第15話
数日後の昼下がり。 大学の構内で、悠太はギターケースを背負いながら歩いていた。 サークル室に行く前にちょっとだけ自販機に寄ろうとした矢先、見慣れた二人の姿を見つけて足を止める。
「玲奈と……真由。」
二人は手をつないで並んでいる。 雑談をしながら、真由が描いたイラストの話で盛り上がっているようだ。 楽しそうな笑顔が自然にこぼれ、まるで恋人同士そのもの。
「もう隠す必要もないか。私たち、付き合ってるんだし……。」
「うん。みんなにはちょっと驚かれるかもだけど、開き直ってるよ。」
玲奈の声が微かに聞こえ、真由がこっくりとうなずく。 すると視線に気づいたのか、玲奈が「悠太!」と手を振ってくれた。
「やあ……二人とも仲良さそうだね。」
「そりゃ、もう開き直ってるからね。悠太こそ、バンドの練習? 頑張ってる?」
「うん、ぼちぼちかな。そういえば、次の学内ライブの企画、俺も参加する予定なんだ。」
悠太は照れくさそうに話しながら、二人の手がしっかりつながれている様子に胸が微妙にざわめく。
けれど、その奥にはなぜか甘い興奮にも似た感覚があり、自分でも不思議だと思う。
「じゃあ、三人でご飯とか行く? 時間あったらだけど。」
「いいね。私、お腹すいた。」
「真由は?」
玲奈が尋ねると、真由は「うん……私も、行きたい」と軽く笑う。
以前よりも少し柔らかい表情に見えるのは、恋人になった玲奈の隣にいる安心感があるからだろう。
「じゃあ、学食が混んでたら外に行こうか。」
「うん。」
玲奈と真由は手をつないだまま歩き出し、悠太はその後ろを追いかける形になる。
まるでいつもとは逆転した光景に、思わず苦笑いがこぼれる。
「俺、こうやって後ろから二人を見ると、なんか胸がドキドキするんだよな……。変だよね。」
「変じゃないと思う。私も、悠太に関しては大事な友達だし……。」
「玲奈も同じ気持ちだよ。」
二人が楽しそうに笑い合い、悠太は不思議な満足感と切なさを同時に抱えたまま、歩みを進める。
振り返った真由が「早く早く」と手招きすると、悠太は自然と足を速める。
「ありがとう。俺、そんなに落ち込んでもないから平気だよ。二人の笑顔、案外悪くないって思ってるし。」
もう失恋したはずなのに、なぜか胸が高鳴る自分がいる。
学内の通路を曲がると、ちょうど陽の光がまぶしく差し込む広場に出る。
その場所で、玲奈と真由はちょっとだけ顔を寄せ合って笑い合い、再び悠太を振り返る。
「変なのかもしれないけど……恋愛の形って、本当にいろいろあるんだな。まさかこんな形で振られるとは思わなかったけど。」
悠太は自嘲気味に笑みを浮かべるが、その顔は不思議なほど明るい。
二人がはしゃぐ声を耳にしながら、ギターケースを背負い直してゆっくりと歩を進める。
「でもまあ、こうして三人でいると、なんかドキドキもするし……案外悪くないか。」
ちらりと玲奈と真由の手を握る指先に目をやり、胸の奥がざわめくのを感じる。
自分にとって新しい世界が開かれていくのを、なんとなく確信するような気がした。
「恋愛の形は想像よりもずっと自由……か。そうかもな。」
今日も空は青く晴れていた。




