二人目の騎士
彼女のほうを盗み見れば、何か考え込んでいるのがわかる。その間、沈黙を紛らわそうとしてなのか、ゆらゆらと天井からぶら下がったランプが自分たちの影を揺らしていた。ふと、顔を上げると、こちらを見てしみじみと呟いた。
「お前はもしかして……かわいそうなやつなのか?」
「そうですね、はい。いわゆるブラックな上司に苦しむ人種です」
「……出してやろう」
「あざっす」
ちょうど彼女がカギをもってこっちに近づいてきたとき、なんの前触れもなく端の方にあるドアがバンと開いた。
「ごはんもってきましたー」
そこには、小柄な眼鏡をかけた少年がお盆に何種類かのパンを乗せて立っていた。胸には葉っぱの紋章描かれてあり、白の装備や服装からこの軍の戦闘員、つまり騎士の一人ということがわかる。
「あれ、その人出しちゃうんですか?」
「ああ、この人は悪くなかった。此奴は……かわいそうなやつなんだよ」
「すいません、なんか誤解されそうなのでその言い方はやめてください」
「ほらお食べ、かわいそうな魔物よ」
「俺悪魔ですから。なんか面白がってません?」
真顔で言うもんだからなおたちが悪い。彼女はクスクスと笑いながらさびた金属でできた柵に手をかけ、鍵を開けてくれた。
「まあ食べていけ」
「液体状以外の食べるのは久しぶりすぎてなんか喉に通らないのでいいです」
「まだ食べていないだろう?」
「食べなくても分かります」
「早く食べろ」
「嫌です」
「あ、あの、喧嘩は……」
「黙ってろ眼鏡」
「口出ししないでもらおうか」
「……」
あの野郎……無理やり食べさせやがった。弱ってる悪魔相手に魔法使うなんて卑怯だぞ。ただでさえ昨日の残業が響いてるのに……とりあえず自動的に口の中にぽいぽいとパンを放り込まれるのは困るので自分で食べることにする。そんな感じで食事をしていると、彼女がこっちを向き直り、手を前に出してきた。