Ep-05 初戦闘
(2021 11/09)軽微な修正
(2022 3/24)既に消した設定の魔物が出てきていたので修正。
(22/10/5)内容を一部改訂しました。
森の広場に出ると、父はしばらく休憩をすると言って野外ティーセットを取り出して休み始める。それをアロールが遠くから見ていて、森のどこかに降りていくのを俺は見た。
そろそろだな...
そう思った瞬間、森の中から矢が三本、まずは精鋭の喉笛を狙った一撃が飛んできた。
「ッ!メイクウェポン、イモータルシールド!スキルセットチェンジ・シールドセット!ワイドシールド!」
俺はそれをイモータルシールドの効果の高い範囲防御スキルで防ぐ。
父が俺を驚いた風に見つめる。
「ユカリ、その盾は? その技は...?」
「父様、今はそういう場合じゃないみたいだ」
そういうが早いか森の中から武装した兵が現れる。
バカでかい斧やメイスを持った物騒な奴らだ。
護衛達は武器を見て激昂したように叫ぶ。
「誰だお前らは!この方が誰と知っての狼藉かぁッ!」
「ふん、ソウジロウ・アキヅキだろう?」
そして、最後に出てきた大きな獅子の頭を持つ魔族が答えた。
奴の名は...
「俺の名前はガルズライン!我が野望のために貴様の命、頂いてやる!」
「わざわざくれてやる命など持ってはおらぬな! かかってこい!」
ガルズラインが名乗りを上げると、父も刀を抜く。
この人結構冷静なんだよな...
「我らに掛かれば人間を殺すなどたやすいわ! やれい!」
「おおおおおおおお!」
魔族たちが前進してくる。
護衛が剣を抜いて突進するが、
「邪魔、ダ」
「ぐぁああああああ!」
「ぎゃああああああ!」
所詮は片手剣に軽鎧なので斧やメイスに敵うはずもなく、吹っ飛ばされて
左右に転がる。
「おい、反撃されてはかなわん。奴らも余さず殺せ」
「ハ、了解」
兵が散った隙に父さんと母さんが逃げ出そうとするが、馬の脚に矢が射られて動けなくさせられた。
「フフフ、ではラズリー。貴様のそのメイスでまずはあの女を殺せ!」
ガルズラインがそう命じると、ラズリーと呼ばれた兵士がメイスを振りかぶり、
こちらに前進してきた。
「妻を傷つけることは許さぬぞ! 強刃・浸透!」
父が思い切りスキルで切りつけるが、見るからに脆そうな鎧はそれすらも通さない。
そして、父を押しのけたラズリーは恐怖で動けない母に嘲笑を交えてメイスを振りかぶり..——————無慈悲に振り下ろした。
バキィ!
「バ、馬鹿ナ...ソノ力...人間デハアリエナイ...!」
勿論、俺も無抵抗なわけが無い。母とラズリーの間に素早く割り込み、そのメイスを盾で受け止め、過負荷を掛けて叩き折る。ゲーム時代はここは観戦モードで手出しは出来なかったが、今なら守れる。いや、守れるじゃないな。守って見せる!
「メイクウェポン、混沌槍!」
そう叫ぶと俺の手元に、禍々しい彫刻が彫られた槍が出現する。
「スキルセットチェンジ・セットランス!」
俺は槍スキルの一つを発動する。
硬い鎧すら貫く一撃を。
「ピアシングジャベリン!」
「ガアッ!」
名前の通りのピアシングジャベリンは混沌槍の性能も合わさって鎧を貫き、
さらにその下に隠された硬い皮膚すら貫いて致命傷を負わせた。
魔力による防御もないなんて......人間で、さらに子供だからと侮ったな!
「馬鹿な!? ラズリーッ! クソ、ナール!あいつを殺れ!」
「了解ッ!」
斧を持った兵士がこちらに向かって前進する。
毎度思うんだがゲームでもこいつら味方全滅しても平気でかかってくるんだよね。
脳筋野郎もここに極まれりってやつだよな!
「メイクウェポン、影漆刀!スキルセットチェンジ!ショートナイフセット!」
「うおおおお!ラズリーの仇いいいい!」
ナールと呼ばれた兵士の、今まで力任せで相手を屠ってきたのであろう技術も体系も無い一撃をサッとかわし、短刀系の一撃必殺スキルを叩き込む。
「滅華・源」
ザシュ!
俺の手に持った短刀が、綺麗な半円を描く軌道でナールの頭を斬り飛ばす。
「な、なあ…、う、嘘だあああ!」
テンパって逃げ出すガルズラインを、俺は見据える。
勿論逃してやる気など微塵も無い。
「デリートウェポン!メイクウェポン、ソウルシューター!スキルセットチェンジ、ボウセット!」
ゲーム時代散々鬱にさせやがって!報いをくれてやる!
勿論あのイベントみたいに悪霊化もさせない!一撃必殺だ!
「ピンポイントショット!」
「がぁっ!」
俺の放った矢は寸分違わずガルズラインに命中する。
そして、ガルズラインから魂のようなものが飛び出して、四つに分かれて爆散した。…終わったな。
「————父さん、母さん。鍛錬の成果です!」
「鍛錬の領域を超えておるわ!」
「あわわ…ユカリちゃんが…ユカリちゃんが人外魔境に…!」
失礼な奴らだなあ…
これでもレベル1相当なんだぞ。
このゲームはPKで経験値を得られないので一応魔族を殺しても経験値はもらえないことになっている。
そして、俺は逃げ去ったであろう残党と、気配からしてなんらかの理由で逃げずに留まっている魔族に向けて言葉を放つ。
「よく聞け、卑劣な魔族ども。俺らに被害を与えるようなら、お前らは全員殺す。だが、害意が無いのなら今は見逃してやる。そこの魔族、逃げられるようになったら逃げるがいい。逃げなければ殺す」
言い終わると、大きな音を立てて2、3人のローブを着た魔族が逃げていくのを見た。
どうやら、これでこの場に魔族はもういないようだ。
俺は肩の力を抜き、手に持った弓を消した。
心なしか背後からの目線が痛い気がした。
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