Ep-01 ウェポンマスター
※完結のリンクから来た皆様、昨日私のミスにより完結設定になっていたため、本小説はまだ完結しておりません。
それでも良い方のみお楽しみください。
少し内容を見やすくして、ストーリーに絡ませる部分を追加しました
(11/08)少し改変しました。ここは特に直す点はありませんでした。
(22/10/5)内容を大幅に削減・増加・訂正しました。不評であれば戻します。
「また来たぞ、デカブツ…!」
俺は、8つ首の竜と対峙していた。
奴の名はエインネック、伝説に残る怪物だ。
凄まじいプレッシャーが辺りを覆い尽くし、俺の肌を焼き、心臓を震わせる。
だが、そんな強烈な緊張の中ですら...“時間が来るまで動けない”。
「...........」
俺は”その時”が来るのを待っていた。
そして、戦いの時が訪れる。
勇壮な曲がどこからか流れ出し、エインネックの8つ頭が咆哮を上げる。
「——————行くぞ!」
俺はエインネックに向けて走り出した。
だが、奴も馬鹿ではない。こちらに向けて、三つの頭が口を開きブレスを放ってくる。
白い炎のようなものが俺に向かって真っ直ぐ飛来する。
「クリエイトウェポン! イモータルシールド!」
俺はそれを、”呼び出した”盾で防ぐ。
それだけではない。
「スキルセットチェンジ!シールドセット!」
そう叫ぶと、目の端に映っていたスキルセットの一部が、盾の専用スキルセットに変化する。
「エクストラエンチャントシールド」
俺はその中でも一番効果の高い防御スキルを自身に付与する。
そして、
「ブースト・クリエイトウェポン、混沌槍!」
盾のクリエイトウェポンを解除し、代わりに貫通力に長けた攻撃性の高い槍を呼び出す。
大きく飛び上がり、まずは首の一つを狙う。
「フレイムジャベリン!」
フレイムジャベリンは槍系職の基本スキルで、槍でさえあればどんな職業でも使えるスキルだ。ぶっちゃけ弱い。だが....
ギャオオオオオオオ!
俺の一撃は簡単に首を吹き飛ばした。
何故ならば、先程の詠唱の「ブースト」、これが大きく関係している。
俺はさっきのイモータルシールドの能力値を、混沌槍に代入したのだ。
イモータルシールドの防御値はブーストの発動時に攻撃力に変換される。
不沈盾と混沌槍、同じ特殊級の武器だが、合わせれば伝説級ほどの武器にはなる。
その状態でスキルを放てば、強力な威力を持たせることが可能となるのだ。
強力だが、ある程度のレベルを超えないと使うことのできない高レベルプレイヤーの必殺技だ。
「っと、頭は一つじゃなかったな」
見ると、他の頭もこちらにターゲットを変えていた。
首が一つ潰されたことで、周囲を警戒していた頭も俺を一斉にフォーカスするようだ。
「畳みかけるぞ!クリエイトウェポン! ピアシングシューター!」
俺の手元に壊れた盾を象った意匠が施された弓が出現する。
これの効果は貫通、つまりは込める魔力次第で城壁すらも貫通できる弓というわけだ。
「スキルセットチェンジ!セットボウ!」
スキル欄が変化し、弓のものに変化する。
「エクストラ・ピアシングアロー」
詠唱して弓を引くと、そこから黒い矢が飛び出して射線状の首を纏めて貫いた。
「オーバーフォース・ダブルショット」
更に、二つの弓が放たれて残りの首に刺さり、絶命させる。
しかし、弓はボロボロと崩れ落ちてしまった。
これはオーバーフォース系統の副作用だな。
これもレベル700を超えたものにしか使えない強化法の一つだ。
「よし、これで後は.......一発勝負だ!」
エインネックは八つ首を落とされると司令塔の首が復活し、それと戦っている間に
他の首が復活して行く.....といったボスだ。
全ての首が回復してしまえば一気に不利になるが、一瞬で首を落とせば問題ない。
幸い....というか当たり前なのだが、シールドスキルの防御バフの効果時間はまだ続いている。
ならば多少ダメージを食らっても死ぬほどではないはずだ。
「クリエイトウェポン、マスターアックスⅢ!」
なんとこのスキル、強化された武器すら一度でも所持して使えば呼び出せるのだ。
ただし、イベント配布や一部のドロップ武器などの強力な武器はコピー不可を持っているので、一般的に入手可能な武器にしか使えないが。
それ以外は俺が自分で手に入れたものをコピーしている。
「スキルセットチェンジ!セットアックス!」
俺はスキルを切り替えて、即座に反転する。
「空転・影月」
このスキルは忍刀をぶん投げてそれと自分の位置を入れ替えるスキルである。
そしてそのスキルによって、俺は最後の首の真後ろに出現する。
「グオ!?」
「いけえええええええ! オーバーフォース・ジャッジメント!」
そして、真っ黒な闇を体現した様な刃が最後の首に向かって振るわれ…
その首を落とした。
ダメージ表示は無いが、他に首が無い以上討伐判定が行われただろう。
地面へと降り立った俺の耳に、静かな女性の声が響く。
〈経験値を15200獲得しました〉
〈業績:カオスエインネックソロクリアを達成〉
「やった.....やったぞおおおおおおお!」
俺は一人、大声を上げた。それはまさに、俺の最終と言っても過言ではない目標だったからだ。
しばらく俺は、その場で叫び続けた。
◇◆◇
さて、俺の名前は相原恭介。一介のゲーマーだ。
俺のやっているゲームは、かつてと違い今はすっかり一般的と化したDVRMMORPGであるオークストーリーオンライン....通称OSO。宇宙産業で財を成したELCの傘下である企業が開発した、日本のみならず世界でも人気を誇るゲームだ。そして、このゲームには当然ながら様々な職が存在する。その中でも俺は、群を抜いて不人気ランキング1位を獲得した不人気職のウェポンマスターを選んでいる。
様々な武器を扱い、それに応じたスキルを使用できるウェポンマスターは一見便利に見えるが、効率やゲームプレイの快適さを求め、簡単で爽快なスキルセットを好むプレイヤー達はウェポンマスターを選ばない。
何故なら、ウェポンマスターは基本スキルがほとんど移動系のみで、攻撃スキルも一次、二次スキルを除いて全く無い。というわけなので、最初はどうしても通常攻撃のみでレベル上げをしなくてはならず、ただでさえレベル上げの効率の悪いOSOではあまり好かれている職業では無い。
「ま、俺がエインネックに勝ったんだ、これからは別職業のクリア者も増えて行くだろ....」
この職業は確かに強いが、大量の情報を処理できる知覚能力と、先のことを考えられる思考の柔軟さが求められる。エインネックに勝ったからといって、俺の後を追えるウェポンマスターもそう多くはないはずだ。
俺がいるから消えてないだけ、そういう職業だ。
自慢する気はないが、俺の操作下であれば強い。だがとても高い技術が必要でもあるのだ。
「とりあえず、今日のところは切り上げて。飯でも食いに行くか....」
エインネックにも勝ったし今日のところは何もすることがない。
夜に仲間とチャットで盛り上がろうと考え、俺はログアウトした。
美しい世界は消え、殺風景な自分の部屋に戻ってくる。
スマホを見ると、もう19時を回っていた。
「母さん、今日は外で飯食ってくるよ....あ、いないのか」
恐らくいるであろう母親に呼びかけたが、どうやらまた外出しているようだ。
メールで外食すると送り、俺は素早く準備を整えた。
玄関に進み、靴紐を結ぼうとして.......
「あ」
靴紐が切れた。
仕方ないのでセロテープでぐるぐる巻きに固定して、応急処置する。
外に出たら扉を閉め、鍵をかける。
そして夕食に何を食べようかと思案しながら一歩を踏み出し———————
目の前に迫るトラックを見た。
それが、呆気ない最後だった。
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