20. 軍功会へ参加しに転生しました
大広間のある副宮は、豪華絢爛と言う派手派手しさは全くなく、その存在じたいが威圧感を伴って空間を飾り立てていた。
なにかふしぎな、それでいてなじむような感覚。
元の私は何度か軍事関係者《その他大勢》として参加したことがあるらしいが、実際に私が目にするのは初めてであり、なおかつ呼ばれる側としては元の私も初めてだったりする。
その時になってようやく気がついた。
天井がアーチ型やトラス構造では無く東洋建築の様な片持梁を基本とした軸組構法で形成されていたのだ。
要するに、大聖堂の持つ荘厳さでなく大仏殿の持つ深遠さとでも言うべき違いがそこにあった。
当然、敢えての選択なのは間違いない。
理由は……おそらく、外観デザイン上の問題だろう。
壁で力を受けない構造の軸組構造であれば、屋根の形状はかなり融通が効く。
東洋風の曲面を描く屋根もお手の物と言うことだ。
式典や祝賀会の行われる王宮がまさに『日本人の考える西洋のお城』なら、軍事的な式典の行われる事が多い副宮は『西洋人が作った日本のお城』と想定すれば当たらずといえども遠からずと言った感じとなる。
いや名古屋城と奈良の大仏殿とを魔合体させたイメージか?
それに気づいてしまうと、実際のところかなり奇妙な建物だsと気づく。
奇妙で違和感バリバリなはずなのに変な調和があるのは、ギリシャ建築の様な柱のおかげだろうか。
一旦中に入ると、思った以上にすぐに扉があった。
その場で立っていると、程なく、ゆっくりと扉が開く。
私と自由騎士達が入ると、扉はゆっくりと閉められた。
中に入ると、外観の割に柱の数こそ多いが、西洋の王宮として思い浮かべるバロック式やゴシック式とは全く異なる空間が広がっていた。
思った以上に明るい空間が広がっており、確かにダンス等を踊るには柱が邪魔かもしれないが、軍議等であれば寧ろ適当に区分け出来るので適しているかもしれないなどと考えながら歩いて行く。
後ろからついてくる自由騎士達もどうやら初めて来るらしく、いつもの不貞不貞しい姿からは珍しくキョロキョロと見回している。
なんとも微笑まし物を感じながら、私は割り当てられた場所へと向かった。
割り当ては、思ったよりも真ん中に近い位置だった。
中央奥に王や上級貴族が座る椅子の置かれた台座が置かれており、そこから秦の始皇帝から清の皇帝まで続く謁見のイメージが近いだろうか。
もっとも叩頭礼でなく立礼で行うので立って並ぶところが異なるところで、その点では兵馬俑に近いだろうか。
相撲や歌舞伎の枡席みたいに四角い敷居で囲い大まかな位置が示され、それぞれ主家の家紋が床に置かれている。
家紋も、一応男爵以上の正規の貴族だと甲冑等で使う西洋風の派手な紋章の他に、マンテル《外套》や今回の様な正装に装飾として施される意外に印章としても利用される和風な家紋の二種類があるのだが、床の印は派手派手しい方だ。
こちらは床の絨毯等でも使われる事があるので、間違って踏んづけても問題とはならないが、和風な方は間違えて靴で踏もう物なら、松の廊下も真っ青なß刃傷沙汰が起きても不思議無いらしい。
派手な紋章の方は、甲冑や僚機の陣羽織前提なのでどちらかを所有していれば自動的に申請できるのに対し、家紋の方は貴族として認可された際に申請する為だ、と例の頭痛とともに知識が降りてきた。
一応准男爵以下の階級で家紋自体は所持している様だが、あくまで非公式のため公式の場での着用は許されないらしい。
「……予想してた通りと言えばその通りだけど、やっぱり一緒なのね」
「それは当然でしょう、なんと言っても我らは今回の勝利の立役者なのですから」
予想通りというべきだろうか、どうやら自由騎士達の叙勲もまとめてする気なのだろう、彼らのスペースも含んだサイズで囲いが設けられていた。
その中で、全員先ほどまでのおのぼりさん状態から一転ふんぞり返っている。
一応、配下という形になっているのでそれもある意味当然なのだが、伯爵以上ならともかく男爵で甲冑持ちの勲爵士以上が複数というのはやはり珍しいみたいだ。
そう考えると、それなりの軍団を出した中で一番下っ端の貴族が我がバラージュ男爵家だったと考えると、この中央から少しだけ離れた場所は、しっくりくる位置ではある。
「そもそも、絡んでたのを助けようとしただけなのに、どうしてこうなったんだか……」
「ん?
何か問題でも?」
「大きな問題が無いというのが、一番腹立たしいところだよ」
自由騎士達が大きな笑い声を立てるのを、先に来ている連中がいやそうな顔で睨んでくる。
まだ時間があるのを良いことに、自由騎士達は全く歯牙にもかけていない。
一応、普段よりは抑えているとはいえ、元が大きい声だけに周囲に丸聞こえだ。
「そういえば、あの時の女、お手つきの妹だったみたいだな。
姉の子をお守りしていたらしいんだが、姉が辞めさせられた代わりに奉公にあがったらしい」
「なんだ、帰りに寄った時、俺らから少し離れたのはそれか」
「おおよ。
言ってみれば紹介してくれたような物だから、礼だけでもと思って」
「とか言いつつこなかけたな」
「おい、そろそろ静かにしておく方が良さそうだぞ」
話がなんだか怪しい方向に向かいだしているので、候爵や辺境伯といった大物が到着したのを指し示し、やんわりとたしなめる。
「確かに。
ああ、ただその侍女どのから、命婦様によろしくとのことで」
女騎士じゃねぇって怒鳴り返したいのを必死にこらえる。
畜生、周囲の連中までクスクス嗤ってやがる。




