■夢の続き■
それはいつも優しい声で語りかける。
――御主は死なせはせん……どんなことがあっても……。
夢の始まりはいつも同じだった。
これより前はなく、これよりあとは五分ほど。
夢の中の僕はまだ小学生で、辺り一面は焼け野原だった。
すごく熱くて、すごく臭くて、すごく痛くて。一方で身体の芯が冷えていくのを感じている。
いつも僕は全身に大火傷を負い、腹には拳二つは入りそうな風穴を開けていた。人が生存するにはそれはそれは困難な状態で、浅い呼吸を繰り返しながらただ焦げた草の上に背を合わせ、霞んでいく視界から夜空を眺めていた。
――御主のための契約じゃ、あとでつべこべ言うでないぞ‥…。
それはいつも優しい声で語りかける。
彼女は僕の胸に歯を立てた。
身体に食い込む鋭い痛みと興奮や快感にも似た高揚感が包む。
命が廻るのだとしたら、これらが引き金であり、これらが発端なのだろう。
まるで吸血鬼の食事の場面とも取れるそれは、しかし生気を吸われることはなく、着実に、確実に僕に生の実感を与える。
――これで契約は交わされた。
そう言うと、彼女の背から巨大な白い羽根が伸びる。
――さて、残った雑魚どもを蹴散らしてこよう。御主はここで大人しくしておれよ。
彼女はその羽根を大きく羽ばたかせると、瞬く間に空へと飛び立ち、一陣の風とともに姿を消した。
焼け野原には仰向けの僕だけが残された。僕は夜闇を眺めていた。
夢の終わりもいつも同じだった。