19.フラグをおったので軍功を確認しに転生しました
「なにが必然だよ、ほんとに。
そもそも、俺って運がわるいんじゃなかったっけ」
二転三転する状況に、思わず独り言ちた。
目立つための狼煙や花火代わりと思い弩弓に榴弾を取り付けてみたのだが……通常以上の魔法閃光を放つ事になるわ、どうも落としていた榴弾も上空で爆発したせいで広範囲に拡散した魔力を受け、励起し誘爆を起こしたようで、昭和特撮も真っ青な爆発シーンができあがるわ、とにかく派手派手しいことかぎりなし。
おそらくだが、最初に上空に弾き上げられた榴弾が、二発目の榴弾が爆発する際に、たまたま近くにあったのだろう。
射撃の場合太矢を発射すると同時に信管に当たる部分が解除されて数秒後に爆発するのだが、弾き飛ばされていた為信管は作動しておらずそのまま落下するはずだったところで発生した魔力の放出を間近で受けて榴弾が励起、誘爆したのだろう。
二個分の爆発ともなれば、当然ながらかなりの量の魔力が放出されているのは間違いない。
その結果が、落下物《榴弾》の大量誘爆という事なのだろう。
多分、一個だけだと励起は起きず、ここまで派手派手しい爆発は起こっていなかったと思われる。
というか、派手すぎ。
上空で榴弾が閃光放つだけで十分なのに。
一方で相手の動きは思った以上に素早かった。
爆発と同時に味方と合流するためにだろう、一気に間合いをとると、素早く駆け去る。
追いかけるべきだったか否かは、いまだ悩ましいところだ。
そして、敵が去るのと同時に白銀の甲冑が姿を消している事に気がついた。
とりあえずいえることは、あの榴弾爆発による光の壁は敵味方双方にインパクトが大きかったようだ。
軍の予想とは逆に−−つまり私の想定通りに−−戦場へ到着次第戦闘に移るよう準備を進めていた敵軍だったが、まさに進軍せんと合図を待っていたところに寝耳に水な大爆発と閃光。
敵味方ともにうろたえてしまい、硬直して次の行動に移せなかったみたいだ。
大隊規模の魔法部隊による一斉攻撃でも、ここまでの閃光はなかなか出来ないらしい。
そりゃまあ、花火大会で最後の締めでナイアガラとスターマインが同時にかかったようなド派手さだったからなぁ。
一応一気に戦場に切り替えた味方側のにたいして、敵は混乱が激しく的確な対応がとれずに、緒戦の突撃のタイミングがつかめずにいた。
それに対し、戦いは明日だと思っていた味方の諸侯軍は、最初あまりに派手な閃光でなにごとか思考停止に落入こそしたものの、味方の作戦に無いのだから当然敵襲と即座に判断しそれまでの待機状態から一気に臨戦態勢に移行。
ほんのわずかの差が、奇襲効果をそいで緒戦において有利な状況を生かせずに乱戦へと移行した。
要するに、閃光が敵か味方か訳わからずうろたえている敵方に対して、計画に無い閃光なのだから敵に決まっていると判断した諸侯軍がそれなりに臨機応変な対応をとり臨戦態勢を整えたという事だ。
……普通に榴弾一個の閃光であれば、味方が良い感じで逆襲が決められたんじゃね?と思わなくも無いが、誰も気づかないであろう事なのでこちらからは一切おくびにも出さないでいる。
こうなると元々戦力的には味方の増援の方が多かったこともあり、戦況は若干こちらの有利な状況で膠着。
いや、派手な閃光というエフェクトのせいで最初は混乱こそしたもののなんだかんだで膠着状態には持ち込んでいる事から、自軍の幕僚どもとは異なり、失敗した場合も織り込んで作戦を立案していた可能性がたかい。
我らが幕僚陣のごとく最初から成功前提で作戦たてている場合だと、もっと激しく崩れていてもおかしくないのだから。
結局夕方になって敵兵が一旦後方に退くと同時に双方の使者による話し合いの結果、三日後に撤退する事で決着した。
奇襲もしくは強襲が成功し明らかに勝敗が決した状態ならともかく、戦力的には拮抗している現状では結局何らかのきっかけでお互いに矛を収める必要がある。
この爆発は相当派手だったので、これを停戦の理由にしたようである。
魔素の滞留だのなんだの、自分たちの能力では及ばないところの事象を理由にしている訳で、落としどころとしてはそんなものかもしれない。
停戦交渉は幕僚の仕事ではないので変にくちばし挟まず、かえってスムーズに会合が進んだ、まで言うと流石に穿ち過ぎか。
実際のところこれ以上だらだら続ける意思は上層部には無く、それなりの言い訳さえあれば退く準備が出来ていたと言うところだろう。
これがゲームだと強襲による敗戦という形で現れたのだが、今回は双方が決戦を前に引くというなんとも情けない形で終わることになった。
この辺で、優位な形で停戦したとはいえ幕僚達の上からの評価がどうなっているのか、知りたいところだったりする。
明確な勝敗がついていない為に、お互い自分たちが勝利したと国内敵意には宣伝するだろうが、まあそれもよくある話ともいえる。
敵方は、『劣る兵力を閃光という奇策により圧倒し,
停戦に持ち込んだ』
我が方は、『敵の奇襲を察知迎撃する事で敗北を防ぎ、実力で圧倒し停戦に持ち込んだ』
と言った宣伝が思い浮かぶ。
幕僚達、何気にその辺のプレゼンテーションは上手いから、もっと良い言回を思いつくかも。
さて、このどちらが勝ったかよくわからない決着にもかかわらず、祝賀会は一応開かれるらしい。
だが私は、敵の奇襲部隊と遭遇して交戦した事による消耗を理由に辞退しておいた。
一応、祝賀会の前に行われる軍功確認の会合には全員出席せざるを得ないが、祝賀会は宴会の一種なので、それなりの理由さえ示せば参加は不要だ。
逆に軍功会には、必ず出ろとのお達しが届いている。
国王陛下立ち会いの下行われた軍功に対する報奨だが、実際のところ形だけとはいえ勝利したと喧伝している手前、それなりのものが必要となる。
土地やお金という形では無理なので叙爵や叙勲がそこそこ出されている。
男爵以上の爵位に関しては土地がセットなのでおいそれと出来ないが、勲功爵以下の場合だと既に土地を持っているなら准男爵にしてしまう方法がある。
英国の准男爵が売爵目的で設立されたのに対し、この国の准男爵が財政面での負担を避けつつ名誉だけ与える目的で設立された事から、こういった場合に都合が良いようだ。
当日、自由騎士共々正装に身を包み、王宮にほど近い副宮の大広間に向かって歩いていた。
それよりも……
「なんでいるの?」
そう、例の自由騎士達が、軍功確認会になぜか私にくっついてきたのだ。
「おや、普段はそのような口調でしたか。
凜々しい陣中鎧姿とはことなって、なかなか様になっておりますな」
「えーい、しつこい」
相変わらずのノリで話しかけてくる自由騎士達だが、表情は何気に明るい。
理由は、どうも彼らの側に展開した敵を、上手いこと討ち取った為らしい。
討ち取ったと言っても、殺した訳で無く甲冑から飛び出して陣中鎧姿となったところを取り押さえたようだ。
この世界では、騎士以上の階級であれば、甲冑込みで身代金を要求出来る。このため、雑兵の命など気にせず蹂躙する一方で、甲冑や僚兵はなるべく捕虜にして身代金をせしめようという発想。中身の本人は生きている方がその分値をつり上げる事も出来るので、五体満足だが死なない程度に怪我等々で動けない状態が理想。ついでに、甲冑や僚兵のみならずよさげな陣中鎧も剥ぎ取った上で、上乗せして請求したりもするらしい。中世日本の武士が敵の首を追い求める一方金にならない雑兵を無視するのとは逆な、中世西洋の騎士に近い発想といえる。
この辺は、実際にやってる自由騎士《荒くれ者》達がそう言っているのだからまずは間違い無い。大笑いで教えてくれたが、やられる側の可能性が高い私には、全く笑え無かったけれど。
「まあ実際に捕虜もとりましたし、あの敵との閃光も我らが助力したからだと吹聴したら、あっさり貴公の配下として同時に参加するよう告げられた仕出し。
ほれ、幕僚殿の、ほれヤン・ネポムク士とか名乗った」
ニヤニヤとしたその顔から、連絡係の苦虫を噛み潰したような顔が、苦も無く思い浮かんできた。




