ii) 取り巻き少年はボーイズミーツガールに出会う(Henchman meets Girls.) Disk B
今回、投稿すべきが、もう少し話を進めるべきか、悩みました……
走りながら、少年は握った手が汗ばんでいるのに気づいた。
それは、自分の汗だろうか。それとも、少女の汗だろうか。
反対側の、短剣の鞘を握る手が余り汗ばんでいないのは、鞘に巻かれた布のおかげだろうか。
いずれにせよ、汗で滑らないよう、彼女の手を強く握り直しすと、更に足に力を込めた。
子供が案外すばしっこいとは言え、やはり大人と子供。脚の長さが違う。
そう。本来ならば。
だが彼は、子供用の中古品とは言え道中着を着込んでいた。
そして、そのの効果は大きい。普通の服しか着ていない大人と同等以上の力を出せるのだから。
それは脚力においても同様だ。元々大人よりも脚の回転が速いところに、大人と同等以上の脚力で道を踏みしめるのだから、子供とは思えない速度になっている。
このまま走り続ければ、なんとか逃げ切れるはず
……そう、一人だけならば。
「……ごめん」
「……え?」
そのことに気づいた彼は、一言彼女にそう言うと、少女をいきなり抱きかかえた。そして、そのまま勢いを増して走り出す。
王宮の城下町は、王城と王都で大別され、更に王都は旧市街とも呼ばれる旧王都と市外とも呼ばれる新王都に分かれる。そして今少年が駆けている旧市街は、外郭として設定された城壁に従って計画的に大通が設定された新王都と趣が全く異なる。
そして王城も、元々半島の付け根にあった王宮が半島側に移ったことでできた王城地区と、今では高級住宅地となったかって王宮があった旧王城とに分かれている。
王の住まう宮殿と官僚たちの巣窟である王宮で構成される王城が機能的に配置されているのに対して、旧王城は、副宮と呼ばれ、軍事関連の式典で今でも使用されるかっての王宮を中心として計画性なく拡張した王城。そしてその周辺に勝手に集まってきてたのが旧市街だ。
要するに、道が入り組んでいる。
そんな中、一人の少年が、子供とは思えない速度で疾走していた。
肩に少女を担いだ状態で。
いきなり担がれ、すごい勢いで走り出したものだから『ちょっと』とか『きゃー』という悲鳴じみた言葉が浴びせかけられるのは致し方ないところだろう。
そういった言葉の合間に時折聞こえる『絵物語中《こういう時》は抱上搬送《お姫様抱っこ》って相場が決まってるのに……』と言うつぶやきを、彼は無視した。
少年の父親ならファイヤーマンズキャリーと呼ぶであろう姿は、確かに見場は悪い。だが、いくら道中着で強化されているとは言え体格が似通った少女を抱きかかえたり背負った状態で走るのは厳しいと考えた、とっさの機転だった。
だから少年は、路地裏や脇道を走り抜ける。
時には、子供なら通れるが大人はすり抜けるようにして進まないと通れないような細い道もわざと使う。
「ちょっと、痛い痛い」という声は気のせいだ。気のせい。
そして、大人は通れないような小道を通り抜け先には……
「……」
見た瞬間、少年は完全にフリーズした。
「どうしたの、いきなり止まって」
そして、いきなり停止した少年の肩から降りた少女も、見た瞬間にフリーズした。
そして、その冗談みたいな現実に、二人は笑いそうになってしまった。
少年が少女と駆けだした先に、まさか別の人さらいが、別の少年と少女を拉致しようとしていただなんて。絵物語《なろう小説》ですら見かけ無い状態だ。
少女を追っていた男達が悪漢や無頼漢と言ったそれなりの風体なのに対し、目前の彼らは明らかにそれよりも格下の破落戸とか与太者といった感じなのも、泣けてくる。
そう、やっと逃げ延びたと思った先。
まさにそこでは、薄い桃色の髪をした女の子と彼女をかばう少年を、四・五人の明らかに人さらいらしい荒くれ者の集団が囲っていたのだ。
今回、ひろ☆らいだーシリーズはお休みです。
もしも楽しみにされていた方がいらっしゃったら、申し訳ありません。




