第19話「USA!!」
すぅ……。
───薙ぎ払えッッ
『『『了解ッ。閣下!!』』』
ズドンッッ、
ドン、ドン、ドン、ドンッ!!
新たな死者の群れもなんのその!!
アメリカ軍が鎧袖一触でどんどん弾をぶっぱなし、死体の群れの数を減らしていく。
対戦車砲の周りには、硝煙臭い薬莢が大量に散らばっているが、まったく故障もなく撃ち放題。
ドン、ドン、ドン、ドンッ!!
ドン、ドン、ドン、ドンッ!!
ドン、ドン、ドン、ドンッ!!
待ち構えている対戦車砲列に、ただボンヤリ歩いて向かう死者に敵うはずもない!
一応、弓やら槍やらで反撃しようとしているらしいが、射程に入る前に大粒散弾に引き裂かれてグッチャグチャ!!
「な、なななんあ、なんですか! なんなんですか! なんなのだ、それはぁぁぁああ!!」
動揺するロベルトであったが、対してエミリアは不敵な笑み。
「あは? これぇ?」
スゥっ───、
「───キャニスター弾よッ!!」
はぁぁぁああ?!?!
そ、そんなの、
「おかしいだろうがーーーーー!!」
ドカーーーーーーーーン!!
「しるか、ぼけっ」
エミリアの冷たい突き放しの後。
ザァァァァ……と、降り注ぐ大粒散弾が死者を、もう一度死者に……。
死体は死体に変わり、二度と動かない。
その死者たちを前に軽く瞑目したエミリアは、
「さぁ。もう、眠りなさい───……帝国軍の兵士たちよ。死者の魂まで、断罪しようとは思わないわ」
帝国兵とはいえ、いまやもう愛しき死霊たち──────……貴方たちにも冥府が待っているよ。
───そこに、お帰りなさい……。
「まだだ!! まだだ!! まだだぁぁあ!
帝国軍10万は不滅だぁぁぁああ!!」
うーーー、あーーー、うぅーーー!
ぐるるるる、ぐぅぅぅうーーーー!
ズルズルズルズルズル……。
ロベルトの背後から、何体もの死者の群れが現れる。
そして、瓦礫の下から顔を出す。
なるほど、確かにキリがない。
……だけど、
「───アメリカ軍相手に物量?」
そう、だけど───だ。
ふふふ。
「───ふふふふふふ」
ふふふふふふふふふふ。
あはははははははははははははははははははははははは!!
「あーっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっ!!」
心底オカシイと笑うエミリア。
それを顔を歪めながら、憎々し気に睨むロベルト。
「こ、この売女め! な、なな、何がおかしいのです!」
「おっかしいわよぉ────あははははは」
ギリギリと歯ぎしりするロベルトを、クスリと笑って挑発。
だぁぁって、そうでしょ??
「私ね───……物量勝負なら負ける気がしないもの」
呆れた物量を誇るアメリカ軍。
彼の者たちの戦術理論は常に数の優位。
物量の優越がなくして、戦いなどあり得ない───。
「おいで……愛しのアメリカ軍よ───」
ズズズズズ───!!
魔法陣より出でる無数の軍勢!
そう、無数に!!
ギャラギャラギャラ……。
深緑のボディを煌めかせるのは、スチュアート軽戦車!
かの戦車はが騒々しい音とともに、
ザッザッザッザ!!
その背後からは、火炎放射器を担いだ工兵たちが群れを成して、
ゴロゴロゴロゴロゴロ……。
そして、追加の対戦車砲が砲兵と共に何門も!!
アメリカ軍。
アメリカ軍。
───アメリカ軍!!!
どこから、どこまでもアメリカ軍!!!
「───な、なんななななななな、なんですかそれは!?」
あはは、見てわからない?
「───アメリカ軍であるッッ!!」
……ドォン!!
と、腕を組んだエミリアの周囲を───ズラッと埋め尽くすアメリカ軍の兵士達!
「そ、そんなの……。そんなの───」
そんなの──────!!!
さぁ、
「───終わりよロベルト。さぁさ、かかっておいでなさい」
エミリアの言葉に答えるように、ビュン!───と矢が放たれ、彼女を貫かんとするもッ!
「ぬるい」
パシィと、それを受け止め投げ捨てる。
そして、
発射地点に向かってアメリカ軍が一斉砲撃!
『『『発射ぁぁあ!』』』
スドドォォオオオン!!
あっという間に紅蓮の炎に包まれる死体の群れ。
とくに、矢を放った着弾点は念入りに更地に変えられる。
ふふふふふ!
「……一発の矢には、千発の銃弾で答えよう!」
ダダダダダダダダダダダダダダダン!!
「───10発の魔法には、万発の砲弾で答えよう!」
ズドン、ズドンズドンズドンズドン!!!
「───百人の騎士には、十万の兵士を送りこもう!」
『『『『『U・S・A!!』』』』』
平伏せ、帝国の愚者どもよ───!!
『『『U・S・A』』』
『『『『U・S・A!!』』』』
U・S・A───!!!
「U・S・A!!」
謳いながら、ロベルトを睥睨するエミリア。
そして、驚愕のためか体をガクガクと揺らすロベルト……。
驚いたかしらロベルト?
これがアメリカ軍。
私の──────新し
「そ、そんなの───」
ん?
そんなのって─────────!!!
「──────いいッ!!」
ニコォと微笑むロベルト。
いつもの細目がさらにキュウと細くなりキツネのようだ。
そして宣う。
「いい!! いい! いいぞ、エミリア!」
───いいなぁぁぁ!!
「───いいなぁぁぁあ!! それ、それが、欲すぃぃぃぃいいい!!!」
ロベルトが目を輝かせて恍惚とする。
あぁ!
あぁぁ!!
あぁぁぁぁッ♪♪♪
「エミリア!! エミリア!! あぁぁぁ、エミリア!!!」
愛しい、愛しい、愛しいエミリア!!
「あぁぁぁ、好きだ!! 君が好きだエミリア!!」
欲しい、欲しい、欲しいエミリア!!
「ああああああ、どうすればいい?! どうすれば手に入る───!!」
愛している、愛しているよエミリア!!
「何でも出そう───。何でもしよう!! だから君に、愛を囁かせてくれッ!!」
耳元で、ベッドで、永久に語り合いたい!!
「好きだ好きだ好きだ好きだ!! あの夜に君と会った瞬間───恐怖とともに、私はアナタを愛していたんだ!!」
エミリアぁぁぁぁぁぁあああああああ!!
万感の思いを込めた大賢者告白に、エミリア・ルイジアナはたった一言。
「………………きもッ」




