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【300万PV突破】不人気職の俺が貴族令嬢に転生して異世界で無双する話 ~武器使いの異世界冒険譚~  作者: 黴男
第一章 王都決戦編

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IEP-58 絆

「死ね!」


ヘルメスへと斬りかかるナッシャーだったが、その剣は手前に現れたデュアル・スマイトに阻まれる。

ブレイブイラプトによって、展開速度と耐久力が数百倍に向上しているのだ。


「ならっ! ロープコネクト!」


ナッシャーは手から伸ばした縄を使って、高所に跳び上がる。


「ヘルメス、ナッシャーがおかしくなってるのは剣のせいだ!」

「....わかっています!」


エアージャンプを使い、ヘルメスはナッシャーへと追い縋る。

ナッシャーはヘルメスに剣を向け、容赦なくスキルを放つ。


「スラッシュシュート!」

「デュアル・スマイト!」


斜めに置いたデュアル・スマイトで斬撃を防ぎつつ、ヘルメスはそれを足場にナッシャーへと追い縋る。

咄嗟にナッシャーは、ヘルメスの剣を大剣で受ける。

ヘルメスは即座に剣を引き、雪上へ着地する。


「アタシにはお前程度じゃ勝てないんだよ!」


諦めな、とナッシャーは笑う。

だが、ヘルメスはそれに動じる事はなかった。


「ええ、私は攻撃スキルがほぼありませんからね...それに、アレックスと修行をしたあなたが、弱いはずはないですからね」


称賛する言葉を投げかけたヘルメスに、ナッシャーが微妙な表情をする。

期待していた反応ではない、といった様子だ。


「...アタシは弱い、もっと強くならなきゃいけないんだ...! だから、お前の力をよこせ!」


直後、ヘルメスを障壁が囲む。


「...ゼクス・スヴェル!」


そして、逃げ場のなくなったヘルメスに、上からナッシャーが迫る。

だが、そこにアレックスが割り込み、真正面から剣を弾き飛ばす。


「...なっ!」

「ナッシャー、正しい方法で強くならなければ、意味はない」


アレックスは彼女のためを思って言ったが、それが逆効果であることまでは知らなかっただろう。


「正しい方法、正しい方法って......どうしてわざわざ、時間をかけて強くならなきゃいけねえんだよ、ここに直ぐに強くなれる力があるんだろうが!」

「どうして、そんなに時間に拘る!?」

「アタシは今強くなきゃ意味ねえんだ、嫁き遅れてから強くなったって...アタシが正しいって証明できない...!」


ナッシャーから立ち上る黒いオーラが、よりその濃厚さを増していた。

同時にアレックスは、自分の過ちを知る。

何も知らないのだ、彼女が何を思い、どんな闇を抱えてきたのか。

ただ貴族社会に反発するだけであれば、執拗なほどに強さを望んだりは決してしない。他に無限の手段があるのだから。


「だから...アタシの強さのために死ね、ダークネスヴァイト!」


直後、ナッシャーから立ち上る闇が、明確な意思を持って二人に襲いかかる。


「...ヘルメス、俺たちは」

「ええ、一人の強さではありませんから」


ブレイブバーストと、ブレイブイラプトが互いに共鳴するように高まり合い、その場に太陽のような輝きが生まれる。


「今であれば...きっと! エクストラ・スマイト!」

「エクストラ...?」


直後、スマイトが光り輝く。

半円の結界が構築されるが、それの表面にはルーン文字が刻み込まれており、襲ってくる闇を弾いていた。


「あなたの力を少しだけ借りて、より上位のスキルを使いました」

「...なるほど、じゃあ俺にもできるんだな」

「はい、恐らく」


アレックスは試しに、「エクストラ・トゥルーブレード」と呟いてみる。

だが、発動した様子はない。


「...エクストラ・トゥルーセイバー!」


だがしかし、アビリティⅡであれば正常に発動し、エクスカリバーから光が立ち昇る。


「じゃあ、行ってくる」

「気をつけて」


アレックスは剣を構え、外の闇へと飛び出す。

侵蝕する闇は、しかしアレックスの体を蝕むことはない。

ヘルメスが無意識に発動した、新たな力...「ブレイブレジスト」がアレックスを護っているからだ。


「うぉおおおおおおおおお!」

「アレックスーーーーーーーーー!!」


両者の剣が動く。

そして、互いの口が、必殺の名を叫ぶ。


「ミーティアスラッシュ!」

「シトゥラスラッシュ!」


互いの剣が激しくぶつかり合う。

アレックスの輝きが闇へと食らい付き、闇もまたアレックスへと喰らいつく。


「お前はどうして、アタシより強いんだ...っ!」

「俺は弱い...けど、もしお前から見て強いと思うなら...それは、俺が強さ以外を知っているからだ!」


そして、勝敗が決まる。

不壊ではないナッシャーの剣、クラレントにヒビが入り、入り込んだ光によって粉々に砕け散った。


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