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Fw: 王子の取り巻きの父親に転生しました  作者: 製本業者
茶会事変(後編)

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30. 脂肪遊戯を楽しみに転生しました。

 そう、お茶会である。

 色色…と言うほどでも無いが、子供がどうやらタイトル詐欺な大冒険をしたので忘れそうになったが、そもそも王都に来たのは、お茶会を開くためである。

 なんだかんだで我が領のお茶は『単品だといまいち』と言うブランドラベルが貴族階級のみならず中産階級ブルジョアジーにまでデカデカと貼られている一方で、『合組ブレンドは一級』と言う嬉しいんだからどうなんだかよくわからない評価を得ている。

 更に、主都には比較的近いと言うメリットこそあるモノの、主食たる小麦の品質も高くない。不味いと言う程では無いが、ぶっちゃけそもそも我が国の小麦自体が共和国等と比べると一段落ちるのが正直な所。なのでお菓子用としても主食のパン用としても、最近では隣国からの小麦輸入が増えてきた。……仲悪いくせに金儲けは敏いらしく、国産より安く買える上に品質も良く、日保ちもすると、シェアはほとんど奪われた状態。

 代わりに周辺国でもお茶の需要が一気に増加してきた事から、儲けの薄い小麦から茶葉に切り替える領地も増えてきているらしい。日本の茶畑を思い起こして貰えば良いが、プランテーションまでは行かずとも、やはりある程度以上の作付けが必要みたいだ。

 実際に、平地なら綿花に、丘陵なら茶畑に、と言う感じで、換金作物へと転作している目先の利く領主も結構多い。

 我が領の茶がいまいちなのは、生産量の所為とか色色疑ったのだが、騎士団の連中が開拓地で試してくれたらしい。で、量を増やしたり逆に間引いたり、千鳥配置にしたりと色々試してくれたのだが、全くの箸棒だった。なので、結局のところ土地の影響が一番大きいらしいと一同判断している。魔法の影響という線も考えられるが、土地ごとに魔法の影響も異なることを考えれば、土地の影響とひとまとめにしてもよいだろう。

 で、茶畑に向かないし小麦も今一なら、野菜をどんどん売り込んでいけとなったが故の、牛列車増強とその護衛任務らしい。単なる脳筋かと思ったら、考える筋肉だった。

 それにしても、騎士団の荒くれ者どもが実に優秀なのは嬉しいのだが、他領の畑が茶や綿花と言った換金作物主体に変わった所為で、余剰となったかっての農業従事者《あぶれた連中》が必要以上に流れ込んで来ているのが、これまた痛し痒し。開墾の労働力にはなるんだけど、古くからの住人と軋轢がゼロとは行かないので、治安の悪化とまでは言わないが、やはり微妙な空気が漂っているのも事実。

 ひょっとすると、あの意味不明なパフォーマンスも騎士団員《あらくれ者たち》なりの融和策なのかもしれない。だからといって、参加するつもりは全くないが。

 その代わり、農作物の方は色々売り込みを手伝ってあげようじゃあ、あーりませんか。せっかく色々見つけてくれたことだし。

 トータルで我が領全体の利益になるわけだし、見世物にされるよりは絶対ましだし。

 関係ないけどこの国では、箸にも棒にもを意味する言葉として、救いが無い《hopeless》だの手に負えない《incorrigible》と言った直接表現以外に『スプーンは投げるしか無い』という言葉があって、思わず『来た見た笑ろた』と言いながら笑った事がある。『匙は投げられた』じゃねーよ。


「はぁ、この根菜《下手物》を細切りと薄切りにして、高温の油に浸けるんですか」

「ああそうだ。

 薄切りの方は、少し水気を取ってからの方が良いかな

 茹でた芋を潰してから煉って、それを細長くするのも良いけど、さすがにいきなりは難しいだろうし。

 因みに浸けるので無く油で揚げる(フリゲル)ね」

 この世界、実は魔法のせいで蒸し料理が存在しない。魔素マナとも根元オドとも呼ばれる存在ファンタジーの影響で、水をゆっくり熱した場合は100℃を超えても加熱水となり蒸汽にいきなり相転移しない。ゆっくりしていってねでは無いが、加熱のスピードは案外重要なようで、熱い鉄に小量の水を打っ掛けると蒸汽になる。実は0℃以下も同様で、氷は作るのがなにげに難しいが、逆に気化しにくいので溶けにくいと言う性質があったり。さらには、冬季に氷点下になっても過冷却水状態で保持され、人が落ちていきなり凍ると言う事故もまれにあるらしい。うーん、実にファンタジー。

 代わりに、圧力鍋を使わずとも100℃以上の熱湯で調理が出来るので煮物料理が独特の発達をしている。油料理の発達が地球《元の世界》の中世世界よりも更に遅れているのも、過熱水が容易に出来る所為かも知れない。プディングも蒸すのでは無く高温のお湯に容器を晒して作るみたいだ。

 そんな事もあってか、新しく雇った料理長シェフが案外頑固な事もあり、油で揚げる事に抵抗を示している。

「しかし、この蕪もどきですが、油で煮ても、ほんとに旨いんですか。確かに茹でると、それなりにおいしかったですし、マヨネーズとか言う新しい調味料を加えた一品なら、それだけで喜ばれると思いますが」

揚物フリゲレだよ。

 ポテサラも確かにおいしいんだけど、お茶会向きじゃ無いからね。いや、良く焼いた薄切りトーストの上に載せれば、結構いけるか」

「でしょう、でしょう。こんな油で煮るなんて邪道キワモノより余っ程喜ばれますって」

「まあまあ、そう言わずに。

 実際に試して見る前は、君だってマヨネーズに懐疑的だったろう。

 それと、オイル煮物ブッリーレで無く、揚物だよ」

 やったこと無い調理法なのでかなり不服なようだ。

 だが、フィッシュアンドチップスの為にも、ここは……

 いや、そうで無く。

 お茶会に呼ばれた大人も子供も絶対喜ぶお菓子を披露するために、是非ともポテチを作って貰う必要があるのだ。

「ですよね、お茶会だけでなく、お酒も楽しめますもんね」

 そう、適度に冷えた黒麦酒スタウトで流し込むやや衣の厚い揚げ物の、実に素晴らしいこと。

 お茶会の後で、フィッシュアンドチップスを冷やしたエールで給仕サーブして、アピールする。

 実に良いじゃ無いか。

ああ、あくまでもついでで。そう、ついでだよ。

「もっと暑い時期なら冷やした蜂蜜酒ミードと言うのも良いけど、この気節なら蒸留酒《命の水》も喜ばれるかな。

 それ以上に、お茶会で冷やしたお茶に果実酒や薬草を混ぜて振る舞うのも面白そうだね。

 って、いつの間に?」

 気がつくと、妻が私の斜め後ろに立って、ニコニコ笑っている。いつものように満面の笑みなのは良いのだが、

「……御新造様レディなら、この新しい蕪を油で茹でるって話辺りで、厨房ここにいらっしゃいましたよ」

「……入ってきたら、一言呼んでくれても良かったろうに。

 それと、何度も言うけど揚物だよ」

「貴方のドレスを見繕い終わって来たら、あまりに楽しそうだったんですもの」

「楽しそうって……」

「だって油で煮るって言われる度に、揚物揚物って嬉しそうに。

 まあ、確かに揚げ物料理はおいしいですから、力説するのもわかりますけど」

「それなんですが、バロネス、実際の所どうなんです。

 ご婦《バロn》……男爵バロンはこうおっしゃるんですけど、そもそも油を高温で煮て大丈夫なモノですか」

 と、妻の方に訪ねかける料理長。此奴、いまご婦人って言いそうになったな。

「大丈夫ですよ。

 火を使うから注意は当然必要ですけど、高温の湯を長時間煮続けるのと大差無いかしら。

 確かに、高温なので飛び散ったりすると危ないですが、それは湯を温め続けても同じでしょう」

「そうはおっしゃいますが、煮るための道具だって油用なんてありませんぜ」

「大丈夫ですよ。油だとどろっとしているので難しいと思うでしょうけど、高温だと意外とさらりとしていて、同じ鍋が使えますから。

 意外と、揚物料理は想像よりずっと簡単ですよ」

「そんな、まるで見てきたような事を言っても……」

「ええ、実際自分で試しましてよ。

 で、子供達はさすがにまだ早いので、二人でおいしく頂きました」

「まあ、御新造様まで其処までおっしゃるなら」

「それに、夫《この人》も何度か自分で作ったことあるから。

 実は、此処に来る前にも、料理用の前掛エプロン姿で、二人で作ったの」

「では、今度男爵と男爵夫人が一緒に調理してくれるなら」

「早速着替えてきますか」

「是非是非」

「ちょっと待て、何でエプロンに着替えるの前提なんだ。

 別に調理は料理長がするんだから、着替える必要なんて無いだろう」

「「……」」

「あのぉ、目を逸らさないでいただけませんか?」

 特に、嫁。

 まあシェフの方も、露骨に目を逸らしたけどとりあえず揚げ料理を作って貰えるみたいだから、まあヨシとするか。

「とりあえず油を熱するにして、それなりの量の油が必要ですが……そんなにありましたっけ」

 確かにその通りで、これまで揚げ物調理が無かったことも有り、炒め物で脂が使われる位だった。このため、油を大量に使用する事はまれで、液体の油は風味付けの調味料的な使い方が主流となっており、量も少ない上に値段も高い。脂の方も豚脂ラードが主に用いられており、後はせいぜい牛脂ヘットが使われている位だろう。

「そう思うのも無理は無い。だが、配下の准男爵の領地に群棲していた樹木の種から油が取れるとわかったのだ」

 そう、騎士団が開拓した領地に、油が取れる樹木があった。と言うか、実は不毛とは言わないけれど比較的土地が瘦せている山野に自生していることで知られている樹木で、山葵の木によく似ている。これまでは若葉や果実を山菜的な感じで食用として利用してきたらしい。

 以前から種から油が取れる事も一部では知られていたのだが、調理方法の関係も有り香りの良い油が好まれる事もあり、無臭に近いこの油はほとんど利用されてこなかった。なので揚げ物料理が普及すれば、新たな特産品として売り出すことも出来ると言う訳だ。

 ……多分、すぐにキャッチアップされそうだけど。実際、お茶だの綿花だのへと転作してる領地多いから、油が儲かるとなると其方に転作する領主も増えそうだ。オリーブこそ無いらしいだけど似たような橄欖は存在してるし、南方だとパーム核油に似た油が取れる樹木もあるらしい。そもそも綿花を大量に生産しているなら、綿実油を生産出来る訳だから。

 とは言え、ブルーオーシャンの間に先行者利益をがっぽり頂くつもりは満々だ。

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