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Fw: 王子の取り巻きの父親に転生しました  作者: 製本業者
旗折り損のごんたくれ設け

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14. 初めて戦場に向かうために転生しました

「にしても、まさか騎装馬型とは。


 昨日はいなかったように思うが」

 儀礼的に陣に案内すると恩着せがましく言ってきた幕僚をやんわりと拒絶し、自称配下の自由騎士達と建物を出た。

思ったより時間がたっており、儀礼的挨拶も終わったことだしと自由騎士達が甲冑アーマーをおいている場所へいったん向かうことになった訳だが……

 二騎の甲冑と三体の僚兵アテンダントによって、何気に圧倒されている。


 一体は、父の甲冑に似た姿をしているが、もう一体のサイズに圧倒される。

人馬一体形と言うか、ケンタウロス型というか、要するに下半身部分が馬のようになっている騎槍突撃ランスチャージ特化とも思える仕様だったからだ。


「なかなかのものだろう。

ただ普通の甲冑三騎分はあるから、どうしても街の傍には持ってこれない。

昨日も、街から少し離れた風車に停めさせてもらい、僚兵アテンダントに街まで運んで貰った。


 だがこの手の野戦場で、一番槍を狙わせたら我らにかなう者はそうそうおるまい。

明日の一番槍も、もらったようなものだ。


 それに乱戦においても、後脚を使えば死角も少なく出来るから、追撃戦での混乱時にも力を発揮出来る」

 てっきりリーダーのホンザだと思っていたら、別の大男ラヨッシュが乗り手みたいだ。

騎槍の先端に結ばれた識別帯リボンが誇らしげに揺れているのを見ながら、自慢げに話す。

だが、確かに切り込み隊としてはこれほど頼りになる連中もいないだろう。


 そのうち蛇腹剣とか出てくるのかななどと思っていると、口に出ていたのか、前に戦った事があると言い出す。

鞭のようにしなる上に当たると切れるのでやりにくい事この上なかったが、運良く扱いに習熟しているとは言いがたい相手だったおかげもあり結局相手の自滅で勝利したそうだ。

魔法で冶金と制御技術が上がったためとも言うが、何でもありだな、おい。

ちなみにロマン兵器の雄とも言うべき杭打機パイルドライバーは当然ながら装備済みです。


「ところで、さっきは何であんなことを?」

「うむ? 昨日の続きを、今度は床榻ベッドでしっぽりとしたい……

 無論冗談だから、そんな顔で睨むな。

せっかくの美人が台無しだぞ」

 冗談交じりだったが、やや引きつった表情に見えたのは気のせいに違いない。


「冗談はさておき、気づいているとは思うが、我らは領地を持たぬ自由騎士だ。

当然、報償の高い方につくわけだが、大前提は勝てる見込みがあるかだが……正直、その部分は賭けだった。


 まあ、ロードが居なかったら、そのまま相手側にはせ参じてた可能性も否定しない。

あの説明聞いたら、そりゃ、そんな考えもするだろう。


 連中の言う明後日に敵主力が展開し午前に決戦という流れからして怪しくもなる」

 幕僚が想定している開戦の流れは、敵は明日の午前中に敵の本体が集結し随時補給を行い、明後日に本格的に開戦としている。

そして、味方側諸侯の動きもほぼそれに近しく、今日晩から明日の昼にかけて徐々に集結している感じだ。

彼らは、やや早いが早すぎるというわけでも無いタイミングを狙って参戦と称し状況確認に現れた訳だ。


 しかし彼らは、その幕僚が想定している流れ自体に疑念を抱いた。

流石に明日の朝は無理として、夕方に攻めてきたらどうするつもりなのか。

太陽の方向からして、夕方に攻めて来ることは無いと幕僚は断言しているが、徒歩兵ポーンならともかく、甲冑や僚兵なら対策が施されている場合の方が多くらいだ。


 無策も良いところ。

阿呆か、ともいいたくなる気持ちもわかる。


 普通に考えれ作戦も何も無い状態で勝てる方が不思議なのだが……幸か不幸か、偶々サイコロの目に愛された人間が、よりにもよって複数居たことが事態をややこしくしている。

これまでもなんだかんだで、運だけで何度も勝利してきている。

さらに王都等で行われる打ち合わせや演習においても、実際運だけで諸侯の幕僚相手に双六将棋で無双を何度もしたりする。

サイコロを用いない方の簡易版では、ほぼサンドバックなのとは対照的に。


 その中でもサイコロに異常なまでに愛された男に至っては、戦いの中一番華々しい瞬間に敵と差し違える事で全軍を勝利に導くと言う、運命の女神に愛されすぎて女神がヤンデレ化したとしか思えない最期をとげている。


 それだけでも頭が痛いところなのだが、ここでいきすぎた反エリート主義が絡んできてさらにややこしくしている。

知識と教育をベースとしたエリートなぞ不要とし、運の良い人間ばかり集め出すという間抜けな事をそれなりに長い間続けている。


 ゲーム設定でいくと、見た目のよい人間は比較的運だけは高いが性能は低く、チビ・ハゲ・デブは運は普通だが性能は極めて高いと言う、元が乙女ゲームとは思えない嫌がらせじみた仕様となっていたが、現実世界でも反映されている用だ。


 その結果、頭でっかちなエリートの方がまだましと言いたくなる『見た目と運の良さ重視』という頭を抱えたくなる謎集団のできあがりというのが、実に笑えない。


 そして一番しゃれならないのは、運だけで勝ってきたと言うことが敵方にばれ、きっちり対策を練られ出すのがゲーム緒戦《死亡》の激突(フラグ)

それは今回の戦闘からな可能性が高いという事。


「それであれば、もっと大きな諸侯に……

なるほど、抜け駆けか」

 男達は、にやりと笑う。


「誰も黒い森を抜けてくるとは思っていないし、そもそも普通ならそんな無謀な攻撃を行う前にどっちかが矛を収めてる。

だが、今回は違う。

無謀な賭けが無謀で無くなるだけの条件がそろっている。


 それにたいして、おそらく数は互角かやや向こうが多程度。

ならば、まさかの逆襲を予想しているとは思えないだけに、油断している可能性の高い。


 だからこそ我らは、レ……いや卿の意見に惹かれた」

 確かに、私も合わせれば甲冑三騎。

ゲーム知識が正しいと仮定すると、敵は甲冑二騎に僚兵が三。

……の部隊を二つ運用していたはずだ。

上手くいけば各個撃破。

運悪く合流した場合でも、向こうの方が多いとはいえ、陽動で目立ってしまえば奇襲の効果は無くなる。

それはともかく、さっきレディーって呼びかけて止めたな、てめえら。


「それに、来なかったとしても、ゴブリンを指揮出来るなら槍持ちなど辞めてしまえと言うだろう」

 言い間違いをごまかすかの鶏口となるも牛後となるなかれに相当するこの世界の言葉を口にする。


「と言ったところだ。


 それに、行きは無理だろうが、帰りなら牛車を拝借出来るだけでも実にありがたい。


 で、策はあるんだろうな」

「無論。

三つばかりあるが、まずは実際の陣を見てから決めようかと思っている」

「陣を?」

「当然、最短距離を通ってな」

 陣で落ち合おうと付け加えた私の言葉を聞いて、なるほどとうなずく事から、やはりそれなり以上に有能なのだと納得する。



 騎士達といったん別れると、母親の使っていた甲冑を乗せた牛車に向かう。

騎士達に作戦は陣で落ち合ったときに教えると言った手前、まずは事前に確認するべき事がいくつかある。


 例えば、今幌を開いて確認している榴弾もその一つだ。


 榴弾と言っても、火薬で鉄片等をまき散らし敵を殺傷する兵器では無く、魔力と呼ばれるよくわからん力を暴走させて周囲にダメージを与える武器らしい。

四大元素のバランスを崩すとか、魔力自体を直接身体にぶつけるともいろいろ言われているが、効果としては若干異なるが、なかなか有効な武器だ。

……中性子?

 見た目としては最初強い光を放ち、まるで光の柱の様にも見えるため、知識の無い人だとこの光でダメージを与えると勘違いしている場合もあるが、実は輝き自体は閃光榴弾スタングレネードと同等の効果しか無い。

そのためガチモンの騎士には、閃光見てから回避余裕でしたとかほざく猛者すら居るらしい。


 甲冑や僚兵の場合では近代的な軍で言うところの手榴弾に近く、上手く扱えば偽装爆弾ブービートラップにも使える。

特に強い魔力を感じると誘爆するところは、トラップとして使い勝手が良い。

例えば榴弾の爆発による魔力だと、魔力が発散はするが減衰はあまりしないと言う性質もあり、理屈はよくわからないが、遅延タイムラグはあるが一〇〇メートルくらいなら普通に誘爆してくれる。

上手く配置すれば、対人地雷クレイモアを並べた防御陣以上の効果を発揮する事も期待出来る。

逆に言うと大きな魔力を関知すると反応するため、魔法兵の傍で運用するのはガソリンスタンで家庭用花火をするような物になる。

ますます中性子による核融合じみてきたな……

 弩弓クロスボウ弩矢ボルト等の他の補充型装備と比べ嵩をとるのが難点だが、それでも威力を考えると使い勝手は良いといえる。

その辺も、手榴弾と比較できるところか。

弩弓といえば、第一次世界大戦《WW1》の塹壕戦では弩弓からグレネードを投擲したと言う話がある。

だが、甲冑用の弩弓ではそれは出来ない。

弩弓と呼んでいるが、実際は魔力を用いた小銃に近いからだ。


 逆に弩矢は、今回もそうしているが6本づつ束ねてあるものが、ドカンと置かれていたりする。

先端に榴弾と同じ原理の鏃が出来そうなものだが、サイズの関係だろうか存在していない。

今度ヴォイチェフ《万能執事》に尋ねてみようかな。


 一通り確認すると、ややくたびれた二輪馬車カブリオレに乗り込み徒歩兵ポーンを乗せた牛牛車とともに森の縁に向かう。

無論、甲冑は一番デカい牛車に乗せた状態だ。

大型の牛が複数で牽引する姿は、何気に迫力があり、力強い。

時折見かける、実際に前線で戦っていた騎士や下級貴族とおぼしき連中からは、蔑みとも羨望ともつかない視線を感じる。

幕僚の連中は単に長時間の操縦は疲れるから乗せている程度にしか感じていないだろうが、実際には実に有効な手段である。

甲冑は元の世界で言う戦車や戦闘機みたいなものだ。

当然戦闘だけに専念させる方が、性能を引き出すのに有利となる。

長距離侵攻作戦の場合だと、籠城戦でも無いのに戦力比で迎撃側の2倍以上の戦力が必要とも言われるゆえんだ。


 武人の蛮用に耐えると言う大前提はある一方で、整備しないと消耗も激しい。

とはいえ、魔法な世界。

部品の摩耗とか破損と言ったものは、魔力でちょちょいのちょい……とまではいかないが、ある程度補修が効く。

何が最大の問題かというと、甲冑の体内を駆け巡る特殊な液体が、動くだけで汚れていくためだ。

エンジンオイルのようなものと考えれば、当たらずといえども遠からずといったところか。

半日から一日ほど休ませれば、それだけである程度回復してくれると言う根本的に異なる点もあるが。

今回の様に国境付近の係争地ともなると、双方ともにある程度がっちりとした補給施設ベースを設けている位だ。

そのため、敵も何らかの対策を行うはず。

対策が、補給物資の事前準備で無く甲冑に補給物資を運ばせる場合ならば、甲冑が昼前には到着していないと、明日の戦いには間に合わない。


 果たして、どちらだろう。


 そもそも幕僚が想定している通り、明日の朝に到着して一日兵と甲冑を休め、明後日の午前中に緒戦を開く可能性も否定はしない。

否定はしないが薄いと思っている。


 それはゲーム知識と言うこともあるが、それ以上に単純な理由。

奇襲が可能なのにしないのは間抜けだ。

そして、今奇襲が可能となる条件は整っている。

後は、最後のピースを確認するだけだ。


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