ティーセン邸の朝は早い
1週間ぶりの帰宅、食事中も会話は弾み後は寝るだけとなった。
もぞもぞしなから布団の中で密着して寝るのは弟が3歳になってから今までも
変わらなかった。
「スエ姉さん」
夜だからか声を少し押さえて「ありがとうね」
と続けた
枕元のオレンジ色の光が部屋をぼんやりと浮かび上がらせる
二人の顔も。
「どういたしまして。」
ふふっと顔を見合わせて笑いあった。やさしい顔をしたオレンジ色の二人は
結局メイドが電気を消しにくるまで話し続けた。
東の空から太陽が昇る気配がある薄暗い朝
星がまだ輝いてる頃、ティーセン邸は活動を始めた
掃除から始まり、屋敷の主である二人を起こし着替えから
今日の予定を伝え朝食の席へと向かわせる
「スエ様、本日もお送りしなくてよろしいのですか」
ここに努めて半世紀の使用人レオナルドが困ったように言う
「この前脱走がバレたのは馬車で帰ってきたせいだからね。」
あんな堂々と帰ってきては学校側もさぞ驚いただろう
「あの時は、一言注意で良かったけど父様に知れたら拳骨がくるよ」
ああ~恐ろし
と朝食の玉子を大きな口で迎えながらいい放つ。
怖がってるとは思えないが
騎士団長の父を怒らせると寿命が縮むと父の隊の騎士たちは言う
「よ~し、飯も食ったし準備も万端、」
スエードの言葉遣いをレオナルドが注意する。
はいはいと軽く流し屋敷の外へ向かう
「ライカ、お姉ちゃん行ってくるねー」
弟のライカは5歳だ。スエードが帰る時には必ずいってらっしゃいと
言うために眠い目を擦りながらも送り出してくれる
「うん…いって、らっしゃ…」
眠気と寂しさで眉毛がハの字になっているのはどうしても後ろ髪を引かれる
レオナルドとメイド数名が頭を下げ「いってらっしゃいませ」
と声をそろえて送り出した。
「はいよ~!」
手をひらひらと振り屋敷を後にした
太陽が上り街の外れも1日の始まりを迎える
疲れた…