」


そう言って、私は遠ざかる彼女の背中に手を振る。


また明日。

それは、彼女とまた会うための切符だ。


何だかもうすでに明日が待ち遠しい。


美月に、また会いたい。


「って流石に、美月のこと想いすぎか」


私は呟くと校舎を出る。


雲の端が金色に縁取られ、夕暮れが空を染めていた。


ついこの前まで日が燦々としていた時間帯だったのに、季節が流れるのは早いものだ。


私は帰路へとつく。

沈んでいく太陽が、私の影を伸ばしていた。


~~


その日の夜。


私──高野美月(たかのみつき)は、真っ暗な部屋にいた。


ここが、私の新しい家、新しい部屋。

まだ段ボールが床を占領しているけど、少し片づければすぐ私好みになるだろう。


スマホを触る。

真っ暗な空間にスクリーンの人工的な白い光が満ちる。


ロック画面に映っているのは、私の愛しい人──愛ちゃんだ。


ロックを解除し、画面をスクロールすると、写真アプリを開く。


そこにはズラッと愛ちゃんの写真が並んでいた。多分100枚くらいかな?

あまり数は多くないけど、初日にしては十分な数だと思う。


その1枚1枚を穴が開くようにじっと見つめる。


私に膝枕されている愛ちゃん、更衣室で私に迫られている愛ちゃん、


そして──私と出会う前の、愛ちゃんもいっぱい


夏休みに家族で花火している写真、中学校の入学式の写真…

自撮り写真は少なかった。まあ、愛ちゃんそんな感じじゃないしね。


彼女は、画面からでも漏れ出るほどの可愛さがあった。


私、ここまで誰かに夢中になるなんて初めてだ。


寝ても覚めても、愛ちゃんのことでいっぱい。

そして愛ちゃんと話すたびに、胸の奥がくすぐられるようだ。


今日も、体育の最後に愛ちゃんの方から手をとってくれて、本当に嬉しかった。


ずっと愛ちゃんのことを考えても飽きないくらいに、愛ちゃんが好き。大好き。


また明日、愛ちゃんに会えるのが楽しみだ。

そう思うと、何だか無性に嬉しくて、私はひとり微笑んだ。

次回──第6話 2人の対峙

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