第12話
「ありがとうー! 軽音サークル、佐藤悠太でした!」
演奏が終わり、客席から大きな拍手が沸き起こる。
悠太は額の汗を拭いながら、ステージの中央でギターを背負ったまま頭を下げる。
楽器を片付けながら観客席を見回すと、手を振っている知り合いの姿がちらほら。
「やったね、悠太! すごい盛り上がりじゃん。」
「ありがとう。みんなのおかげだよ。」
バンド仲間とハイタッチしつつ、舞台袖に戻る。
そこにはちょうど真由が来ていて、小さく拍手をしてくれる姿があった。
「よかったよ、悠太。すごく楽しそうに弾いてて、私も見ててワクワクした。」
「そ、そっか。ありがと……真由、今から玲奈のダンス、観に行く感じ?」
真由は小さくうなずき、ステージの奥に視線を向ける。
すると、すでに玲奈とダンスチームのメンバーが舞台裏で待機しているのが見える。
「うわ、ちょっと緊張する。こういう大きいステージでのダンス披露、玲奈も久々じゃない?」
「そうみたい。でも、あの子ならきっと堂々と踊ると思う。」
真由がバッグからスマホを取り出し、カメラを起動させようとする。
一方で、悠太もギターを片付けながら、玲奈の踊る姿を心待ちにしている。
「じゃあ、俺もこのまま袖で観てようかな……せっかくだし。」
「うん、一緒に観よう。」
ステージの照明が変わり、ダンスチームの紹介アナウンスが響く。
客席から「がんばれー!」という声が飛び、玲奈がチームメイトとともにステージ中央に姿を現す。
軽やかな音楽が流れ、彼女の身体がしなやかにリズムに合わせて動き始める。
「すごい……やっぱり玲奈って華やかだよね。」
「うん。表情もすごく生き生きしてるし……。」
真由はスマホを握りしめながら小さくつぶやく。
その目はまるで、尊敬と憧れと何か切ない感情が混ざったような光を宿している。
「うわ、あのターン……キレイに回ってる……さすが。」
「ほんと、綺麗だ……。」
悠太も思わず息をのむ。
しかし、その次の瞬間、ダンスがフィニッシュに近づいたところで観客から大きな歓声が上がり、玲奈とチームメイトは見事に一列に並んでフィニッシュポーズを決める。
「すごい拍手……!」
「うん、玲奈たち、最高だね。」
大きな拍手が鳴り止まず、ステージ上の玲奈ははにかむように笑顔を浮かべて頭を下げる。
そして舞台袖へ戻ってくると、真由がいても構わず思わず飛びつくようにハグする。
「やったよ、悠太……成功した!」
「お、おめでとう……玲奈、すごくよかった。」
悠太はそう言いながら玲奈の背中をポンポンと叩く。
すると、すぐそばで真由が立ち尽くしているのに気づくが、玲奈はそのまま真由の方に振り返り、興奮気味に近づく。
「真由、見ててくれた? 私、失敗しなかったよね!」
「……うん、すごかった、ほんとに……玲奈らしい踊り、素敵だった。」
真由が力を込めるように言うと、玲奈は思わず感極まったのか、彼女にもハグをする。
その瞬間、悠太は強い胸の痛みを感じ、こみ上げるような不安と嫉妬を覚える。
ステージの華やかな成功の裏で、三人の関係には微妙な揺れが走り始めていたかのように思えた。




