IEP-18 氷雪洞窟・4
(今日のPVが1万超えたら一週間1万PV達成だなぁ.....)
数時間後。
三人は、変わり映えのしない洞窟を歩いていた。
アレックスは、疲労の色が見え隠れするヘルメスたちを心配しつつ、休めそうな場所を探していた。
「(こうして考えると、大分鍛えられてたんだな、俺も......)」
体力オバケのアレックスと違い、ヘルメスとシャズは長時間の戦闘に慣れていない。
特に、土地勘のない場所の上に敵がひっきりなしに襲ってくるのだ。
精神が磨り減らないわけがない。
「.....どこか行き止まりで休憩しよう」
「わ、分かりました......」
そして、戦闘は三人に息継ぎの時間すら与えない。
天井の薄氷を砕いて、二体の大型の魔物が現れた。
「ヘイルオーガ.....!」
ヘイルオーガ。
ようは、氷鬼である。
ブルーゴブリンの進化系で、背中から生えた二本の氷柱と、ゴブリンの持つものより長い時間を掛けて硬く凍り付いた棍棒が特徴である。
「キキ.......ニンゲンカ」
「言葉を!?」
「聞くな!」
アレックスは飛び出し、オーガに斬りかかる。
しかしオーガは、氷の棍棒で斬撃を受け流し、アレックスにタックルした。
「がっ、ぐっ!!」
アレックスは吹っ飛ぶが、剣は離さない。
「ナラズモノドモメ......」
「コロス!!」
アレックスが起き上がる前に、ヘイルオーガは一斉にヘルメスとシャズに襲い掛かる。
「ブレイブガーディアンッ!!」
ヘルメスがブレイブガーディアンを発動し、棍棒の一撃を剣と腕で受け止めた。
しかし衝撃を流せず、地面が砕ける。
「ふっ!!」
「ギ.....!」
隙をついて、シャズが片方のオーガの脇腹を突き刺した。
苦痛に身を捩るオーガを、もう一体のオーガが支える。
「大丈夫カ?」
「...アア」
「ぐ........」
アレックスは唇を嚙む。
仲間を思いやる姿勢を見せたことで、途端に人間を相手にしているような気分になったからだ。
しかし、ヘイルオーガは一歩も退く気はない様だ。
「待ッテクレルノカ?」
「.......倒れたやつの背中を狙うのは、外道の所業だと思っただけだ」
「ソウカ.........」
ヘイルオーガは一瞬にして、憤怒の表情へと変わり、アレックスへと数歩で距離を詰める。
「ニンゲン風情ガッ、情ケヲ掛ケルナァ!!」
「アステロイドスラッシュ!」
アレックスへと振るわれた棍棒だが、アステロイドスラッシュによって真ん中から切断され、空を切る。
「何故そんなに人間を憎む!」
「我々ノ故郷ヲ穢ス、不浄ナルモノメ!!」
武器を失ったオーガは、拳でアレックスに襲い掛かる。
アレックスはオーガの足を払い、拳を剣の腹で弾き飛ばす。
「コノォオオオオオオオ!!」
「はぁッ!!」
背後から、血を流しながらオーガが襲い掛かる。
アレックスは棍棒を躱すと、その腹に剣を突き立てる。
「ゴボァッ!」
腹を剣が貫通し、オーガは苦しげな声を上げる。
「グ........」
「死ネ!」
アレックスに、もう一体のオーガが襲撃を掛ける。
アレックスは棍棒を弾き飛ばし、オーガの胸を蹴って壁に叩きつけた。
「強い.........」
ヘルメスはそんなアレックスに、畏怖と尊敬が入り混じった視線を向ける。
自分は疲れて碌に動けないというのに、アレックスはこんなにも円滑に戦闘を進めている。
今、殴られたが.....それでも止まらない。
一体何度戦いを経験すればこうなるのか、ヘルメスにはわからなかった。
「教えろ、この洞窟の最奥には何が居る?」
「ワレラノ、”神”ダ」
「それは何だ?」
「知ラヌ、真実ヲ知ッタモノハ皆氷漬ケダ」
「......そうか、ありがとう」
アレックスが呟くと、その手が剣と共にブレる。
そして、次の瞬間には、二体のオーガは首を落とされて絶命した。
「あ..........」
アレックスは情けを掛けていたのではない。
情報を集めるため生かしていただけだったのだ。
ヘルメスはアレックスの真意に気付き、震撼した。
「..........仕方ない事なのでしょうか......」
アレックスは一瞬だけでも、オーガたちを同じ知性を持った存在として認識したが、結局は殺した。
それは正しい事だったのだろうか? 他に方法はなかったのだろうか?
どちらにせよ、隅で震えていただけの自分には何も言う権利はない。
「....先を急ぐぞ、この先にオーガの集落があるはずだ」
「...はい」
ヘルメスはアレックスに続き、洞窟を進んだ。
数時間後。
三人は主の居なくなった洞穴で休んでいた。
アレックスはブルーゴブリンの集落を殲滅し、その住居を借り受けることにしたのだ。
「...................」
「どうした、寒いか?」
「.....いえ」
ヘルメスは罪悪感を抱いていた。
それはシャズも同じだった。
ゴブリンは必ず人間を襲うし、自分たちはゴブリンの集落を通り抜けなければ最奥には行けない。
体力的にも限界で、休める場所が必要だった。
けれども、これでは盗賊とやっていることは同じなのではないか?
ヘルメスはそう悩んでいた。
この惨劇の犯人は、直ぐ傍でスープを啜っている。
「........アレックス、本当に良かったのでしょうか?」
「....子供は殺さなかっただろ」
「...子供だけでは、生きてはいけません」
「じゃあ、このまま進むのか?」
疲れからか、アレックスの語調が強くなる。
それが、ヘルメスの怒りに火をつけた。
「交渉して泊めてもらう事は出来たのではないでしょうか!?」
「ああ、それも良かっただろうな。寝ている間に襲われるか、その場で襲われるかだろ、あいつらにとって俺達を無事に見逃す程もったいない選択肢はない。あいつらの”神”のもとに向かう俺達を、氷漬けになって帰ってこないだろう俺達を」
「何故そう決めつけるのですか!?」
「魔物はな、基本的に本能に忠実なんだ!」
アレックスはすっくと立ち上がり、叫んだ。
「俺の大事な友達は、配下に魔物の軍団を作ってたな。だけどな、あいつらだって、主のあいつが命令さえすれば、平気で人間を殺せるんだぞ!」
「皆が皆そうではないはずです!」
「............勘違いするなよ、ヘルメス」
アレックスはヘルメスを正面から見る。
「お前の”過去”がどうであれ、魔物を殺すのに理由は必要ないんだ。向こうから襲ってくるからな」
「........................」
ヘルメスは無言で頷く。
いつの間にか、自分が魔物が理由あって人を襲っていると、仕方ないから襲っていると考えていることに気づいた。
しかし、魔物は本能で全ての生きる者に対して敵対的なのだ。
「.......とはいえ、オーガを殺したのは浅慮だったかもしれないな。あいつらと交渉は出来たかもしれない、謝るよ」
「いえ......私も、平和ボケしていました」
ヘルメスも謝った。
「俺も、あいつみたいに、魔物と仲良くなれれば楽なんだがな.......」
アレックスの脳裏に浮かぶのは、恐るべき軍団を従えたユカリ。
彼女はグランドマスターという理由だけでない理由で、魔物たちを従えている。
それ程までの格があれば、自分も戦わずに済んだのだろうか......
アレックスは悩みつつ、就寝した。
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