↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/45

第39接種「タイトル無題」

 コロナウイルス感染者は依然として爆発的に増えている。ワクチンの3回目接種がすすんでいるが、その3回目接種もまるで追い付いていない現状。一度は収束するかに思われたこのウイルスの蔓延だったが、収まるにはまだしばらく時間がかかりそうだ。


 2回目の接種で命を落とした破鬱はもちろん、3回目接種のことも、オミクロン株なんてのも知らない。だからこそ、破鬱は自分の持てる手札で、持てる最大限の力で戦っていくしかなかった……


「ちょっと、ちょっと……これ、なんか不穏な雰囲気なんですけど! ぎぃには分かる、これやばいやつ!」


「ハウツさん……村の人たちには罪がありませんが、僕たちは魔王軍ですからね」


 タルーデは魔王軍だから人々を殺しても仕方がない。そんな真意を俺に聞かせようとしていた。


「ここで村の人たちを倒したって、倒さなくたって何も変わらない」


 そう、オミクロンと呼ばれる何者かを妥当しない限り、俺たちの戦いは終わらないのだ。


「ファイザさん、俺たちが必ずそのオミクロンってやつを倒してみせます……」


――だから……


「何!?!?」


 俺はファイザもろともこの【ワーク・ティン・セシュ・カイジョー】の人たちの意識を奪った。身体能力強化があれば、その程度は容易いことだ。


「ってことで、これで、よしっと……」


 この後することは一つ!


――【6G《シックスセンス》電波受信】


 瞬時にオミクロンの位置を特定する。そうだ、最初から、俺はこうすればよかったんだ。そうしてそれに気が付かなかったんだ。


「ここか!」


――【状態異常無効】


 毒沼なんて意味がないし、通用しない。


――【自動回復付与】


 針の筵だってものともしない、無意味だ。


――【魔法無詠唱状態】


 纏《まと》わりつくものを全てノータイムで燃やし尽くす。


「なんだ、こんな男、最初から俺の手にかかれば……」


 俺は目の前の臣黒雨を思い切り殴る。何の疑問も持つことなく、迷いも、躊躇いも、捨てきって。


「そうだ、そう。勝ったと思った瞬間、その瞬間に負けを理解することがどれほど愚かで虚しいものか。体感すべきだ」


――絶対感染《パンドラ・ミーム》!


「《《すでに》》お前は俺の配下だった。破鬱無大」


――それが甘ちゃんな坊やというものだ。己を呪うことすらもできずに、死ね。


 そう、俺は、また、考えなしに突き進んでしまった。


『よく考えて生きていれば、こんな結果にはならなかっただろう。だけど、考えるなんてのは面倒だ。受動的に生きていた方が楽に決まっている。難しいことを考えると悩みが生まれる。悩みが生まれると苦しみ藻掻く。そんな人生、誰だって嫌だろ』


 俺はまた、繰り返す。己の過ちを。


 だが、俺は、そんなことに気が付くことすらも、できないで……


――バチン!


 脳内で何かが弾け、意識が失われる。自由が、尊厳が、意識が、意思が、自我が、誇りが、命が、灯が、鼓動が……


――喪失した。


 そうだな、この物語は無題だ。題のない、無意味で、台無しな物語だった。


 だから、そうだ、これからは、ここからは、この臣黒雨が語り継いでやるとするか。


 感謝しろよ。弱き俗人よ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。