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勇者に捨てられた死霊術士~彼女が最強に這い戻るまで~  作者: LA軍@呪具師(250万部)アニメ化決定ッ
第3章「帝国の賢者」

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第15話「対面」

「ん~♪ ふふ~♪」


 エミリアは帝国軍を撃破したあと、抜き身の剣を携えたまま悠然と帝都を歩いていた。

 

 もっとも、帝都とは言っても今は瓦礫の山。

 だが、そんな瓦礫の中にも濃密な人間の気配は感じる。


 さすがは世界最強国家の帝国───その首都だ。

 あれ程16インチ砲弾をぶち込んでも、まだまだ、まだまだまだ──……まーだ人間はたくさんいるらしい。


「あはははは♪ これが人間? ここが帝都?」


 世界最強国家の都ぉ?


「たいしたことないわねー♪」


 ん~ふふ~♪


 帝都はあちこちで延焼しており、まるで焼け野原だ。

 当然住民の姿は見えず───……。


 だが、そこかしこに生き残りはいるのだろうが、微かに気配と衣擦れの音がする。

 その様子からも、一部始終を彼らは見ていたのだ。

 帝都を焼いた下手人がエミリアであると言う事を知り、今は息を殺しているのだろう。


「うふふ。そのまま、怯えているがいいわ」


 家屋の残骸に身を寄せ、ガタガタと震えているのだ。ワザワザ相手にするまでもない。


 だが、歯向かうなら別だ。敵の残党とて、まだまだいるだろう。

 そして、ギーガンの突撃に付き合わず逃亡を図った兵も、かなり多くいるに違いない。

 逃亡兵と敗残兵にエミリアを攻撃する意思などないだろうが、ここは腐っても敵地だ。


 もっとも、エミリアに戦いを挑もうとする勇者…(この場合は愚者か)は、どこを探してもいない様子。


 いるとすれば…………。

「──さぁ、ロベルト。あなたは、これくらいで死ぬはずはないわよね」


 勇者小隊にいた時に、散々自慢していたものだ。

 帝都に専用の研究室をもっていると──。


 そして、魔族領を出るときに、帝国軍の指揮官クラスから得た情報をもとに、エミリアは征く。


 奴がいる、その場所へと───。


 目標は、基部だけになった皇城。

 ……皇城だったもの。


 なにせ、デカくて目立つものだから、戦艦の艦砲射撃が集中して、ほとんど更地になっている。


 構造材が今も燃えているのか、白い煙と黒い煙が斑に混ざり合っている様子が見えた。


 だが、それだけじゃあない。


 世界最強国家の帝国───その元首が住む城だ。

 当然、地下も広大で無茶苦茶頑丈に作られている。


 すわッ、その時!───となれば皇帝が脱出するための通路もあることだろう。

 そして、今がまさにその時だ。


「ふふふ。でも、アナタはそこにいる───でしょ? ロベルト」


 プライドが高く、それなりに頭のいいロベルトのことだ。

 ただただ、無防備に逃げるよりも、少しでも有利な態勢で迎え撃とうとするだろう。

 ここは、廃墟に成り果てようとも、奴のホームグランドだ。

 それなりに策も駒もあるに違いない。


 それ以前に、ロベルトはエミリアを侮っている。

 かつて、勇者のペットをして飼われている姿を見られているのだ。そう思われていても仕方のないこと。


 ましてや、ボロクズのようになり果てたエミリアを知っている。……死霊術を破壊した張本人なのだから当然のこと。


 ……ゆえに、見下し、

 笑い、辱めた女が復讐に来るのだ───。


(それに対して、尻尾を巻いて逃げるなど出来ないでしょ?)


「だから、さっさと来なさい───」

 ……でないとこっちから行くわよぉ。


 奴とて、エミリアがどこまでも追ってくることを理解しているのだ。いまさら逃げるはずもない。


 バリ、メリ、グシャ……!


 廃墟と化した皇城跡地を歩く。

 海岸と帝都中心に、アメリカ軍を置いていき、エミリアはただ一人ロベルトに相対しようと言う。



 そして……。

 


「ゴホゴホ……!」


 思った通りだ。

 あのロベルトが咳き込みながらも、(くすぶ)る廃墟の中、ひとり悠然と立っていた……。




「やぁ、エミリア───」

「あら、ロベルト───」




 久しぶり。




 ニッコリと笑って笑顔の応酬。

 ロベルトは例の細目をさらにキュウと細く、細く───。


 エミリアは美しい笑みを深く、深く──。


「お待たせ……」

「ふふ……。そんなに待ってはいないよ? いやはや、それよりも、君は勇者殿の傍に身を寄せていた時より、今の方が一層、だんぜん輝いているね」


 微笑を浮かべたまま、ロベルトはエミリアの足先から頭の先まで舐める様に見渡す。


「あら、ありがとう。お陰様で───……」


 でも、

「───アナタとおしゃべりをする気はないわ。まずは私から剥いだ呪印を返してもらおうかしら? そのあとは、」


 死ん───


「呪印? あぁ、これですか───」


 足元の木箱から小さな瓶を取り出すロベルト。

 そこには、褐色の皮膚片が液体に浮いていた。


 あぁ、間違いない。

 あの紋様は私の愛しいアンデッドとの繋がり───死霊術の呪印だ。


「大変参考になりましたよ。あとは、こちら(・・・)をバラバラにして、よ~く解析してみました。───ほら、アナタのご両親」


 ッ!!


「死霊術を扱うアナタを生んだご両親です。やはり、血筋も多少関係しているようですね。お陰で人類の悲願───蘇生と不老不死に一歩近づけましたよ」


 そう言って、なにか丸いものが浮かぶ木箱の中から大きな瓶を──────……。


「と……」


 父さん?

 母……さん?


「おや? 感動のご対面でしたかな?───ははは、生首ですが、つもる話も、」


 お

 お、

 お───……


「───おのれぇぇぇぇぇぇぇぇっぇぇええええ!!!!」


 ───こぉぉぉぉぉおおの、外道がぁぁぁぁあああ!!


 ダンッッッ!!! と、足元の廃材を踏み抜きエミリアが跳躍ッ!!


 この腐れ外道と会話したのが間違いだ!!

 一呼吸すら、させてなるものか!!



「死ぃぃぃぃぃいいねぇぇぇええええ!!」



 剣を構え、

 ビキビキッ!! と、力を籠めてロベルトの顔面を串刺しにしてやるぁぁぁぁぁぁぁああ!!!


 ───猛烈な勢いで迫る、オリハルコンの大剣!

 それがロベルトの顔を輪切りにせんとする──、



 キィン!!




「───……そうはさせねぇよ!」

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