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Fw: 王子の取り巻きの父親に転生しました  作者: 製本業者
旗折り損のごんたくれ設け

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8.1 お屋形様な転生者

 あるじの居ない執務室の椅子を眺めながら考える。


 面白い御仁おかただ。


 それがここ最近、ヴォイチェフの偽らざる思いだ。


 心の迷人(ストレイヤー)の可能性があるとして派遣された後。

もちろん、体の迷人(フォリンナー)でないことは、その経歴からも明白だ。


 確かに調査資料からも、幼少期からすでに迷人の顕著な発露ともいえるこの世界に対する無理解から来る突飛な発想は随所に見られた。

だが、それは、両親が彼が幼いときに夭折した影響も考えられる。

一応王家の直参テナント・イン・チーフとして公式に認められた世継ぎであったことから、成人するまでの間は王家から代官が派遣され管理される形となった。

珍しくはあるが、両親の戦場での功績と長く続く家柄ということと、前例が全くないわけでも無いことから認められた訳だが。


 結果として、親の愛情とともに必要な初期学習を十分に受けることが出来ず学園に入学した。

 まあ、ある意味当然だ。

代官など、その地で新たな下級勲爵位を得られるならともかく一時的なおリリーフりとして赴任するだけであれば次代の当主から譜代でも無いのに重用されることなどまずあり得ない。

それだけに、本来家庭で教わるべき基礎的な教育なぞおざなりに済ませるに決まっている。


 最初は単なる名誉欲に支配された頭でっかちだったかと若干失望もした。

士官学校を卒業後に目指した幕僚への道が閉ざされた直後に赴任したということも影響したのかもしれない。

無能では無いまでも、単に貴族としての常識を欠いたが故の突飛な発想。

そう王都にも報告した。


 だが、その思いも派遣され数年後にいきなり裏切られる。

それも、当然ながら良い意味で。


 最初、牛を使った定期便ステージコーチと聞いたときは、迷人に覚醒したかと、興奮した。

だが内容を聞くとともに、失望とも興奮とも言いがたい感情を得た。


 迷人では無い。

それは、牛を使ったことでほぼ確かだ。

牛車自体は、その速度が遅いことから廃れたとはいえ、かって存在していたものだ。

そして、定期便自体も、荷馬車ワゴン駅馬車メールコーチを用い有力諸侯との連絡便として現存している。

もの自体はすでにあるものだ。

速度が遅いのなら、一度に運べる量を増やせば良い。

速度が遅い割に多くを運べるわけで無い部分には、牛の方が多くを御しやすいのだから牛車の数を増やせば良い。

轍の通る溝を作ってやれば、もっと御しやすくなるだろう。


 それはまさに逆転の発想とも組み合わせの妙とでもいうべきものであって、迷人と呼ぶべき異質な発想では無い。

だが、それだけでは迷人かどうか、判断出来ない。


 迷人で無いと判断出来る根拠は、錬金術で否定された熱だけで蒸気にすることや電気といった仮想物質エーテル抜きではあり得ない状態エネルギーを用いた装置を使って居ないことだ。

いくら水を温めたところで、直接火に水を注ぐか、水魔法で状態を変化させるのでもない限り、大量の蒸気にはならない。

水は酒の様に熱で気化する液体とは異なるのだ。

料理等で微妙に水気が減ることから、錬金術師によると多少は蒸気になるのだというが、微々たるもので、魔法による状態維持の性質が働くからだともいわれているが、こんなことは世の常識だ。


 だが、迷人の世界では異なる理で世界が動いているのだという。

水を暖め続ければやがて大量の水蒸気となり、磁石を回すだけで電気が得られるという、そんな夢のようなお手軽世界。

それでは、魔法も発達しないだろう。


 それ故、そんな永久機関を使う出なく、今あるものの組み合わせで新しいものを作り上げた彼は、確かに常識をあまり持ち合わせていない可能性が高いものの分別じたいは持っていると言って良い。


 農業にしてもそうだ。


 得てして迷人たちは連作障害という理論上でしか起きないことを心配してしまい、実際に土魔法の最適化がもたらす同一産物を生産することによる豊作を見過ごし、結果として収穫量を落としてしまいがちだ。

一方彼は、農法自体は全く変えない。

ただ、帝都への安価な定期便を設定し、売り先を確保しただけ。

それだけとはいえ、いくら売って金にしたくても量の限界があった農民たちにしてみれば渡りに船だ。

今まで自分たちだけでは食べきれず捨てていた野菜を、枯れる前に市場に出せるのであれば、今まで以上に土地の活用に工夫を凝らし野菜を育てようとする。

つまり余らせていた農地の活用といったところだ。


 もっともこれは、比較的ではあるが農奴サーフに対して耕作権の裁量を許しているという点も見逃せないだろう。

逆に言うと自領の利点を有意義に活用したともいえる。


 それ以上に、特産というには弱かったお茶を、完全に特産品として育て上げた。


 この土地のお茶は、言っては悪いが質が良くない。

普通に淹れると渋みと苦みの主張が強すぎ、薄くしないと飲みにくいというのが正直なところだ。

その一方、乾燥させるとましになるのだが、良質のお茶が安く手に入るのに、わざわざ乾燥させた茶葉を使う物好きは少なく、最近では廃れてきていた。


 それに対して彼は、茶葉をブレンドするという全く異なるアプローチを持ってきた。

普通お茶では嫌われる、蜂蜜やジャムと言った混ぜ物も積極的に使うという合わせ技も用いて。

最初こそ馬鹿にされていたが、今となっては下級貴族や有産市民階層ブルジョワジーがよく行う茶話において婦人方の気軽な飲み物として定着し、まねをする領地もちらほら出てきている。


 そして軍事においても。


 ヴォイチェフ自身は軍事面に関しては専門とはいえないものの、一通りの知識はある。


 彼は、自分を認めさせたかったのであろうが、結果として幕僚としての任官が認められず帰国した。

その時の評価は、決して無能では無いが、理論重視でやや現実味が薄いにもかかわらず上層部に自らが立てた作戦をごり押しする癖があるというものだ。


 もっとも当家に赴任する前にヴォイチェフガ聞いた噂では、軟弱な見た目の癖にそれなり以上の能力を持つことから、実践や経験が理論に加わると自分たちの齟齬を見つけられそうで鬱陶しいだけに先に潰そうと、理屈屋と必要以上にさげすむことで遠ざけたというものだ。


 だがしかし。


 頭でっかちな部分は今やなりを潜め、まつりごとにおいてそれなりの成果も出している。


 それ故に楽しみだ。

増援も、送った。

このたびの戦で、いかなる結果を示してくれるのだろうか。


 


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