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モデル転校生に一目惚れした私は彼女と絶賛百合ライフ中でしたが、実は極度のメンヘラで追い詰められています  作者: 結奈城 黎


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第10話 りせちゃんって誰?

日常に終わりはなく、どこまでも続いていくのだと。


私たちはいつか死ぬことを知っていながら、どこかそう思っている。


それがどれだけ尊い日々であるかも知らずに。


いとも容易く壊れてしまうことを知らずに。


****


あの雨の夜から数日後。


私たちの関係は少しギクシャクしていた。


いや、多分他の人たちから見ればいつも通りに見えるだろうけど、正直なところ私は美月の接し方が分からなくなっていた。


私は、今までと同じように友達として接したい。


けれど、美月は私に恋人としてふるまって欲しい。


あの日から、はっきりとは言わないけれど、美月はそれを求めてることが仕草の端々から伝わってきていた。


そして、私にはそれが重かった。


美月のことは大切だし、ずっと親友でいたいと思っている。


けれども──美月といると疲れてしまうのだ。


自分の気持ちを押し殺して、美月と付き合うのはそれこそ私の望んでいたことではなかった。


だけど今の関係を壊してしまうのが怖くて、美月に向き合うのを避けていた。


もしもここで私が美月に向き合っていたら──彼女は私を受け入れてくれただろうか。


今になるとそんな想像ばかりが頭を駆け巡る。


どう後悔してもあの時に、あの日常に戻れることはないのに。


~~


そんなある日のことだった。


小学校からの友達であるりせちゃんと久々に連絡がつき、来週の日曜日、彼女と遊びに行こうという話になった。


美月以外の友達が少ない私にとっては、嬉しいお誘いだ。


「行ってきます!」


軽い足取りで家を出ると、学校へと向かう。


朝の日差しは燦燦と道を照らしているが、空気は冬の訪れを告げるように冷たくなっていた。


「おはよー!愛ちゃん!」


通学路の半ばに差し掛かったところで、背後から美月が抱き着いてきた。


思わずビクッと身体を震わせる。驚きのあまり身体が委縮してしまう。


「お、おはよう美月…」


「愛ちゃん!今日は冬服にしたの!どう?似合ってる?」


美月はそんな私の気も知らずに上機嫌に話しかけてくる。


今日の美月は黒いセーラーに身を包んでいた。


相変わらず黒い服が良く似合うと思う。


ただ、今日は何だか惚れるような胸のときめきは感じなかった。最近は美月を見慣れたからかな。


「うん、すごく可愛いよ」


「そう?やった!」


美月はニコニコと笑う。やはり最近の美月はどこか浮かれている…というか異様にテンションが高いように思える。


「ねえ、愛ちゃん!」


「何?」


「来週の日曜日、また一緒に遊びに行かない?」


「…!」


来週の日曜日は、ちょうどりせちゃんと遊ぶ約束をしてしまっている。


こんなにも楽しそうな美月を断るのは、申し訳ない。それにもし断ったらどう思われるか…


言い出すのは億劫だったが、胸の奥から言葉を絞り出す。


「…ごめん。日曜日は予定があるの」


「…………」


「美月、どうした…?」


「ううん、じゃあまた別のタイミングね」


美月は気道が塞がれたように、すごく苦しそうな様子でそう答えた。


しばらく話していると学校へ着く。


上履きへと履き替えると、教室へと歩いて行く。


机に鞄をかけると、


「美月、私ちょっとトイレ行ってくる」


そう言って、席を立ち、教室を出る。


廊下を歩いて右。


少し湿った空気のある女子トイレに入った時、後ろからポン、と肩を叩かれる。


「…っ!?」


「愛ちゃんやっぱり私も行きたくなっちゃって」


「う、うん…」


そう言った時の美月の瞳はあまりにも冷たく、光がないような気がした。


思わず毛穴が粟立ち、寒気を覚えた。


〜〜


「美月、私ちょっとトイレ行ってくる」


愛ちゃんはそう言うと、教室を出る。


私──高野美月は、それを確認すると愛ちゃんの机にかけられた鞄を開ける。


そのまま手を突っ込み、漁ると愛ちゃんのスマホがあった。


私は鞄のチャックを閉め、スマホをスカートのポケットに入れると、愛ちゃんのいる方へと駆け出す。


トイレの手洗い場に愛ちゃんの背中が見える。


そっと近づき、優しく肩を叩くと愛ちゃんはビクッと震えた。


「愛ちゃんやっぱり私も行きたくなっちゃって」


「う、うん…」


愛ちゃんは虚を突かれた様子で、そのまま個室へと入る。


私も隣の個室へと吸い込まれるように入った。


便座に座ると、太ももにひやりと冷たい感触が伝わる。


ポケットからスマホを取り出すと、愛ちゃんのパスコード「14394」を入力する。


この作業も手慣れたものだ。


いつもは写真アルバムを真っ先に開くけど、今日の目的はそれじゃない。


画面右下に固定されているLIMEを開く。


さて、私と愛ちゃんの時間を奪う不届きものは誰かな〜?


触れる時間も長くないので、上から表示されてるLIMEアカウントを片っ端から見て回る。


私が探していたものは、上から4番目の「Rise」でヒットした。


>愛は行きたいところある?


>ん〜、タピオカとか?前行った時美味しかったんだよね


>それはあり!

>とりあえず来週の日曜日でいい?


>空いてるよ〜


>じゃあ決まりだね!


少女たちのそんな無垢な会話が残っていた。


「りせちゃんって誰?」


隣にいる愛ちゃんには聞こえないように、そう呟いた。


愛ちゃん、タピオカ屋行くんだ。


あそこ、私が教えたのに。


あそこ、私と愛ちゃんだけの聖域だと思ってたのに。


愛ちゃんは容易く他の女を入れちゃうんだ。


心に、失望という名のどす黒い染みがじわじわと満ちて行くのを感じた。


場所と時間は覚えた。私はニンマリと笑う。


再びポケットにスマホを入れると、個室の外へと出る。


愛はすでに洗面台で手を洗っていた。


「ごめん、愛ちゃん!待った?」


「別に待ってないよ。てか別に待ってても怒らないし」


「そっか、そうだよね」


愛ちゃんは素っ気ない顔でそう言う。

まるで、私なんて見てないみたいに。


まあ、今はそれでもいいや。


愛ちゃん、待っててね。


あなたの隣にいていいのは私だけって事、教えてあげる。


次回──第11話 孤独──隣にいない彼女


愛とりせとの久しぶりのデート。

2人の時間に、美月という異物が混入する。

その時、愛と美月の関係は──





愛のパスコードの「14394」の意味は、


I love you beautiful moon


の文字数から取られたものです。

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