21. どうやら王子の取り巻きの父親に転生しました
軍功会は、軽い功績の者から表彰や叙勲の内示を行うらしい。
軍功一番を最後にしてだんだんと盛り上げていく、トップ一〇形式というやつだ。
事前の情報では、我々---私と自由騎士達は、軍功一番という訳では無いものの、敵別働隊と最初に交戦した一番槍とも言うべきと、自由騎士の一人が敵の騎士を甲冑ごと捕虜として生け捕りにした事もあり、かなり後ろの方に成りそうとの事。
一人でなく複数をしかも甲冑が稼働可能な状態で捕獲しているとの事で、かなり評価は高そうだ。
私だけだったらもっと早い段階でパパッと終わっていた可能性高そうなので、自由騎士のおかげといったところか。
いや、それ以前に軍功認められていなかった可能性もあるのか。
そうこうしているうちに、壇上に国王らしき人物が現れ、椅子に座る。
そして、軍の首脳陣が脇に立つ。
いわゆるお約束なシーンだが、逆に絶対王政まで至っていない封建社会なのも見て取れる。
絶対君主の場合なら、祝賀会ならともかく軍功会の様にある程度公式で序列が重視される場とも成れば、脇に控えるので無く後ろに控えるか斜め前に臣下として並ぶはずだから。
王が着席して少しだけ間を置いてから、室内に喇叭の音が鳴り響いた。
これから開始の合図のようだ。
『サー・ホンザ・マサリクと鉄騎騎士団』
思ったよりもずっと遅いタイミングで、自由騎士達の番が来た。
と言うか、いつの間に鉄騎騎士団なんていつの間に名乗ってたんだろう。
いや、これはひょっとして……
『今回の働きに対し、貴公等バラージュ男爵配下の騎士を正式に騎士団と認可する』
やはりそう来たか。
これで自由騎士という自称騎士では無く、准男爵以上に正式な騎士として認定する事をもって、報奨とすると言うことか。
同じ騎士ではあるが、甲冑さえ動かせれば誰でもなれる自由騎士とは違い、騎士団員の認可を受けた騎士の場合は貴族になれる可能性がある準貴族として扱われる。
それも、一旦認可を受けた場合、その国が滅んでも自由騎士でなく騎士団員として準貴族としての扱いを受けることが可能となる。
『併せて従騎士の者に対しても甲冑の使用を認める。
なお、これを持って騎士の叙任を略式ながら兼ねるものとする』
なるほど、捕虜の甲冑を下賜しする形で全員騎士と取り立てた訳か。
今後准男爵として領地持ちになれる可能性が出てきたわけだ。
騎士団を配下に持つ男爵なんてうちぐらいなもんだろうから、これを持って私への褒美とする気だろうか。
流石にそれはいくら何でも寂しい気がする。
『バラージュ男爵』
「はっ」
と思っていると、私が呼ばれた。
書類を読み上げる尚書に対して、作法に従って軽く頭を下げる。
『今回の、幕僚陣の命による伏兵探索に対し、配下の騎士団および貴公の功に対し、子息の爵位継承を認め儀礼称号の使用を許可する』
間抜けな表情を浮かべるのを必死にこらえただけで、十分に評価できると思う。
端的に言うと、イミフ過ぎて訳わからん。
いや、言っていることの一つ一つは理解できる単語で構成されている。
単語の意味は理解できるのだが、何を言っているのか、頭が拒絶してくる状況。
まず、伏兵云々は即座に理解できた。
幕僚達が私が落とし物捜索を願い出たことを拡大解釈でもしたのだろう。
らしいといえばらしいし、擲弾は敵伏兵の隠喩だとでもいえば、あのとき聞いていた幕僚以外の人員も普通に肯定するだろう。
いや、密偵対策の暗号とした可能性のほうが高そうに思えてきた。
問題は次からだ。
息子の爵位継承って、どういう事だ。
そもそも正式に継嗣として申請している嫡子で法定推定相続人だから、基本的に国からいちいち認めて貰う必要は無い。
この辺は、連合王国に近い法治主義国なのだし丈夫……なはず。
なのにわざわざ認めるとは?
そして、儀礼称号の使用を許可する。
そもそも我がバラージュ家は、家名と同名のバラージュ領を所有する男爵で、複数の称号を持っている上級貴族という訳では無い。
ちなみにパラージュは領地の中心市の名前で、慣例として名字の無い身分から嫁いできた場合と娘の場合に使用する名字だと言うことは最近知った事実で、どうも元々の自分も知らなかったらしい。
なので、パラージュの事とは違うだろうし、単一領主なので英国風の子息が従属称号の名乗りを許すという訳では無さそうだ。
『今回の沙汰は、長らく途絶えていた慣習を、貴公の貢献に対し復活させるという名誉をあたえるものである』
私だけで無く、周囲も理解できていなかったであろう中、尚書が言葉を続けた。
『貴公の子息は、以降子息では無く公達の名乗りを許す。
これは学園入学時においても同様である。
ただしこの特権は継嗣のみとする』
記憶によると、伯爵以上の子息が公達としてオナラブルの称号を名乗るのととことなり、子爵や男爵の場合では継嗣であっても相続までは准男爵や騎士同様のサーの称号で呼ばれる事になる。
なるほど、名誉特権と言うやつか。
日本の華族とことなり爵位は領土と紐付いている西欧型なので、簡単に子爵にする訳にはいかないから、言ってみれば『上級男爵』と言った設定を過去から引っ張り出してきたのだろう。
それは言い。
まあどうでも言いといったら言い過ぎとはいえ、結局どうでも良い。
それよりも、私の過去の知識に引っかかるものがあった。
それは、ゲームに出てきた知識。
ゲームの中で、王子の学友の中で唯一「○○君」でなく「○○様」と王子以外から呼ばれていた取り巻きが。
公爵家とか侯爵家の公達は基本的に取り巻きでなく独自に一派を作る為、本来取り巻きが呼ばれる事の無いはずの様で呼ばれるキャラ。
ルートにより、でっぷり肥えた場合とめがね君の場合もあるが、基本的に見栄えは悪くない。
そして、そのゲームは……よく出来た戦術系ファンタジーシミュレーションゲーム。
では無くて、そのベースとなった、通称なろう仕様とも呼ばれる「逆断罪」と呼ばれるBADエンドと「ざまぁ」と呼ばれるトゥルーエンドが実装されていた、『ガムがおまけの駄菓子』が略称代わりに呼ばれていたと言う伝説を持つ乙女ゲームの方。
ルート次第では、確実に連座制有効な世界なだけに家が没落待ったなしな上に、自分でコントロール出来ない恐るべき仕様となっていました、とさ。
どっとはらい。
なんでフラグ折ったと思ったら、別のフラグが立ってるんだよ〜
ようやくタイトル回収出来ました。
これでタイトル詐欺とは言われまい。
しかし、感想でシミュレーションゲームの主人公って鋭い意見が出たときはドキッとしました。




