第11話
ステージのリハーサルが終わり、いよいよ本番が近づいてくる。
学園祭のメイン会場では、すでにいくつかのサークルがパフォーマンスを披露し、観客の歓声がそこかしこで上がっている。
「悠太、もうすぐ出番だって。準備いい?」
「うん。ギターもチューニング大丈夫だし……気合い入れるよ。」
バンド仲間が舞台袖で声をかけ、悠太は深呼吸をする。
玲奈は自分のダンスチームと控え室で合流しているらしく、この場に姿はない。
「真由は……どこにいるんだろう。」
そう思って視線を巡らせていると、背後から小さな声がかかる。
「悠太……大丈夫? めちゃくちゃ緊張してるように見えたから。」
振り返ると、真由がイラスト展示のスタッフ用バッジをつけて立っていた。
彼女はいつもより少し落ち着かない様子で、そわそわと視線を左右に動かしている。
「そっちはもう展示終わったの? どうだった?」
「うん。とりあえず貼り付けとかは完了した。でも、お客さんが入るときは一緒にいるように言われてて……すぐには見れないんだけど。」
真由が抱きかかえるファイルには、何枚かの予備イラストが入っているらしい。
悠太はそのファイルをチラリと見つめ、彼女がそこに何を描いているのか気になってしまう。
「じゃあ、俺がステージ出るの、見に来れないの?」
「ううん。大丈夫、ちょっとだけ時間もらったから。バンド演奏、見たいし……玲奈のダンスも。」
真由の言葉に、悠太は思わず喉がつまる。
彼女が「玲奈のダンス」を特別に待ちわびているのは、なんとなくわかる。
だけど、その想いを否定する気にはなれない。
「そっか……ありがと。俺も一応頑張るけど、みんなの演奏だし、楽しんでくれたら嬉しいかな。」
「うん、楽しみにしてる。悠太のギター、好きだよ。あったかい感じがするから。」
真由はそう言って微笑むと、「それじゃ、あとでね」と言葉を残して去っていく。
その背中を見送る悠太の胸には、一種の複雑なドキドキが渦巻いたままだ。
「はあ……俺って、変に意識しすぎなのかな。」
メインステージのアナウンスが「次のパフォーマンスは軽音サークルのバンド演奏です」と告げる。
自分たちの出番が迫り、悠太は慌ててギターを手にする。
心を落ち着けようとするが、真由と玲奈の顔が交互に頭に浮かんでしまい、ますます混乱しか感じられない。
「よし……行くか。」
仲間に合図してステージへと向かう。
スポットライトがまぶしく、客席にはすでに多くの学生が集まっているのがわかる。
視線を遠くへ伸ばせば、きっと玲奈と真由もいるのだろう。
ドラムのカウントが始まり、ベースがリズムを刻む。
悠太は息をのみながらもギターを構え、最初のコードを思い切り掻き鳴らす。
この音が、二人の耳にどう届くのかを思うと、妙に胸が高鳴る自分に気づく。




