IEP-58 絆
「死ね!」
ヘルメスへと斬りかかるナッシャーだったが、その剣は手前に現れたデュアル・スマイトに阻まれる。
ブレイブイラプトによって、展開速度と耐久力が数百倍に向上しているのだ。
「ならっ! ロープコネクト!」
ナッシャーは手から伸ばした縄を使って、高所に跳び上がる。
「ヘルメス、ナッシャーがおかしくなってるのは剣のせいだ!」
「....わかっています!」
エアージャンプを使い、ヘルメスはナッシャーへと追い縋る。
ナッシャーはヘルメスに剣を向け、容赦なくスキルを放つ。
「スラッシュシュート!」
「デュアル・スマイト!」
斜めに置いたデュアル・スマイトで斬撃を防ぎつつ、ヘルメスはそれを足場にナッシャーへと追い縋る。
咄嗟にナッシャーは、ヘルメスの剣を大剣で受ける。
ヘルメスは即座に剣を引き、雪上へ着地する。
「アタシにはお前程度じゃ勝てないんだよ!」
諦めな、とナッシャーは笑う。
だが、ヘルメスはそれに動じる事はなかった。
「ええ、私は攻撃スキルがほぼありませんからね...それに、アレックスと修行をしたあなたが、弱いはずはないですからね」
称賛する言葉を投げかけたヘルメスに、ナッシャーが微妙な表情をする。
期待していた反応ではない、といった様子だ。
「...アタシは弱い、もっと強くならなきゃいけないんだ...! だから、お前の力をよこせ!」
直後、ヘルメスを障壁が囲む。
「...ゼクス・スヴェル!」
そして、逃げ場のなくなったヘルメスに、上からナッシャーが迫る。
だが、そこにアレックスが割り込み、真正面から剣を弾き飛ばす。
「...なっ!」
「ナッシャー、正しい方法で強くならなければ、意味はない」
アレックスは彼女のためを思って言ったが、それが逆効果であることまでは知らなかっただろう。
「正しい方法、正しい方法って......どうしてわざわざ、時間をかけて強くならなきゃいけねえんだよ、ここに直ぐに強くなれる力があるんだろうが!」
「どうして、そんなに時間に拘る!?」
「アタシは今強くなきゃ意味ねえんだ、嫁き遅れてから強くなったって...アタシが正しいって証明できない...!」
ナッシャーから立ち上る黒いオーラが、よりその濃厚さを増していた。
同時にアレックスは、自分の過ちを知る。
何も知らないのだ、彼女が何を思い、どんな闇を抱えてきたのか。
ただ貴族社会に反発するだけであれば、執拗なほどに強さを望んだりは決してしない。他に無限の手段があるのだから。
「だから...アタシの強さのために死ね、ダークネスヴァイト!」
直後、ナッシャーから立ち上る闇が、明確な意思を持って二人に襲いかかる。
「...ヘルメス、俺たちは」
「ええ、一人の強さではありませんから」
ブレイブバーストと、ブレイブイラプトが互いに共鳴するように高まり合い、その場に太陽のような輝きが生まれる。
「今であれば...きっと! エクストラ・スマイト!」
「エクストラ...?」
直後、スマイトが光り輝く。
半円の結界が構築されるが、それの表面にはルーン文字が刻み込まれており、襲ってくる闇を弾いていた。
「あなたの力を少しだけ借りて、より上位のスキルを使いました」
「...なるほど、じゃあ俺にもできるんだな」
「はい、恐らく」
アレックスは試しに、「エクストラ・トゥルーブレード」と呟いてみる。
だが、発動した様子はない。
「...エクストラ・トゥルーセイバー!」
だがしかし、アビリティⅡであれば正常に発動し、エクスカリバーから光が立ち昇る。
「じゃあ、行ってくる」
「気をつけて」
アレックスは剣を構え、外の闇へと飛び出す。
侵蝕する闇は、しかしアレックスの体を蝕むことはない。
ヘルメスが無意識に発動した、新たな力...「ブレイブレジスト」がアレックスを護っているからだ。
「うぉおおおおおおおおお!」
「アレックスーーーーーーーーー!!」
両者の剣が動く。
そして、互いの口が、必殺の名を叫ぶ。
「ミーティアスラッシュ!」
「シトゥラスラッシュ!」
互いの剣が激しくぶつかり合う。
アレックスの輝きが闇へと食らい付き、闇もまたアレックスへと喰らいつく。
「お前はどうして、アタシより強いんだ...っ!」
「俺は弱い...けど、もしお前から見て強いと思うなら...それは、俺が強さ以外を知っているからだ!」
そして、勝敗が決まる。
不壊ではないナッシャーの剣、クラレントにヒビが入り、入り込んだ光によって粉々に砕け散った。
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