Ep-503 対ドミニオン攻略戦 part3
私の目の前に、人一人分の穴が開く。
虚王錬変によって、私が外装に干渉したのだ。
「.........G・O・S、ブラックルーンドラゴン、この場は任せた!」
「はっ!!」
「御意!」
外装の内部から、中の通路が少しだけ見えている。
今なら入れるが、徐々にその外装が修復を始めているのが見えている。
直ぐに入れなくなってしまうだろう。
なので、私は二人に任せ、内部へと潜入するのだった。
任された二体は、起き上がるドミニオンをじっと待つ。
ドミニオンは手を突いて起き上がり、二体の動向を観察することもなく襲い掛かってきた。
「.........まあ、頑張るのだな」
「ふん」
ドミニオンの拳を、G・O・Sは腕をクロスさせてガードし、交差を解き放つことによってドミニオンのバランスを崩す。
「ハァッ!!」
G・O・Sは後方に跳び、そのまま膝を屈して跳躍し――――飛び蹴りを食らわせた。
ドミニオンは蹴りをガードしたが、勢いを殺せず建物を薙ぎ倒し、尻餅を付いた。
立ちあがろうとしたドミニオンに陰が差す。
「フンヌゥゥゥアッ!」
両手を合わせ、G・O・Sはドミニオンに振り下ろす。
ドミニオンは咄嗟にガードするが、そのガードを貫いて一撃は突き刺さる。
あまりの衝撃にドミニオンを中心に、巨大なクレーターが出来た。
「今だ!」
「グルァアアアアアアアッ!」
G・O・Sの背後から、ブラックルーンドラゴンが姿を現し、ブレスを放った。
ブレスはドミニオンのガードに突き刺さり、アームガードを突き破って破壊した。
「ふっ、我の方がやるようだな」
「全てはユカリ様の為に、優劣など関係はない」
二体はまた、起き上がってくるドミニオンと対峙する。
一見地味だが、着実に天秤はユカリ側へと傾いていた。
しかし.........
「ムゥ...?」
「気をつけるがいい、何かして来るぞ!」
ドミニオンは護国の最終兵器である。
それが、たった二体の魔物程度に遅れを取るだろうか?
そうではないだろう。
ドミニオンの身体が輝き、二体が与えた傷が急速に修復していく。
「なんと!?」
「気を付けよ、此奴は地脈から魔力を吸収している!」
ドミニオンは様子を見ていただけに過ぎない。
自らの内蔵する兵器でこの魔物を倒し切れるか、それを観察していただけに過ぎなかった。
「ォオオオオオオオッ!」
G・O・Sがドミニオンを制止しようと、その身体に覆い被さる。
しかし、直後...光と共に魔力が荒れ狂った。
「ブラック......ルーン...ドラゴン! 逃げろ、私だけならば良いが、貴殿には耐えられないだろう」
「......任せた!」
ブラックルーンドラゴンは空へと逃げ出す。
ドミニオンを中心に光球が広がり、それは徐々に拡大していく。
G・O・Sもまた、光に飲まれ、全身にダメージを負っていく。
「ヌゥ...ッ!」
そして、光が辺り一面を覆い尽くした。
その頃、避難所では。
ヒショーとコルは手分けして、避難民の整理を行なっていた。
空には巨大な光のドーム......シロが張った結界がある。
「......ヒショー様、行ってきます」
「任せましょう、我が弟子」
敵意の視線を受けながらも、二人は避難民を誘導していたが...ある時コルが、別の方向に足を進めた。
ヒショーはそれを咎めず、任せると口にした。
その先には、結界の境界がある。
『異.........排......』
『.........効......指...』
結界の前に集まるのは、数体の霧の衛兵。
それらがガンガンと剣で結界を叩いていた。
この程度で結界は揺らがないが、ドミニオンの攻撃に結界は耐えられない。
結界が壊れた際に中に霧の衛兵が雪崩れ込めば、組合員たちとおまけの避難民達を守り切るのは難しくなる。
「うぉおおおおお!」
コルは走る。
小さくなった身体を元に戻す為、今は少しでも経験値が必要なのだ。
ユカリは小さくなったコルも可愛いと言ってくれたが、コルは常に責任に追われるような感情を抱いていた。
自らの主を傷付けようとし、あまつさえ殺そうとした自分を、主は許してくれた。
だが、周囲はそれを許さない。
コル自身も、自分を許していない。
だからこそ、まずは進化。
進化して、力を取り戻す必要がある。
償いは、そこからするべきなのだとコルは考えていた。
「狐火!」
ライカンスロープに進化した際に失った、狐火をコルは放つ。
小さなそれは、霧の衛兵の一人に当たった瞬間に爆発してそれを飲み込む。
「狐火...!」
コルの身体能力は以前と変わらないが、退化した事で魔力量は極端に低下した。
霧の衛兵を倒せる狐火を放つには、相応の魔力を消費する。
「狐火!」
霧の衛兵は、一体倒してもドミニオンの方向から無数に現れる。
当たり前だが、コルの魔力が先に尽きた。
「...なら、拳で行く!」
コルは魔力を振り絞り、拳に流す。
そして、目の前の衛兵の急所を二度突く。
衛兵は吹き飛び、急所から霧を吐き出して消滅する。
「うぉおおおおお!」
コルは猛然と衛兵に襲いかかり、蹴りを急所に見舞い貫通させる。
一体倒せたことに安堵するコル。
しかし直ぐに、数体の衛兵に群がられ、振り解いて脱出する。
「...次から次へと!」
コルの翳した手に、紫の火が現れる。
「狐火!」
衛兵向けて飛んだ狐火は、折り重なった数体の衛兵を一気に燃やし尽くす。
「かはっ......」
だが、コルの魔力も底をつく。
コルはマナポーションを取り出そうとするが、素早く肉薄した霧の衛兵がそのポーションを叩き落とした。
「あっ...くそ!」
コルはもう一つのポーションを取り出そうとするが、その前にその体に剣が突き刺さる。
「ぐ......!」
コルは何とか耐えつつ、その衛兵の剣を奪い、その胸に突き刺した。
衛兵は崩れ落ちる。
「.........」
「また、そうやって嘆くのですか?」
向かってくる衛兵を前に、コルが俯いたその時。
颯爽と現れたヒショーが、三体の衛兵に強烈な蹴りを放った。
衛兵は胸を抉られ、霧となって消滅した。
「俺が弱いから、守れない。守る力が手に入るなら、過程なんか無視してもいい......そんな考えが、あなたの身を滅ぼしたのですよ、コル」
「ヒショー様...」
コルは分かってはいた。
けれど、どうすれば良かったのだろうかとも思った。
今も昔も、彼は弱いままである。
他の守護者級に比べて、あまりに彼は非力だ。
「何を嘆くのですか?」
「......え?」
ヒショーはただ、コルを見つめるだけだった。
非難する訳でもなく、ただ、そうしているだけだった。
「強くなれば良いのです、鍾乳石が時間をかけて大きくなるように、積み重ねた力は他者から与えられたり、暴走した力よりもずっと強力です」
「.........積み重ねた、力......」
コルは呟く。
ヒショーはコルから目を離し、言った。
「とはいえ、まずはこの不届者等を成敗しなければなりませんね、手伝いましょう」
「はい...!」
コルは二本目のマナポーションを飲み、ヒショーの声に応えて立ち上がった。
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