第3話「アメリカ軍召喚」
ここから反撃開始だーーー!!!
男達は小汚い恰好だった。
見たこともない風体をした十数名の一集団。
彼等は、唖然とするエミリアと帝国軍の前に、突如として現れた。
それぞれが、雑多なブーツに、おそろいの帽子と青い服。
身体には革帯をたすき掛けにして、そこにごてごてと装備をぶら下げている。
腰のベルトにには用途の分からない鉄の塊と短い剣。
さらには、両の手にはやたらと長い杖のようなものを一振り……。
ボロボロのエミリアに負けず劣らずボロボロの男たち。
埃臭く、硝煙の匂いを漂わせているが……。
「……だ、誰よ、アンタら?」
まるでアンデッドの召喚の如く、本当に突然の出来事だ。
エミリア以外誰も答えることができず、かわりに───ヒュゥゥウ……と一陣の風が吹いた。
思わず目をつぶると、どこからともなくコロコロとタンブルウィードが転がり、空風とともに去っていく。
~~~♪
~~~~♪
そして、どこからともなく流れる軽快な音楽。
(※ 注:西部劇風ミュージック)
「え、えっと……」
ポカンとするエミリアは呟く。
「ど、どち──ら様?」
だが、彼らは答えない。
意思の強そうな目をして、ただ控えるのみ。
エミリアに寄り添うように立ち───何かを待っている。
「な、なんだ、こいつら!」
「きゅ、急に出てきたぞ!!」
「おい! 所属はどこだ! 答えろ!!」
動揺する帝国軍は浮足立っている。
だが、それすら完全に無視し───彼らは何も語らずジッと佇んでいる。
彼等の背後には大量の荷車の様な物。
そして、軍馬と細長い剣を携えた青年……彼だけは鉛筆の様にスラ───と立っていた。
(な、なんなの……一体、コイツ等は───)
ガッシリとした体格はどうみてもアンデッドではない生者のそれ。
これがアンデッドなものか!
だけど、
彼らは──────……。
そっと、胸に触れると確かに魔力が減っている。
なによりも、心に触れるこの感触は、彼等がエミリアと繋がっている証……。
(うそ……。き、来て、くれたの? あ、ア、ア───)
そのとき、───ブゥン! と、空気の震える音。
……見慣れた、死霊術のステータス画面のそれだった。
あぁ……。
……来てくれた。
来てくれたんだ!!
やっぱり冥府の奥から来てくれた───!
アンデッド。アンデッド……! アンデッド!!!
私の──────愛しい、アンデッド!!
あぁ───やっぱり、来てくれたんだ!!
エミリアの愛しい死霊の、
「ア────────────」
アメリカ軍
Lv0:合衆国陸軍(南北戦争型:1864)
スキル:歩兵(小銃、
拳銃)
砲兵(鹵獲榴弾砲、
連発銃)
騎兵(騎兵銃、
拳銃、
曲刀)、
工兵(マスケット、
拳銃、
爆薬)
備 考:南北戦争で活躍した北軍部隊。
軍の急速な拡大にあわせて、
輸入品や鹵獲品を活用している。
制服の色は青。
染料が安く入ったからとの説あり。
南軍からみて、「ヤンキー」とは
彼らを刺す蔑称───。
※ ※ ※:アメリカ軍
Lv0→合衆国陸軍(南北戦争型:1864)
→合衆国海軍(南北戦争型:1864)
(次)
Lv1→欧州派遣軍(第一次大戦型:1918)
大西洋艦隊(第一次大戦型:1918)
Lv2→????????
Lv3→????????
Lv4→????????
Lv5→????????
Lv6→????????
Lv7→????????
Lv完→????????
……………………は?
あ、
「…………───アメリカ……軍??」
『ハッ! 閣下!!!』
指揮官然とした一人の青服の男が一歩進み出て手を前に翳して見せる。
と、同時に───。
ガガガガン!! 背後の男達は靴を鳴らして直立不動。
は?
え?
「はぁ?」
いや、
だ、誰やねん?!
エミリアも帝国軍も唖然とするのみ。
地中からゾンビやスケルトンが出てきても動じない帝国軍であっても、さすがに生身の人間が出てくれば驚く。
しかも、元気いっぱいに硝煙の匂いを漂わせていれば誰だって……。
っていうか──────え? えええ?
──あ、『アメリカ軍』??
『アンデッド』じゃなくて???
…………………………えええええええ?!
エミリアは気づいていないが、ズタズタになった呪印がボンヤリと光っていた。
──────『ア■■■■』。
『アンデッド』ではなく、『アメリカ軍』として──────。
燦然と輝く呪印に刻まれた文字。
勇者パーティに切り刻まれ、ロベルトによってはがされ、ルギアに冒涜されたあの『アンデッド』の呪印が…………変質した。
「ど、どういう……こと」
『ア』しか読めない『ア■■■■』がぐちゃぐちゃにされたせいで『アメリカ軍』に?
そ、そんな例は聞いたこともない!
でも、待てよ。
───確かに、聞いたことはないんだけど……。
あのくそ女。
「───義姉さんの【死霊術】に細工するなんて造作もないの。
その呪印、適当に書き換えてあげたわぁ……」
適当に書き換えてあげたわぁ
書き換えてあげたわぁ……───わぁ
─────────わぁ、わぁ、わぁ…………。
と、ルギアの最後のセリフが何度も何度も頭の中で反響する。
「適当に」「書き換えた」……だと?
「ルギ、ア」
アンタ、まさか───…………。
まさか─────────!!
アンデッドを汚すだけじゃなく、適当に書き換えただとおぉぉぉおおお!
「や、やりやがったなぁぁぁあ! あのクソボケ女ぁぁぁあああああああ!!」
うわっぁあああああああああ!!
愛しき死霊が、米軍に…………!!
『ア■■■■』が『アメリカ軍』に?!
違うだろ!?
違い過ぎるだろ!?
なんなのよ、こいつら!?
こんなのがアンデッドの代わり?!
ふざけないでよ!!
返してよ、アタシのアンデッドを!!
「うわぁぁああああああああああああああ! 畜生ぉぉぉぉおおお!!」
悲しく、
寂しく、
静かで、
孤独な優しいアンデッド。
それがどうだ。
今はアメリカ軍。
下品で、
喧しく、
圧倒的物量で、
猛々しいアメリカ軍!!
全ッッ然違うものに───!!
くそぉぉぉぉぉぉおおおおおおお!!
ルギアめぇぇえええええええええ!!
「あ、」
アメリカ軍って……!!!
「──────アメリカ軍って……」
……何よぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおお?!
「は、はははは! なんだ、びびらせやがって」
「どうやら、ただの雑魚召喚獣っぽいな」
「へへ、そうと決まればさっさと蹴散らして、この女にキツイお仕置きを……」
血だらけで満身創痍なエミリアが呟くも、そんな答えは誰も持ち合わせてはいない。
むしろ、帝国軍は不気味なアンデッドとは真逆の存在が現れたからいきなりの侮りモード。
そもそも、武器らしい武器もない人間タイプの召喚獣だ。
恐るるに足らずといったところなのだろう。
腐っても帝国軍正規兵。
鎧に盾と剣。これで杖と短剣だけの召喚獣に負ける道理などあろうか?……いや、ない。
「くそ……。これまでか───……仲間の仇も討てず、父と母を殺され、自身も汚された、あははは」
所詮こんなものか……。
アンデッドさえいてくれたら違ったのかもしれないけど───。
「…………いいわ。アンタたちは帰りなさい。自分たちの召喚の先の世界へ───」
エミリアは呼び出した召喚獣が蹴散らされるのが忍びなく、死ぬなら自分一人でいいと覚悟した。
だから、彼等に帰れと──────。
ザッ!!
『ご命令を閣下!!』
「え? め、命令??」
命令?
命令ですって……?!
『ご命令を』
『ご命令を』
『ご命令を!!』
「め、命令していいの?」
……貴方達を頼っていいの?
アンデッドの様に私を守ってくれる、の?
アメリカ軍よ───……。
『『『ご命令を!!!』』』』
いいの?
言っていいの?!
ねぇ、
愛しき───アメリカ軍。
いいのね?!
『『『さぁ、命令を!』』』
なら……。
───……してよ。
───ろして……。
殺して……!!
「───アイツらを殺してぇぇぇええ!!」
『『了解ッ!!!』』
エミリアは叫ぶ。
力の限り叫ぶ。
『『『了解ッ!!!』』』
だからアメリカ軍は応えた!!
ああああ、答えてくれた!!
彼女の拠り所。
そして、誇りであり、死者との最後の繋がりの死霊術───。
エミリアに残った、最初で最後の宝物!!
その死霊術の欠片すら変質してしまった。
もう、エミリアには何もない!!!
何もない!!!
何 も な い!!
───だけど!!!!!
『『『『了解ッ!!!』』』』』
だけど、アメリカ軍が来た。
アメリカ軍が、自分の言葉を寄越せと言ってきた!
命令を、
命令を、
命令を、
ご命令を!!!
あぁ、
あぁ!!
あぁぁあ!!
───ならば、殺せッ!!
「殺せ!!」
奴らを殺せ!!
帝国に死を!!
人類に報いを!!
勇者たちに滅亡を!!
全てを食い破れ!!!
「──あいつらを殺してよぉぉおおお!」
『『『『了解、お任せを!!』』』』
ジャキジャキジャキジャキジャキ!
命令一過、一斉に片膝をつくアメリカ軍。
その一糸乱れぬ動き、練度高き戦闘動作!
「な、なんだこいつら!」
「ゆ、油断するな───死霊の類かもしれん!」
「一旦退けぇぇッ。総員、全周防御ッ!! 盾を全面に出せ」
帝国軍は素早く動く。
正体不明の敵に、いきなり斬りかからないだけの分別はあるようだ。
だが、それが命取りだった───。
『撃てぃ!!』
ババババババババババババババッバン
ババババババババババババババッバン
ババババババババババババババッバン
突然、耳をつんざい大音響!
「きゃッ!?」
直後、盾を構えて威勢を誇っていた帝国兵が一斉に血を吹いてぶっ倒れる。
…………え?
途端にシンと静まり返る戦場。
一瞬ののち、バタバタと倒れ伏す帝国兵たち。
まるで見えない死神に命を刈り取られかのように倒れ伏す帝国兵。
たちまち周囲は地獄の様相と化す。
「うぎゃああああああ!!」
「あーあーあーあーあ!!」
「目が、目がぁぁぁあ!!」
「だ、だれか、お、俺の足がぁぁああ!!」
もちろん帝国軍は大混乱。
一撃で、前列の盾持ちが全滅。
オマケに指揮官もどこかに消えた。
反撃どころか、腰を抜かしている奴らが大半だ。
「う、うそ……でしょ?」
殺せ! の姿勢のまま硬直したエミリア。
しかし、命令はいまだ有効。彼女が止めない限り、アメリカ軍は攻撃の手を緩めない!!
『前列、再装填!! 後列、援護!!』
『『『了解!!』』』
次に男達は二列になっていた。
いや、指揮官の男を含めれば三列か……。
そして、一列目の男達が腰のポーチからソーセージの様なものを取り出すと端を噛み破り何やらゴソゴソを奇妙な動きをしている。
一体何を?!
早く帝国兵に追撃を───。
だが、そこからはさらに一方的な蹂躙劇が始まった。
「ぬぅぅ?! 小癪な! 魔法使いどもなのか、あれは! 起きろ! 剣を持て! 詠唱させるな───弓兵、射撃よ」
さすがは帝国軍、すぐさま次席の指揮官が立ち上がり兵を叱咤する。
「ひ、怯むな!! 魔法が早々連発できるわけがないッ!」
「「お、おう!!」」
いち早く立ち直った帝国軍。さすがに実戦経験者は違う───はやい!!
「総員抜刀!!」
シュラン、シュラン、シュラン!!
だが、アメリカ軍はもっと早い!!
前列は冷静に作業を続けていたかと思うと……、
『援護射撃!』
『『『了解ッッ!』』』
チャキ、チャキ、チャキチャキ!!!
───後列の男達が腰から黒光りする拳銃を引き抜いた。
「「「突撃ぃぃい!!」」」
『自由射撃!! 撃て撃て、撃てぇぇ!!』
パンッ!
パパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパン!!
「ひゃあ! な、なななんんあな、何の音?!」
ビクリと震えるエミリア。彼女の近くで再び炸裂魔法。
驚くなというほうが無理だ。
さっきよりも小さいとは言え、連射力がすごい!!
パンッ!
パンパンパンパンパンッッ!!
「ぎゃああ!!」
「ぐぁあ……よ、鎧が?! 鎧に穴がぁぁあ……なんでえぇぇ?!」
「いでーいでーいでよおぉおお!!」
ゴロゴロと転がる帝国兵。だが数はまだまだ!
まだまだ、お替り一杯!!
『『『装填完了!!』』』
そして、アメリカ軍の容赦もまだまだない!
あるものか!!
『ちゃちゃと撃てぇぇえ!!』
ズドドドドドドドドン!!!
再び前列が火を噴く。
もうその頃には、帝国軍は壊滅状態。
突進してきた連中はズタボロになって転がっている。
数少ない生き残りは、這う這うの体で逃げ惑う。
「た、助けてくれぇっぇええ!!」
「敵だ! 敵だあぁぁぁああ!!」
占領された城に飛び込む帝国軍。
他の者は右往左往し、アメリカ軍に撃ち殺されている。
だが、これだけ大騒ぎすれば帝国軍とて黙ってはいない。
この地に残留する帝国軍は一個大隊約500名もいるのだ!
「死霊術だ!! あのダークエルフのガキが死霊を呼びやがった!!」
「出撃!! 出撃ぃぃぃいいい!!」
「総員攻撃準備ぃぃぃい!!」
うぉぉおおおおおおおおおおおおおおおお!!
城は蜂の巣をつついたような大騒ぎ──。
そして城の正門から、雪崩を打って帝国軍が現れた。
ワッワッワッワッワ!!
「「「突撃ぃぃいい!」」」
取るものとりあえず武器だけ担いで出てきた帝国兵がゴマンと!
まるで泥を吐き出すように真っ黒な兵の群れが城からあふれてくる。
「く……! なんて数!」
さすがにアメリカ軍とはいえ、この数は─────!
「無理よね……」
ここまでか……。
せっかく、一時でも自由になれたというのに、悔しい……!
いっそさっさと逃げれば良かった───。
『───傾注!!』
エミリアは諦めかけていが、アメリカ軍は不敵に笑う。
「え? ちょ──────……」
彼らはいつの間にか、残置していた荷車をゴロゴロと転がしている。
バリケードでも作るつもりだろうか?……そんな悠長な?!
「何のつもりよ! 無理よ! もういいから───」
『ガトリング砲、順次待機!』
『アームストロング砲、順次待機!!』
ゴト、ゴトゴト、ゴトンッ!
彼等が取り出したのは、一見して妙な鉄の塊。
…………破城追だろうか?
そもそも歩兵相手に攻城兵器を持ち出してどうする?!
ヤケクソになったのだろうか? それとも……。
いいわ───。
「……一瞬でもいい夢が見れた───胸がすく思い、でも、もういい! 帝国には勝てないッ」
ありがとう……アメリカ軍。
私の声に応えて来てくれただけでもう十分───……。
……十分よ!!
『ガトリング砲、準備完了!』
破城追に取り付いた男がクランクをグルグル回し始めた。
カタカタカタ……。
『目標正面!』
指揮官が腕を振り上げ───……。
その間にも帝国兵が増え続ける。
まるで蟻だ。
蟻の大群……。
あとは、正門から沸きだす帝国兵に蹂躙されて終わり───。
「無茶しないで! あなた達は死霊じゃない! 生身の人間なのよ!? 無理せず、帰りなさ」
『撃てぇぇえ!』
───振り下ろしたッ!
パン……。
「ごぉあ!?」ドサッ───。
軽い破裂音。
そして、指向された何かが正門から雪崩出てきた帝国兵を打ち砕いた。
「───え?」
『撃て! 撃て! 撃てぇぇえ!』
パン、パパパン、パパパパパパパパパパパパパパパパパ!!
「「「ぎゃあああ!!」」」
指揮官の号令にあわせてクランクを回し続ける兵。
それに合わせて轟音が戦場に鳴り響く!
パパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパ!!
「えええ?!」
パパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパ!!
パパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパ!!
「「「「ぎゃあああああああああ!」」」」
一塊の暴力となって、エミリアを押しつぶさんと出てきた帝国軍一個大隊。
そいつらがバタバタと倒れていく。
血を噴き、頭を失い、手足を引きちぎられて倒れていく。
だが、容赦などない!
微塵もない!!
『撃ち続けろぉぉお!!』
アメリカ軍は全てを殲滅する!!
パパパパパパパパパパパパパパパパパパ───! カチャン……。
『再装填!!』
クランクを回していた兵が素早く金属筒を交換しだす。
一体あれは……?
『援護射撃ぃぃぃ!!』
連射していたガトリング砲に代わって、
その間隙を埋めるのが歩兵たちの小銃とリボルバー拳銃。
『タリホォ!!』
『タリホォ タリホォ!!』
ズジャキジャキジャキジャキジャキ!!
凄まじい笑顔を浮かべた男達が腰だめに構えた拳銃を連続射撃。
さらには大威力のライフルが長射程をもって帝国軍をバキュン! バキュン! と撃ち殺していく。
『ハッハッハァァ!!』
『ヒィィィエァァァ!』
『ヒーーーハァァァ!』
一応言っておくが、悲鳴ではない……。
悲鳴なものか───!!
「「「ぎゃあああああああああああああ!!」」」
こいつら───……。
アメリカ軍は笑っている!?
なんてこった……。
これは、
戦いの悦びに満ちた男達の叫びだッ!!
『『『『ヒャッハァァァアアア!』』』』
バンバンバンバンバンバンバンバンバン!
あれ程威容を誇っていたはずの帝国軍が何も出来ずに薙ぎ倒されていく。
悲鳴も絶叫も、アメリカ軍の出す喧しい音にかき消される始末。
そこに加わるガトリング砲の協奏曲!!
『装填完了!!』
『とっとぶっ放せぇ!!』
『アイアイサッ!』
パパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパ!!!
『撃て撃て撃て撃て撃て撃て撃て撃て───撃ちまくれぇぇぇえ!!』
イィィィィエェェアァァアアアア!!
嗅いだこともない香りが鼻腔を刺激する。
エミリアは足の激痛も忘れて茫然と立ち尽くすしかない。
アイツらを殺せとは言ったが……。これほどとは───!?
出て来たばかりの帝国軍は死体の山を量産して、さらにさらに積み上げていく。
もう出落ちも出落ち!!
そのうち、出てくることすらできなくなる始末!
「だ、ダメだ!! 逃げろッ!」
「出撃した連中は忘れろッッ! 早く中に入れッ!!」
「「「うぎゃぁぁああああああああ!!」」」
遂に壊乱した帝国軍一個大隊……。いや、今は一個中隊くらいか?
城に逃げ込んだ連中は、無情にも城外にいた連中を締め出す。
「よ、よせ! 開けろ!!」
「開けろ。開けろッ!」
がんがんがんッ!!
「締め出す気がテメェら!?」
「早く開けろぉぉぉおお!!」
「や、奴らがぁあああ───アビュ!」
どんどんどんッ!
「だ、ダメだ! 締め出された!」
「くそぉぉおおお! こじ開けろ!」
「き、貴様ら、ワシのために盾になれ! 早く開けんか───ワビュ」
ついには、ブシュウ!! と血を吹いて、豪華な身なりの城主が撃ち倒される。
だが、狙ってやったわけではない。ただの有象無象として射殺……。
──アメリカ軍の無慈悲なことといったらない!!
もう、だれかれ構わず、動く帝国軍は全て敵だと言わんばかり───。
『HAHAHAHAHAHAHAHA!! いよぉし、敵の拠点確認、アームストロング砲───撃てぇぇぇ!!』
『『了解ッ! 撃ちます!』』
ガキン───……。
耳を塞いで、拉縄を退くと───ズドォォォォォオオオオン!!!!
大音響ッッッ!!
空を圧せんばかりの大音響!!
「きゃ、ひぃぃぃっぃぃい……」
さすがにこれはエミリアも腰を抜かした。
今までの轟音が川のせせらぎに思えるほどの大音響!
アメリカ軍が準備していたもう一個の破城追が、なんと火を噴いたのだ。
…………火?!
いや、火なんてものじゃない!!
───あれは雷だ!!!
ヒュルルルルルルルルル…………。
ルルル──────。
ヅバァァァァァァァアアアアン!!!
「「ぐああああああああああ!!」」
そして、爆発!
強固なはずの城の正門を、文字通りぶっ飛ばした!!
「あわわわ……」
エミリアですら腰を抜かす威力。
中に入って一安心、と思っていたであろう帝国兵が粉々に砕け散った。
『行けッ!! 行けッ!! 行けッ!! ダイナマイトをぶち込んでやれ!』
『『『了解ッ!』』』
肩掛け鞄を担いだアメリカ軍が身軽になって駆けていく。
砲撃が直撃し、いまだに燻る城門に突撃。
あっという間に城の正門後に取り付くアメリカ兵の一個班が、咥えていた紙巻タバコを、線のようなものにおしつける。
遠くにいてもジジジジ……という、どことなく不安にさせる音が響いてきた。
『点火ぁ!』
『爆発するぞ!』
『──全員伏せろぉぉぉおお!!』
駆けていったアメリカ軍が急ぎ足で戻ると、指揮官に報告。
指揮官は今までで一番大きな声で周囲に怒鳴る。
「ちょ、え? な、なに?!」
『『『全員伏せろぉぉおお!』』』
そして、楽し気に銃を乱射していたアメリカ軍もコレには素直に従うらしい。
無様に見える格好で、全員が地べたに這いつくばった。
エミリアは砲撃のあと、腰を抜かしていたがそこにアメリカ軍指揮官が覆いかぶさるとその体でエミリアを守った?
「え? きゃ!?」
突然地面に押し倒され、可愛い悲鳴をあげるエミリア。
反射的に、指揮官を押し返そうとしてしまう。
それは今までの経緯からすれば仕方ないことだが、指揮官は真剣そのもの。
一見間抜けに見えるも、彼は口を開けて耳を覆っている。
だが、エミリアがボケッとしていることに気付いた指揮官は、自らの手でエミリアの長い笹耳を覆った。
『口を開けて、腹に力をいれなさいッ』
え?
な、なに?
だが、意味が分からずボンヤリしているエミリアに再度指揮官は言う。
口を開けろ。
腹に力を入れろ、と──。
言われるままに口を開けた途端────。
──チュドーーーーーーーーーーーーン!!!
城が大爆発した──────……!
……エミリアの反撃が始まる!!
横暴な者どもに火力の鉄槌を!!
少しでも面白い、続きが早く読みたい!と思いましたら、
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