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ゾウ騎士、すべてを踏みつぶす! ~竜騎士試験に落ちた青年は美少女ガネーシャとのんびり暮らす~  作者: 森田季節


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3 サバイバル実習

 俺の前に立っていたバーンテッドが笑いながら振り返ってきた。

「竜騎士のタスキはほかの赤いタスキと違って、黒らしいですよ。これを奪ったら、将来安泰ですよ。クランザ、頑張ってみませんか?」


 とことん、俺をコケにしやがるな……。

 ていうか、こいつ、なんで俺を目の敵にしてくるんだ?

 今更遠慮する時期でもないし、率直に聞いてみた。


「なあ、俺、お前に恨みを買うようなことでもしたか?」

 バーンテッドは汚いものを見るように顔を歪めた。


「血筋ですよ」

「血筋?」

 よくわからないから、俺は聞き返す。


「クランザ、君は成績でずっとこちらの前にいた。まあ、高名な軍事貴族の家系だとか言うなら悔しくもなかったでしょうが、調べてみれば滅んだ村の貧農の生き残りという話じゃないですか。しかも明らかな親類すらいない天涯孤独の身」

「そのとおりだ。親切な寺院に保護されてなかったら、俺も死ぬしかなかったと思う」


 村が滅んだのは十年以上前のことだ。いちいち悲しんでもいられないし、変に同情されるのも鬱陶しい。実力がなければ認めてもらえない社会なら認めてもらえるまで強くなってやると、軍隊学校に入ったのだ。


 しかし、嫌悪の視線を浴びるのは想定外だった。


「そんな死に損ないのミイラみたいな奴に自分はバーンテッド家の人間なのに負け続けていたわけです……。平民に足蹴にされ続けたようなものですよ!」

 バーンテッドは地面の土をがしがし削るように蹴った。

 おいおい、ほとんどいちゃもんだぞ!


「お前、それは逆恨みだろ! 俺がお前に『有力貴族のくせにその程度か』なんて言ってたら話は別だけど……」

 身分が低いからってひがみ根性で他人を見たりまではしてないぞ。


「まっ、せいぜい全力で逃げることですね。自分は手加減ができる自信がありませんから」

 挑発というより殺害予告って感じのことを言われた。


 ここまではっきりと言いたいことを言った手前、取り除きたいって気持ちはわからなくもないが。もし俺が将来、叩き上げの軍人として出世したら邪魔だろうし。


「わかった。せいぜい隠れておく」

 これは俺の本心だ。竜騎士はともかくドラゴンに勝てる生徒などいない。うかつに立ち向かって命の危険を冒すよりは三日間、森に穴でも掘って潜伏するほうがいい。



 そして、演習開始を告げる第一の笛が鳴った。

 といっても、俺は五番目の笛までは動けない。


 生徒二百人が一斉に移動したら、ぐちゃぐちゃになるからな。

 移動は二十人ずつ。五分おきに笛を鳴らして、次の二十人が動く。


 五番目の笛で俺も移動することになった。とりあえず演習林の森に入る。人気の高いところは先客が多そうだし、できるだけ辺鄙なところまで移動しよう。


 隠密スキルを使う。

 これも授業で習ったものだ。足音を立てずに走れる。

 俺の軍隊学校の個人成績は以下のとおり。


===

クランザ

18歳 男 

体力 A

腕力 B

剣技 B

武術 A

敏捷 A

隠密 A

知識 A

魔法 A

炎系魔法・風系魔法・初期回復魔法・毒解除魔法

特技

隠密走行・罠作成・サバイバル技術

===


 はっきり言ってかなり高いと思う。そりゃ、一番上のクラスにも配属されるはずだ。正式に軍人になれば、特技の関係上、どこかの斥候兵として派遣される可能性はそれなりにある。


 でも……その人生はほぼ確実にずっと命懸けのものなので、迷っている。

 俺があこがれていたのは竜騎士みたいに華々しいものだ。

 影の世界で一生生きるっていうのとは真逆だ。しかも、俺の場合、家族がいないので悲しむ奴もいないだろってことで、ことさらヤバい地域に派遣される未来しか見えない……。


 どうしようかと悩みながら斜面を駆け下りていった。

 技術のない奴ならそのまま転落していくところだが、急傾斜を走るぐらいは訳ない。


 しばらく進むと平坦地に出た。

 一気に下ったから、おそらくこのへんにはまだ誰も生徒はいないだろう。斜面を降りない場合、獣道を使っても相当な迂回が必要になる。


 そもそも、知識がない奴だと遭難のリスクすらあるようなところだ。誰もこっちに来ない可能性も高い。


 もしタスキを奪うことを考えるなら、人口密度が低い箇所は不利でもあるが、俺はすでにこの戦いは捨てているからこれでいい。

 ドラゴンも斜面に木が生えているところはやってきづらいだろう。炎を吐いてすべて灰にするという戦術を取れば話も違ってくるが、この演習林は軍隊学校が毎年使っている。それを使用不可にする戦術は禁止されていると思う。


「周囲の地形でも確認して、罠でも張っておくか」

 音が鳴る仕掛け罠ぐらいはすぐに作れる。この実習はそういった罠用の道具を持ち込むことも許可されているのだ。


 しかし――

 奥のほうから何か声のようなものがした。

 人間の声ではないように思う。だいたい、俺よりさらに奥に生徒がいるとも思えない。


 耳に意識を集中させる。弱々しい声だ。ただ、オオカミでも、シカでも、イノシシでも、クマでもない。鳥の鳴き声にも当てはまらない。


 慎重に、慎重に、やけに巨体の何かが倒れている。

 鼻がやけに長く、その横から鋭利な牙も伸びている。


 その姿を見て、すぐに何の動物かはわかった。それはいいとして……。


「なんでゾウがこんなところにいるんだ!?」

 この国にゾウが生息してるなんて聞いたこともないぞ!


 図鑑でゾウの姿ぐらいは知っていた。でも、あれは南方の国でしか生きられない動物のはずだ。このテクス王国は冬はそれなりに冷えるし、そんなものがいるわけがない。友好の証として王家に贈られたゾウも寒さで死んでいるはずだ。


「ぱお、ぱおぉぉん……」

 だが、そのゾウは物悲しげに鳴いているのだ。

 どういうことなんだよ!

明日もできれば2回更新します!

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