22. 領地に凱旋しに転生しました
一応、凱旋扱いなのだろうか。
館のある街の前で馬車を停めると家人が数人出迎えてくれ……後ろの自由騎士改めて鉄騎騎士団をみてぎょっとしている。
いきなり甲冑が増えていたらそれは驚きもするだろう。そんな中動じずにいるヴォイチェフはたいしたものだと思う。
「そちらの方々は」
「前に便りで知らせたと思うが、今回我が領配下の騎士団になった、鉄騎騎士団の面々だ」
「さようでございますか」
「帰宅前に、甲冑の整備を兼ねて倉庫に連れて行きたい」
「そうでございますな、行進とまではいきませんが、大通りを抜けて領民に見物を許すのもよろしいかと。
甲冑が並んで通れば、それだけで喜びましょう。
しかし流石に騎馬型の甲冑は倉庫の建て増しか別の建物の改装が必要ですな」
「……私も、だよな。その場合」
「無論、男爵家直属の騎士団ともなれば、そうなりますな」
私がげんなりした表情を浮かべているだろうことは、騎士団の荒くれ者がニヤニヤしているのを見ればわかる。
陣中鎧に着替え甲冑をゆっくりと歩ませていると、今更気づいた。ひょっとしなくても今回の騎士団認可って、一見好意的にみえてその実、幕僚達の悪意が結構入った対応だった?
と言うのも、今後我が領でこの戦争野郎達を養っていく必要があると言うことだ。しかも甲冑二体だけでも男爵としては過分なのに、一気に倍以上。最近お茶とかで儲かってるとはいえ、なかなか厳しい額が飛んでいくことは確定している。
……開拓させ、自分の食い扶持稼がせるか?
そんなに広くは無い領地といえ、何カ所か離れた場所にs村落もあり、まだ開墾出来るだけの余地はあるはずだ。ファンタジー世界のお約束ともいえる魔獣狩は、王都も近いだけあって小型の野獣種ばかりなので、甲冑が複数必要かと言われると正直、必要は無い。
追々考えていくしかないなとつらつらと考えているうちに、甲冑を納めている倉庫に到着した。
中に入ると、白銀の甲冑が中央に鎮座している。数日の余裕があったのだから当然とはいえ、父親の甲冑は見事に整備されていた。
「あれ?」
思わず声が出た私に、訝しげな視線をよこすヴォイチェフ。慌てて咳払いでごまかすも、開いている操縦席の位置はどう見ても私むけの設定で、ヴォイチェフだと狭くて乗り込めない状態だ。かといって、いくら彼でも目分量で設定を戻す事など出来ない。
よこで不思議そうに、ホンザは首をかしげる。
「しかし、甲冑二体とは豪気だな。その割に僚機が無いのが面白いが」
「二体とも、先代の甲冑でございますよ」
「ほう、やはり命婦でござったか」
「いえ、先代の奥方でございます。今の男爵夫人ではございません」
ヴォイチェフは騎士団の方に顔をむけ、「無論、ご本人でもございませんよ」ぴしゃりと言った。
……それって、何気に私のほうにダメージ大きいんだけど?
「と言うことは、一台はあまってるのか?」
「こちらの先代様がお使いだった白銀の甲冑であれば、今回の様に先代奥方様の甲冑が遠征等で出払っている時には、領内での対応に使用いたします。
白銀の甲冑はかなりの距離を移動出来ますし、私や御新造様でもうごかせますので」
「こんなところで戦争なんぞ起きないだろう」
「いえ、存外魔物が徘徊しております。もちろん悪鬼のような大型の魔物など滅多とおりませんが、小型種は他の地域と大差ありませんし、最近農作物が豊作なこともありまれに土龍が現れるもので。
戦争でなくその程度であれば、わたくしや御新造の
それに、中型種や小型種であれば、数がそこそこありますので僚兵や徒歩兵をあしらう練習とも成りましょう。
流石に、大型種で甲冑相手の訓練とはまいりませんが」
外に置かれた騎士団の甲冑を示すと、軽く首をふる。
「整備を任せても大丈夫みたいだな」
私がそう言うと、ヴォイチェフは同意の意を示す。しかし、いまだにこの首の振り方はなれないものだ。
「ところで、父の甲冑が整備されているようだが」
「念の為に、いつでも出られる様しておきました。もっとも位置まで私に合わせると戻すのも面倒なのでそのままですが」
「それよりも、整備の腕だ。家令殿が必要最低限よりは上なのは確かだと思うが、一気に倍以上だ。自分たちの甲冑については最低限の事をこなすにしても、この数だ。どう考えても一人では無理だぞ」
ヴォイチェフは肩をすくめる。
「その辺も含めて、一度館に戻り、今後の対策を考えませんと」
「その前に、着替えだ。馬車も持ってきてくれているんだろ」
「牛車という訳にも参りませんので、馬車はもって参りましたが、お召し物はいかがいたします。まさか、道中着と言うわけにも参りませんし。
となると、上に外套を羽織るくらいしかございませんが」
「……道中着じゃだめかな?」
「凱旋の一環でもありますので、陣中鎧はこの場合当然となりますが」
「甲冑で行進したんだし、要らないんじゃない?」
「あらたな騎士団の顔見せ御披露目も兼ねておりますので」
ニヤつくんじゃ無い、この騎士団ども。




