第3話「蹂躙せよ!」
エミリアの魂の叫びがリリムダ城塞にこだまする。
私が滅ぼす!!!
人類であるだけという理由で、死に絶えるがいい──!
「ひ、ひぃぃい! なんだよ、アイツ! 強すぎるだろう?!」
「逃げろ! 逃げろ! 人を集めろぉぉお!」
手負いの門番たちがズルズルと這いまわっているが完全無視。
エミリアはサッと髪をかき上げると、フゥと一息つく、そして───。
タタタタタッ!!
軽快に駆けるエミリア。
目指すは半壊した水門───。そして、その上の見張り台だ。
「借りるわね」
走りつつ、サッと腰をかがめて門番の装備から片手剣を二本拝借すると、そのまま水門の壁を蹴る。
タッ!!
装甲艦の砲撃と体当たりでひしゃげたそれは足掛かりに十分だ。
「ふん!」
ダンッ!
ダンッ、ダンッ!!
蹴り抜かんばかりに踏み込むと、エミリアは跳躍し上へ上へ!!
傍から見れば垂直の壁を上っているようにも見える。
そして、あっという間に水門の壁を上り切ると、バサバサバサー!! とマントをはためかせ、瑞々しい肢体を見せつけるが如く空を舞う。
「あ、悪魔……?!」
「ひぃ! こっちに来る! か、鐘をとめるな! とめるなぁっぁ!」
そして、二手に構えた片手剣のもと、驚愕している門番の眼前に迫り───。
「……うるさいわね。一回鳴らせば十分よッ!」
一手で未だ激しくカンカンと鳴らす警戒鐘を吊るす紐を断ち切り、さらに一手で門番の喉を掻き切る。
「がふ……?!」
ビューと血が噴き出す前に、門番の上に鐘が落下し、
───ゴワァッァン♪
「あら、いい音」
そして、鐘に潰される二人と、その出血を覆い隠した。
「邪魔よ……フンッ」
ガランガラン! と、蹴り飛ばされた鐘が、門番と一緒に激しい音とともに地面に落ちていく。
エミリアはその体を踏み台としてさらに一跳躍。
バサバサバサッッ!!
蝙蝠がはばたくように、黒いマントを翻し、褐色の肌を太陽のもとに晒して水門の上空に遷移する。
そのまま、クルンと曲芸の様に体を翻すと、人間たちの街───リリムダが良く見えた。
───あぁ、
「いい眺め…………」
エミリアの視界に映る街。
その中心をまっすぐに貫き南へ流れていく川の先───。
それは、川と並行に走る街道と、遥か遠くにみえる人の国の景色。
あぁ、そこか。
そこにあるのだな?
その先に、その道と川の果てに人間どもの都──帝国の首都があるというのだな……!
バサバサとマントが風を切る。
跳躍の最高点に達した後は、落下するのみ。
エミリアは無重力と自由落下を楽しみつつ、徐々に遠くの景色を眺めた。
光景が流れるように下へ下へと下がり、視界は再びリリムダの街。
そこには、右往左往する人間がウジャウジャといる。
うふふふふふふふふふふ。
たくさんいるわね───。
自警団が、慌てて装備を引っ掴んで事務所に駆け込む。
……かと思えば隊列を組んで、右へ左へ───。
何が起こっているのか、分かっていないのだろう。
バカな連中。
何が起こっているかわからない……?
「───私が怒っている!!」
クルリと空中で姿勢を変えたエミリア。
彼女は最後に街の外の景色を視界に収めた。
「あれは───……」
ほ~う?
街の外には帝国軍の駐屯地か───……ふむ、一個中隊もいないな?
まぁいい。
「見つけたわ」
──────……スタンッ!!
エミリアは全てを視界に収めたあと、水門の半ばに強引に船体を突っ込んでいた装甲艦の上に着地した。
───チャボンッ!
膝と腰を使って衝撃を逃がすと、血を吸った剣を左右の川に投げ捨てる。
こんなもの必要ない。
すぅぅ……。
「聞け! アメリカ軍!!」
『傾注』
ガガガン!!
装甲艦の中から姿を出したアメリカ海兵隊が、船上で不動の姿勢。
「私は命令する──────」
ザッ!
一斉に敬礼を受けたエミリアは、もう容赦などしない。
「───市内を蹂躙しろッ! 焼け、破壊しろ、全部殺せぇぇえ!」
人類は敵だ!!!!!
『了解! 閣下!!』
最大船速!!
両舷砲戦用意!!
陸戦準備!!
…………───リリムダを蹂躙せよ!!!
『タリホォォォオ!!!』




