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【学園初恋ストーリー】数学少年と文学少女 ~数式と詩が奏でる恋の蕾~  作者: 霧崎薫


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第10話:「桜並木の誓い」

 藤葉学園の桜並木に、春の柔らかな風が吹き抜けていった。満開の桜が、ピンク色の花びらを舞い散らせながら、新しい季節の訪れを告げていた。その美しい光景の中を、佐伯楓と月城遥が並んで歩いていた。


 二年生から三年生への進級を控えたこの日、二人は大切な話をするために、放課後の桜並木にやってきたのだ。楓の胸の内には、期待と不安が入り混じっていた。遥も同じように、これからの話し合いに緊張している様子だった。


「きれいね」


 遥が満開の桜を見上げながら呟いた。その声には、感嘆と共に、どこか儚さを感じさせるものがあった。


「うん」


 楓も頷く。そして、遥の横顔を見つめながら、思わず口をついて出た。


「でも、遥さんの方がきれいだ」


 その言葉に、遥は驚いて顔を赤らめる。楓も、自分の大胆な発言に驚いたように口元を手で覆った。しかし、その素直な言葉に、遥の心は大きく揺れ動いた。


「楓くん、随分素直になったのね」


 遥がくすりと笑う。その笑顔に、楓は心を奪われた。


「うん、遥さんと一緒にいると、自然とそうなっちゃうんだ」


 楓も照れくさそうに笑った。その表情には、以前の硬さが消え、柔らかな温かみが感じられた。


 二人は桜の木の下のベンチに腰かける。ほんのりと甘い香りが、春の風に乗って漂ってくる。二人の間に、心地よい沈黙が流れる。


「ねぇ、楓くん」


 遥が静かに話し始めた。彼女の声には、少し迷いが混じっているようだった。


「私たち、もうすぐ三年生になるのね」


「そうだね」


 楓も真剣な表情になる。彼の瞳には、未来への期待と不安が交錯していた。


「僕たち、これからどうしていきたい?」


 その問いかけに、遥は少し考え込んでから答えた。彼女の声には、決意と希望が滲んでいた。


「私は、楓くんと一緒に成長していきたい。楓くんの夢を応援したいし、私の夢も叶えたい」


 楓は深く頷いた。遥の言葉に、彼の心は大きく揺さぶられていた。


「僕も同じだよ。遥さんと一緒に、互いの夢を叶える道を歩んでいきたい」


 二人の視線が絡み合う。そこには、不安も期待も、そして何より強い決意が浮かんでいた。二人の心が、一つになろうとしているのを感じる。


「でも、高校受験のこともあるしね」


 遥が少し心配そうに言う。その言葉に、現実の重みを感じた楓だったが、すぐに前を向いた。


「そうだね」


 楓も同意する。そして、力強い口調で続けた。


「でも、それも一緒に乗り越えていこう。僕たちなら、きっとできる」


 遥は楓の言葉に勇気づけられたように、明るく笑った。その笑顔に、楓は心を打たれる。


「楓くん、約束しよう」


 遥が真剣な表情で言う。彼女の瞳には、強い決意の光が宿っていた。


「どんなことがあっても、互いの夢を応援し合うこと。そして、一緒に成長し続けること」


 楓も決意を込めて答えた。彼の声には、揺るぎない自信が感じられた。


「約束するよ、遥さん。僕たちの物語を、二人で紡いでいこう」


 その瞬間、風が吹いて桜の花びらが舞い散った。まるで、二人の誓いを祝福するかのように。楓と遥は、その光景に息を呑んだ。


 楓は立ち上がり、遥に手を差し伸べた。その仕草には、これまでにない優しさと力強さがあった。


「遥さん、これからもよろしく」


 遥も立ち上がり、楓の手を取る。彼女の手のひらから、温かさが伝わってくる。


「うん、楓くんこそ、よろしくね」


 二人の手が触れ合った瞬間、時間が止まったかのような感覚に包まれる。桜吹雪の中、楓と遥の目が合った。


 楓は、遥の瞳に映る自分の姿に気づく。そこには、不安と期待が入り混じった表情の自分がいた。しかし、その奥には、強い決意の光も宿っていた。遥も同じように、楓の目に自分の姿を見つけていた。そこには、彼女の優しさと強さが映し出されていた。


「遥さん」


 楓が小さな声で呼びかける。その声には、僅かな震えが混じっていた。


「なに?」


 遥の声も、か細く震えていた。期待と緊張が、彼女の全身を包んでいる。


 楓は、ゆっくりと遥に近づく。遥は目を閉じ、僅かに顔を上げた。二人の間の距離が、少しずつ縮まっていく。


 周りの空気が、静止したかのように感じられた。桜の香りが、二人を包み込む。そして――。


 楓の唇が、そっと遥の唇に触れた。ほんの一瞬の接触。しかし、その一瞬で、二人の世界が大きく変わった。


 初めてのキスは、つたなくて、ぎこちなかった。でも、その純粋さゆえに、二人の心に深く刻まれるものとなった。それは、互いへの愛情と信頼の証だった。


 唇を離した後、楓と遥は顔を真っ赤に染めて見つめ合う。二人の目には、驚きと喜びの光が宿っていた。


「ご、ごめん」


 楓が慌てて謝る。彼の声は、緊張で少し上ずっていた。


「急に、こんな……」


「ううん」


 遥が小さく首を振る。彼女の瞳には、幸せの涙が光っていた。


「嬉しかった……」


 二人は、照れくさそうに微笑み合った。その表情には、幸せと戸惑いが入り混じっている。しかし、それ以上に、互いへの深い愛情が感じられた。


「これからも、一緒だよ」


 楓が囁くように言う。その言葉には、強い決意が込められていた。


「うん、ずっと一緒」


 遥も頷く。彼女の声には、揺るぎない信頼が滲んでいた。


 風が吹き、桜の花びらが二人を祝福するかのように舞い散る。楓と遥は、手を繋いだまま、ゆっくりと歩き始めた。


 二人の背中には、春の陽光が暖かく注いでいる。この瞬間が、これからの長い人生の中で、きっと特別な思い出として心に刻まれることだろう。それは、彼らの青春の証であり、未来への希望の光となるに違いない。


 遠くから、葉山蒼と白鳥凛の姿が見えた。二人は親友たちに気づくと、笑顔で手を振った。その仕草には、これまでにない自信と喜びが溢れていた。


「あいつら、本当に良かったな」


 蒼が感慨深げに言う。彼の目には、親友を思う優しさが宿っていた。


「うん」


 凛も嬉しそうに頷く。彼女の表情には、安堵と喜びが滲んでいた。


「私たちも、二人の幸せを見守っていこうね」


 藤葉学園の桜並木に、新しい春の物語が始まった。楓と遥の歩む道は、まだまだ長い。そこには、様々な試練や困難が待ち受けているかもしれない。でも、二人で一緒なら、どんな困難も乗り越えられるはずだ。


 桜の花びらが舞う中、楓と遥の笑い声が響く。それは、まだ見ぬ未来への希望に満ちた、青春の輝きそのものだった。二人の純粋な想いは、周りの人たちの心も温かくしていく。


 こうして、二人の純愛物語は新たな章へと進んでいく。そして、二人の心に刻まれた桜並木の誓いは、これからの日々を支える大切な約束となった。それは、永遠に色褪せることのない、かけがえのない思い出となるだろう。


 楓と遥が桜並木を歩き去った後、蒼と凛はベンチに腰かけた。二人の表情には、親友の幸せを喜ぶ気持ちと、自分たちの将来への期待が混ざっていた。


「なあ、凛」


 蒼が空を見上げながら言う。彼の声には、少し照れくささが混じっていた。


「俺たちも、あいつらみたいになれるかな」


 凛は少し驚いた表情を浮かべたが、すぐに柔らかな笑みを浮かべた。彼女の頬が、僅かに赤く染まる。


「そうね。私たちも頑張らないとね」


 二人は意味深な視線を交わし、くすっと笑った。その瞬間、彼らの間にも、新しい物語の種が蒔かれたのかもしれない。


 春の風が、再び桜並木を吹き抜けていった。それは、まるで新しい季節の訪れを告げるかのようだった。藤葉学園の桜並木に咲いた恋の花は、これからもっと大きく、美しく咲き誇っていくことだろう。そして、その物語は永遠に語り継がれていくのだろう。


(了)


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