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三話 契約


「だーかーらー、契約についての説明はまだ一切されてないんだけど!」

「はうっ。またやってしまったのか…………しかし私は長い間、誰とも会話する機会がなかったんだ……これくらいは許してほしい」

「これから話してくれるんだろ? まあ、何も問題なければ俺も契約する気でいるし」

「ほっ本当か!? ならすぐにでも話を始めよう! まずはこの世界の契約についてだが――シュウはもう気付いているかも知れないが――魔法によって成される。そして、契約が成立すればお互い体のどこかに契約の証しが刻まれ、契約を破れば双方の決めていた罰が、証しによって執行される。大抵の罰は奴隷落ち、最悪死刑になることもある。ここまではいいか?」


 うん、ここまではほぼ予想通りかな。けど、やっぱり奴隷制度あるのか……まあ異世界あるあるだな。とりあえず今は話の続きを聞こう。

 俺は軽く頷き、レイアに話の続きを促す。


「そして、契約の内容なんだが……私が求めるのは一つだけ。このまま魔導書としてただ生きるのではなく、人としての生を歩み、最期は人として死にたい。これが君の力(・・・)と私の力のほぼすべて(・・・・・・・)を使いシュウを召喚した理由だよ」


 やっと明かされた契約内容と、召喚された理由わけ

 レイアの過去を聞いた時から大体の予想はついていたが――君の力と力のほぼすべてを使い? 一体どういう事だ?――気になっている事がまだあるのにもかかわらず、次から次へと謎が増えていく。

 はぁ。仕方ない、一つずつ片づけていくしかないか。



「契約の前にいくつか聞きたい事があるんだが……いいか?」

「いいとも、なんでも聞いてくれ」


 俺の言葉に――契約する方に心が傾いているのを察しているのだろう――レイアはすぐさま反応し、返事をする。

 レイアからの返事を聞いた俺は、気になっていることを一つづつ質問していく。




・レイアとは普通に話せているがそれはなぜなのか。

・魔力がないらしいが、魔法――空間魔法はつかえるのか。

・俺のような異世界人は他にもいるのか?

・君の力と私の力のほぼすべてを使いとはどういう事か。




 とりあえず、今気になっている事はこんな所だろうか?

 ひとまず、すべて質問し終わった俺にレイアが口を開く。


「まず、なぜ私と普通に話せているかなのだが――これは私のスキル【翻訳】のおかげだ。なので、シュウはこの世界で私以外とは恐らく、言葉が通じないだろう。次に、魔力がないが魔法は使えるのかということだが……今は使えない。そもそも魔力がないのだから当然だろう? しかし、私と契約すれば【共用化】の力を使い、魔力を発現させやすいよう体に循環させる事が出来る。そうすれば徐々に魔力が体に馴染み、【共用化】なしでも使えるようになる。まあシュウにもやってもらうことはあるが」 

「……それって、契約しないと魔法が使えないってこと?」

「シュウの場合はそうなる。次の質問とあわせてになるが――本来、異世界召喚とは国を挙げて行われるモノだ。国に仕えている魔術師や、魔法使い達が魔力を一箇所に集める事で、こことは違う世界につながり、ようやく召喚する事ができるんだ。その時、ある魔導具によって魔力を強制的に引き出すという話を聞いた事がある。今がどうなっているかは知らないが……昔は国に凶事が起こると、異世界から勇者を召喚していたはずだ。だから、現在この世界にシュウ以外の異世界人がいてもおかしくはないだろう」


 あー、つまりはその魔道具がないから、俺には魔力がないわけね。あと、言葉もレイアの【翻訳】なしでは通じない。

 まてまてまて! 冷静に考えて、もう契約するしかないじゃん!? 契約しなきゃ、詰んでるよね?  

 そんなことを、心の中で嘆いている俺のことなど気にした様子もなく、レイアの話は続く。


「そして、最後の質問なんだが……先程言ったように、異世界召喚とは国の魔術師達が何人も集まり行われる。それを1人で行うには、いくら私の魔力量が多いとはいえまだ足りない。だからレベル、スキル、魔法、すべての力を捧げ異世界召喚を行い、それでも、あと少し足りなかったのでシュウの力も使ったという訳だ」

「使ったという訳だ――じゃねーよ! なに勝手な事してくれてるんですかねぇ!…………で、どんな力を俺から使ったんだよ?」

「そっそんなに怒らないでいいじゃないか。まさか、足りないとは思わなかったんだ……シュウは魔力がないから、生きてきた時間を少し――約10年分ほど使わせてもらった」

「?」


 言っている意味がまったく分らない。えっとつまりどういう事?

 理解できずにその場で固まってしまった俺に、レイアが詳しく説明する。


「わかりやすく説明すると、シュウがいくつかは知らないが――歳が10年分若返ったということだよ」

「えーー!!…………それって幸運(ラッキー)なんじゃね?」


 えーっと、俺がいま28だから、そこから10年分となると、18か?

 ここで、10年分歳をとったのなら絶対に許せないが、若返ったんなら何の問題もない。

 むしろ、レイアに感謝したいぐらいだ。ありがとうございます、レイア様!

 しかも、ここまで聞いた話では、レイアと契約すると【共用化】により魔力や、スキルなどが使えるようになるらしい。その代わりに、レイアが人の姿に戻れるよう協力するというモノなのだが、今回はもし契約が破られても罰はないようにするらしく、そうなれば、俺としても契約しない理由がまったくない。

 そうと決まれば……さっそくレイアにその事を伝える。


「レイア、よくぞ俺を召喚してくれた。さっそく契約しよう。さあしよう。今すぐにでもしよう」

「契約してくれるのか!? あ、ありがとう。では、今から私のいう事を覚えてくれ」


 しばらくレイアから契約の仕方を教わり、それを覚え、ようやく実行に移す。


 まずは、魔導書の表紙に左手を置き、目を瞑る。

 俺は、言われるがまま契約のための準備をし、そしてついに契約が始まる。


「我、オルレイア・グランディフは契約の元、シュウタ・フユサキに証しを刻み込む」

「我、シュウタ・フユサキは契約の元、オルレイア・グランディフに証しを刻み込む」


――刹那、左手の甲が焼けるように――いや灼けるように熱く、同時に刃物かなにかで刺されているんじゃないかと錯覚するぐらいの激痛を左手に感じる。

 もうダメだ! 我慢できずに手を離そうとするが、魔導書は吸いついているかのように手から離れてくれない。


「あぁあぁぁぁぁぁ」


 苦しみのあまり声を漏らしてしまうが、しかし、その苦しみは長くは続かず、しばらくすると痛みがスーッと消え、灼けるような熱さもひいていき、俺は急いで左手の甲を確認する。しかし火傷の跡などは一切なく、残っているのは甲に刻まれた模様――契約の証しのみ。

 レイアを見てみると、魔導書の表紙に俺の左手の甲と同じ模様が刻まれていた。


「よしっ! これで契約は完了だ。シュウ。これからよろしく頼む」

「こちらこそよろしく頼む、相棒。いやぁだけどあんなに痛いのなら先に――ってなんだこれ?」

「ん? ああ、どうやら契約により【共用化】のスキルが発動し、シュウに魔力が生まれたらしい。この部屋の転移魔法陣のトラップが作動したのが何よりの証拠さ」


 いや、ちょっと待て相棒よ。そういう事は先に説明しておいてくれよ!

 俺は魔導書であるレイアを抱え込み、心の中で叫んだ。


 気付けば俺の周りには光が溢れ、召喚された時と同じような現象が起こり始めていた。

 そして、俺とレイアは光に包まれ、封印の間から強制的に転移させられたのであった。

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