Ep-02 転生?
(22/10/5)内容を一部改訂しました。
「――はっ!?」
俺は飛び跳ねるように起きた。
なんだ、夢か........
そう思いつつ、寝すぎてしまった自分を恥じる。
どうか日を跨いでいないことを祈りながら、ベッドの近くにあるVRヘッドギアに触れようとして...
その手が、空を切った。
「あれ?別の場所に置いたっけな...」
でも充電コードは枕のそばだし...
と思って起き上がろうとした瞬間、電気が付いた。
あれ?母は夜中に入ってくることとかは無いはずなんだが...
まさか、強盗!?
と思って音のした方を振り向くと、メイド服を着た女性がいた。
「「!?」」
向こうもこちらの姿に驚いたようだ。
―――なんかこのメイド、見覚えがあるな...
「え、あ、あ、旦那様~!ユカリ様がお目覚めになられました!!」
「え、ユカリって誰ですか...あっ」
そう叫ぶや否や、メイドは外に向かって叫びながら走り出した。
呼び止める暇もなかったな。
ユカリっていうのは多分俺のゲームで使ってる名前だけど...
俺、いつの間にかゲームのフレンドに監禁されてるとか? なにそれ怖い。
◇◆◇
しばらくすると、部屋に知らない男女がやって来た。
俺が怪訝そうにしていると、
「ああ、よかった...目覚めたのね、ユカリ」
「いきなり熱で倒れるから、このまま死んでしまうのかと思ったぞ」
もしや...と思い、聞いてみることにした。
「えーと、僕は誰だ...?」
「まさか、記憶喪失になったのか?お前の名前はユカリ・アキヅキ・フォールだろう」
ああ、ウェポンマスターのキャラ設定のミドルネームがアキヅキだった....
ということは、これはゲームの世界に転移したってことだな...
メイドもこの夫婦も見覚えがある。
全ての職業に存在するクエストの中でも一番とんでもない鬱ストーリーであるウェポンマスターの物語は、大きく印象に残るものだからだ。
「ああ、そうだ...僕はユカリだ...」
「ふう...心配させないでよ!」
恐らくはウェポンマスターの母親であるエカテリーナが言う。
そして、旦那様と呼ばれていた男はウェポンマスターの父親、ソウジロウだ。
2人はこの後ウェポンマスター(仮にユカリと呼ぼう)と共に遠乗りに出かけた際に魔族の襲撃に遭う。ユカリは両親を殺され、魔族が晒した両親の生首を見たことで黒い感情を押さえつけられずに暴走し、生まれ持った闇の魔術に目覚めてウェポンマスターの能力を得るのだ。
これが本当に鬱ストーリーで、辞めようかなこのゲームと思ったが、その後は意外と楽しくて止められなかったというしょうもない話がある。それにウェポンマスターのキャラが段々と幸せを手に入れていくイベントも存在するしな。
救われないわけじゃないのがこのゲームのいい所だ。
「ふふ、しょうがないじゃないか。多少の記憶の混濁は、こういう熱病にはつきものさ」
「そうね、あなた」
なっ、なんだこのラブラブ夫婦!?
と思ったが、ゲームの知識と大体相違ない。序盤しか見れない特殊なキャラなので、こうしてまじまじと見れるのはなんとも壮観である...お幸せに。
「旦那様、そろそろ」
「ああ、わかった」
そうしていると、ソウジロウの方がメイドに何かを言われて外に出ていった。
何で出ていったのか聞くと、
「ふふふ、お父さんはお仕事なのよ」
と答えてくれた。
確かウェポンマスターの実家は小さい領主の家だったかな...?
魔族に襲われるのも領民への牽制のためだったかな。
「お母さん、少し一人にしてくれない?」
「ええ、いいわよ」
少し確かめたいことが出来たので、俺はエカテリーナに見られないよう部屋の外に行ってもらうことにする。
エカテリーナはしばらく俺の心配をひとしきり述べて部屋を出ていった。
◇◆◇
暗い部屋の中、俺はある言葉をつぶやいた。
「ステータス、オープン」
本来はクイックボタンで開くため言わないワードだが、今この状況では必須だろう。
すると、俺の前に見慣れたメニューが開く。しかもこのメニューは実体化しているらしく、メニューが放つ淡い光で部屋が照らされる。
メニュー項目の横に、俺のステータスが表示されている。
ユカリ・A・フォール 職業:ウェポンマスター Lv:1
HP2000/2000
MP600/600
攻撃力:23
防御力:34
魔法力:46
魔法防御:40
etc…
[スキル]
メイクウェポン-Lv1
空転術-Lv1
[バフ]
なし
[パッシブ]
ウェポンマスター-Lv1
エアージャンプ-Lv--
マジックリュース-Lv--
ワールドツリーブレスト-Lv1
...なんというか、この簡素さが懐かしいというか新鮮というか...
だが、若干ゲームの時と違う気がする。
まず、ウェポンマスター固有スキルであるメイクウェポンは、レベル1で持っているわけではなかったはずだ。そして、パッシブスキルのワールドツリーブレスト、
直訳で世界樹の祝福...こんなスキルはゲーム内のどの職にも無かったはずだ。
「やっぱり、まずは実験でもしてみるか...」
そう言って、俺は一度就寝することにして、全てを明日に任せるのであった…
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