Ep-587 反撃
「へぇ、ここがセステラかい?」
魔導飛行船のタラップから、一人の女が足を地に降ろした。
赤いローブから覗く金髪が、陽光に反射して煌めく。
周囲の人間は、彼女を特に気にした様子はない。
それもそのはず、彼女の名を知る者は殆どいないのだから。
しかし、その名を聞けば無法者達は恐れ、震え上がるだろう。
「こんにちは」
「うおっ!? あ、あんたか....」
その時、積み荷の影から人影が姿を現す。
ユカリだ。
「すぐに戦いになるけれど、準備は出来てる?」
「勿論! 報酬は弾むんだろう?」
「うん、それと――――もう一人協力者がいるから」
「ああ、それぐらいは構わないぜ」
「じゃ、任せたよ、シヴァ」
「ああ!」
――――赤鷹、シヴァ。
かつてユカリに刺客として差し向けられ、その手で倒され解放団に拾われた女であった。
今回ユカリに呼ばれたのは、彼女の圧倒的な強さに理由がある。
「腕はなまってない?」
「かもしれねぇな!」
シヴァが背にあった棒を掴み、引き抜いた。
異空間に収納されていた巨大な刀身が現れ、港にいる人間達が驚いて腰を抜かす。
「この通り、筋力は全く衰えてねぇ」
「うん、イイ感じだね」
ユカリは頷く。
シヴァは巨大な剣を再び仕舞うと、ユカリの肩を叩く。
「で?」
「――――お話は酒場で、かな?」
「そーだよ、分かってんじゃねーか!」
お酒飲めないんだけどな、というユカリの呟きは風に消えた。
話は前日に遡る。
エルドリアンと雑談をした帰りに、ユカリは王都に高速魔導通信を回した。
それは解放団へと伝わり、ユカリの指名した人物を呼び出した。
「ユカリは酒を飲まねーんだな」
「まだ飲める年じゃないよ」
酒場でシヴァは瓶を早速空にして、大声で笑う。
ユカリはそれを見て呆れつつ、気になったことを尋ねる。
「シヴァってもしかしてさ、ドワーフ?」
「ブッ!?」
シヴァは酒を噴き出した。
ユカリは即座に回避して、図星かとシヴァを見た。
「な、なんであたしがドワーフに見えるのさ! あんなちんちくりんじゃないよ!」
「でも、真昼間からお酒は飲むし、人間にしては結構力が強いよね?」
「あたしはドラゴンとエルフのハーフなんだよ! 失礼な事を言うね!」
ユカリは硬直する。
ドラゴン要素とエルフ要素どこ? と至極真っ当な疑問を抱いたからだ。
「......エルフの耳と魔力はあたしには受け継がれなかった、竜の力も同じさ。あたしは親に捨てられたんだ」
「そっか」
「親のバカヤローは気が付かなかったが、あたしの身体能力は人間の数十倍だって事に気付けて良かったよ」
「じゃ、仕事の話を......」
「ああ! 勿論!」
シヴァは地図を広げ、ある一点を示した。
「盗賊ギルドは、多分地下にイロイロ広げてるね」
「どうしてわかるの?」
「構造上、一回崩さないと裏道を作れないのさ。だから地上の建物は飾りで地下に降りる階段があるはずだね」
「凄いね」
シヴァの説明に、ユカリは納得する。
単細胞だと思っていたシヴァだったが、こうして実際に話してみると彼女が綿密な段取りで動いているとわかる。
「あんたの部下は上を見張ってりゃいいわけだね、逃げる奴は皆殺しでいいから」
「伝えておくよ」
「頼むよ、あたしは地下で殺しまくってやるから」
今回の作戦、ユカリは敵に容赦をする必要はないと見ていた。
しかし、ユカリは未だに人を殺すとき躊躇してしまう。
それで、殺しにいらない感情を持たないシヴァを呼んだのだった。
「じゃ、夜にこっちの建物に集合しようぜ」
「分かった」
シヴァとユカリは作戦の内容を話し合うのだった。
夜。
盗賊ギルドは、昼間よりも大きな賑わいを見せていた。
多くの犯罪者が、受けた依頼の達成や失敗を報告したり、ギルド地下のマーケットに向かうため列を作ったりしていた。
「今日も平和だな」
「オイ、やめろよ――――」
その光景に、酒場スペースで酒を飲んでいた男が呟きを漏らし、側にいた男が注意をしようとした時。
ギルド入り口の扉が、その左右の壁ごと吹き飛んだ。
「なっ、なんだ!?」
「アーッハッハッハ! 随分と貧相な内装じゃあないか!」
外の夜闇から姿を現したのは、大剣を持った女だった。
誰だ、こいつは?
そう思った盗賊もいたが、数人は即座に反応した。
「ゲッ、ゲエエエエエッ!? 〈赤鷹〉!?」
「あたしを覚えてくれたとは嬉しいじゃないか! 地獄で仲良く酒でも飲むと良い!」
直後、シヴァは何の躊躇もなく剣を振った。
入り口付近にいた人間達は纏めて上下に両断され、為す術もなく即死した。
「うわああああああああああ!?」
「血迷ったか!?」
血飛沫が飛び交い、ギルドの中は一瞬で阿鼻叫喚の地獄と化した。
数人が魔法の詠唱を始めるが、シヴァはニヤリと笑うだけだった。
「ファイアアロー!」
「ツイスター!」
「ブリザード!」
魔法がシヴァに直撃するが、シヴァは避けない。
そして直後、シヴァから赤い光が飛んで、攻撃者の頭を破裂させて消滅した。
「アッハッハ、遠距離対策をしてないとでも思ったのかい? バカだねぇ地方の盗賊ってのはさぁ!」
直後、シヴァの姿が集団の一つの前に現れた。
「死ね」
再び、数人が肉塊と化す。
シヴァが血を浴びる度、そのマントに血が吸われていく。
そして、シヴァの速度が段々と増していく。
「アッハハァ! 中々使えるじゃないか!」
シヴァは派手に笑うと、剣を振るい続けるのだった。
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