お別れ
俺はもう一度赤髪のほうに向きなおり、両手を合わせて言った。
「あの、お酒少し分けてもらってもいいですか。安いのでいいので。どうせあの人は味なんてわからないですし」
「ああいいぞ。すまんが酒を少し持ってきてくれないか」
「あ、はい分かりました」
バタン、とまたドアの音がして、この小さな真っ暗な部屋から眼鏡が出て行った。その振動で真ん中にあるランプが揺れる。
「さて、と。お前も出発の準備をしないとな。急げ」
「まあでも酒がくるまでまだ時間がありますし、ゆっくりでもいいんじゃないんですか?」
「いや、あいつは……」
「持ってきましたー」
「早いなあ、おい」
「それじゃ行きますか」
「そうだな」
「さようならー」
「またな」
「また来てねー」
悪魔二人と騎士団の三人という意外過ぎるメンバーに、城のものを驚かせながらも森の入口へとたどり着いた俺らは、互いに別れを告げ、それぞれのほうへと歩き出した。もちろん俺は右手に紫色の瓶をこさえて。とふと、一つ言ってなかったことを思い出し、白い三人組へと振り返る。
「今度会ったときは何か王への復讐でも考えようか」
「……そうだな」
赤髪の団長はひらりとマントを翻しながら、ふっと笑い、手を掲げた。