Ep-10 武器スキル
「ふぅ~。やっぱりお風呂はどこの世界でも気持ちいいもんだな」
俺は風呂から出て、フルーツ牛乳(命中率バフアイテム)を呑みながらそう言った。
実際、風呂は浴槽まであり超巨大で、ゆったりと出来る広さがあったのだ。
この世界で俺は、女子の身体洗いの大変さを知った。いや、家にいた時から風呂には入っていたが、どうも足りない気がして、本で調べたりしていたのだ。
香油や石鹸(植物性)などは金持ちしか使えぬ代物で、前世がどんなに恵まれていたかを知った。だから当然、この飛行船風呂には石鹸やシャンプーリンスなど...無い!
持ってきてよかったぜ。
「うーん、ごくごくごく、ぷはー」
「おい!貴様」
「は~やっぱり風呂上がりのフルーツ牛乳は最高だなあ...」
「聞いているのか!」
うん?何か今、雑音が聞こえたような
俺は周囲を見渡す。すると、こちらに向かって唾を吐き散らしながら叫ぶさっきの男の姿が!...消えてくれないかな...旅行気分が台無しだ。
俺はささっとその場を後にすることにした。
後ろで男がまだ喚いているが知ったことか。俺は不快な奴が嫌いなんだ。
イケメンになって出直してこい!
...でも、イケメンでも不快な奴はやっぱり嫌だな。
「次はどこ行こうかな~」
まあ、売店しかないんだけど。
飛行船には風呂はあるが、それ以外の娯楽施設は充実していない。
せいぜい売店がある程度である。しいて言えば賭博場があるが、
学院関係者は誰も使わないだろうし、俺は賭け事はしない。
ともなると、売店でお茶を買ったりおやつを買うぐらいしかないというものだ。
夜まで時間があるし、なにかをしたいのだが...
「甲板に出るか...」
この船は雲より高く飛んでいるため、通常外に出れば吹き飛ばされるか高山病になるかするだろう。しかしそこはファンタジーで、船の周囲に張られた結界によりそれらの現象は発生しない。ということなので甲板に出ることにした。
◇◆◇
甲板に出ると、冷たい空気と一面に広がる雲海が俺を出迎えた。
その威容はあまりに雄大で、俺はつい見とれてしまった。
「もうここで夜まで過ごすか」
そう思って俺は、インベントリからホットミルク(MP回復アイテム)を取り出した。
これをちびちび飲みつつ過ごすのも悪くないだろう。
だが、数分で飽きた。なので、武器スキルの練習でもすることにした。
武器スキルとは、ウエポンマスターの職業スキルとは別に、力ある武器に宿ったスキルで、武器を装備することによって使用できるスキルのことだ。
「メイクウェポン、クラスターボウ」
俺の手元に出現した機械的な弓、こいつの武器スキルはクラスターショット。
前方に矢を撃ち出し、その矢が分裂して拡散するというスキルだ。
俺は早速矢をつがえて空に向かって撃ち出す。
「クラスターショット!」
そう叫んだ瞬間、放った矢が弾けて数百個の矢に分裂した。
これが降り注ぐのだから、中盤最強スキルというのも頷ける。
次はブラストワンドかな。ケイオスフレア...船体に被害出ないよな?
「メイクウェポン、ブラストワンド」
俺の手元に杖が出現する。こいつの武器スキルはケイオスフレア...
巨大な紫の炎が地面に落ちて広範囲を焼き尽くすスキルだ。
もちろん魔力供給を切れば段々減衰するので、ここから落としても大した影響はない...はず。
「ケイオスフレア!」
ゲーム時代狩りで見慣れた紫の炎が船の真上に出現する。........デカくね?
俺はそれを操って近くの雲にぶつける。
雲が消し飛んで、炎はそのまま雲霞に消えていく。
しかし、少し魔力を込めすぎた。炎の勢いが収まらない。
これ下に落ちて被害とかないよな...ない...とは言い切れないな。
確かめてこよう。
「メイクウェポン、雷龍刀」
龍の意匠が施された刀を呼び出し、俺は下に飛び降りた。
落下しながら、ゲーム時代派手だが使えないスキルと言われていたスキルを発動する。
「雷龍化!」
俺の身体が紫電に包まれ、一つの大きな集合体を形成する。
このスキルはダメージ判定のある雷の龍に変身するスキルであるが、MP消費がえげつないのと、多段ヒットしないので他の全体ダメージとあまり大差がない事が原因で不人気スキルとなっている。飛べるから便利ではあるけど、今のMP量じゃ5分も飛べない。
雲を突き抜け、ケイオスフレアが落ちた先を確かめる。
「あー、やべ」
丁度集落の真上だった。
破壊をもたらすほどのサイズではないが、落ちれば大火事は免れないだろう。
夜なのが災いしてちょっとした騒ぎになっているようだ。
「しょうがない、雷龍解除!」
俺は雷龍化を解除して地上に落下する...わけにはいかないので、エアーダッシュを使いつつ地上に降りる。
「メイクウェポン、耐火盾!」
ネタ武器筆頭耐火盾!
防御力は10くらいしか上がらないが炎耐性が9999上昇するネタ武器だ!
意外と重宝されるが、使いどころを間違えると死ぬ。
「ほいっとな!」
そして耐火盾を持ってケイオスフレアに衝突する勢いで突進する!
そしてケイオスフレアは真ん中からジュッと破裂し、後には何も残らない。
「メイクウェポン、雷龍刀、雷龍化!」
そして来た時のように雷龍化を発動して天に昇る。
雲を突き抜け、飛行船を探す...あった。
飛行船の上を覆うように飛び、減速しながら雷龍化を解除して甲板に降り立つ。
「ふう、軽率に魔法ぶっ放したりスキル撃つのは避けたほうがいいな...」
俺は反省しつつ、船内に戻ることにした。
それを見ている誰かがいることに気が付かずに...
そして、その人物の瞳が輝いたことにも...
面白いと感じたら、レビューや感想をお願いします。




