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最終話 蒼穹

前回のあらすじ・・・

 無事落成式を終えた2人。

 レジーナはふと以前訪れた寒村の子供たちを思い出す。

 今彼女には、自己満足の僅かな施しではなく大勢を救う力を持っている。

 馬車の中でその夢を語るレジーナだが、つい「寂しい」と本音もこぼしてしまい、我慢ならな

 くなったルートヴィッヒは彼女に正式なプロポーズをするのだった。

 父を説得するのは…正確には母と伯母を説得するにはかなり骨が折れたが、彼は次の休み丸一日使って親族を説き伏せると、3年後だった結婚を2年早めることに成功した。


 ただし多忙を極めるため次の侯爵領拝領の時まで結婚式は待つことになり、ルートヴィッヒらは3つ目の学校が建つ頃に書類上だけの結婚を果たした。


 ただ本当に書類だけではレジーナが不憫だと思ったルートヴィッヒは、内緒でウェディングドレスを用意すると、臣下と使用人だけが祝う小さなパーティをホールで開いた。


 何も知らされていなかったレジーナは、あまりに感動しウェディングドレスを見ては泣き、鏡を見ては泣き、ホールに待つルートヴィッヒを見ては泣いた。


 司祭代わりの家令が形を真似しただけの式を取り持つと、2人は誓いの言葉と指輪を交換した。


「では誓いの口づけを」


 皆が見守る中、2人の影が重なり歓声が上がった。


「コホン」


 歓声が止まない中、ルートヴィッヒはなかなか花嫁を離さない。


「えー、殿下、もうよろしいですよ」


 レジーナも、うっとりと受け入れたまま周囲の音が入らない。


「殿下、そろそろ…殿下…ではわたくしはこれで失礼し……無礼講ですぞ!」



 レジーナの発案による子供の保護も兼ねた学校と、職業訓練校、そして新たな産業のモデルは、クラインシュタット伯爵領から始まり数年後にはシュトラルバッハ王国のスタンダードとなった。

 これらは国民の生活水準を引き上げ、それに伴い国は豊かになり、後に何代にも渡って繁栄を極めた。


 守護精は体の一部のようなもので、なければ人は体に溜まる魔力を吐き出すことができず死んでしまう。

 だが魔力は少なすぎても精神を保つことができず、そのバランスを取るのが守護精の役割でもある。


 多くの者は小動物やもう少し大きな生物を宿す中、魔力生成の高い者は幻獣を宿すこともある。

 しかしこれは稀に変化することもあり、それには宿主の精神力が大きく関係していることが分かってきた。


 心身に密接に結びつく守護精は、宿主の精神力や心を反映していると言っていい。

 

 一方で、虫のような極端に小さな守護精には、類い稀なる能力が秘められていることがある。


 つまりは人も守護精も、可能性は無限に広がっていると言っていいかもしれない。


 まだまだ研究の余地はあるが、1つ言えるのは、どんな守護精であれそれは宿主にとって絶対に必要なものであり、彼らを否定することは即ち己を否定することと同意義なのだ。


 かく言う筆者も子供の頃、親もなく食うに食えず、守護精のスズメと共に物乞いをしていた時期があった。

 もっと強い守護精なら盗みだって働けたかもしれない。そう思うことも1度や2度ではなかった。


 しかしご領主が変わり、新しいご領主とその奥方の作られた学校で保護されると、私はスズメでよかったのだと心から思った。もしあの時強い守護精がいたのなら、私はどれだけの罪を犯しただろうか。

 今はスザクと言われる不死鳥にも似た私の守護精はーー



「ふあ…なんかこの本回りくどい。退屈」


「そうかしら?なかなか興味深いと思うけど」


「母上はもう読んだの?」


「ええ、せっかく贈っていただいたのだもの。それに“学校”の出身者なのですからこんな嬉しいことはないわ」


「ふーん…ねえ、もう今日の勉強は終わったよ。プレッツェルと遊びたい」


「庭で遊んでね。またこの間みたいに小さき妖精(クライナ・フェー)を割られたら嫌よ」


「あれはぼくじゃないよ!プレッツェルが尻尾振り回すから!あ、待ってプレッツェル!母上行ってきます!」


「ちょっと、走るのは外に出てからにして!もう。お母様、お父様が今日は陽気がいいから外でお茶にしないかって。お体はどう?」


「大丈夫よ。でも元気が良すぎて…ほらまた」


「え、触りたいです!」


「ほらこの辺、ここ」


「動いてる!」


「あなたもかなり元気が良かったけどね」


「嘘よ。私はほら、こんなにお上品ですもの」


「ふふ、では今度おば様に見て頂かないと」


「そ、それはまだもう少し、いえうんと先で…ね、お父様がお待ちだわ。早く行きましょう。あー駄目、お母様はゆっくりね」


 今日も賑やかな家族の声が王都の城に響く。


 レジーナは庭に愛しい人の姿を見つけると、少女の頃から変わらない可愛い笑みを零した。

 国王となったルートヴィッヒもそんな彼女を柔らかく抱きしめ、大きくなってきたお腹を撫でる。


 彼らの頭上には無知な令嬢が逃げ出したあの時と変わらず、可能性を秘めた青い空が広がっていた。


 高く、大きく、どこまでも無限に……




 完


ここまでお読みいただきありがとうございました。

皆さまの心に良い思い出を残せたら幸いです。

レジーナとルートヴィッヒの頭上に広がる蒼穹のように、皆さまにも良き未来が広がりますように。

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