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プロローグ


 12月に入りクリスマスが近づくにつれ、冬の寒さが厳しさを増していく一方、街中は色とりどりのイルミネーションでライトアップされ、カップルで溢れかえり賑やかになっていく。

 そんな賑やかさなど目もくれず、仕事を終えた冬崎(ふゆさき)柊太(しゅうた)(28)は、自宅への帰路についた。



 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 初雪がしんしんと降りはじめ、徐々に街を白く染め――同時に気温も下がっていき――身を切るような寒さが俺を襲う。

 

「はぁー、寒かった」


 まさか帰宅途中に雪が降ってくるなんて、そりゃ寒いわけだよ。

 薄っすらと積もり始める雪をみながら、明日は休みでよかった、と思いつつ玄関のドアを開け中に入ろうとした時、言いようのない違和感を感じその場に立止まる。


『お..き.え...か?』

「んっ?」

『……』

「気のせいか?」


 何処からか声が聞こえた気がしたんだが……。気のせいかな?

 なにかと忙しくなるこの時期、疲れが溜まっているんだろう。

 1日ゆっくり休めば疲れも取れると思うし……まぁ気にしないでいいか。

 それより早くコタツに入って温まり、一息ついてから夕飯にしよう。冷蔵庫の中なにかあったかなあ? なにもなければカップ麺でもいいや。などと考えながら部屋に入ろうとすると、また違和感を感じ動きを止める。

 

『おい、きこえているか?』

「!!」 


 今度はハッキリと頭の中で・・・・声が聞こえた。



 いやいや、さっきのは気のせいじゃなかったの!? というか誰?

 頭の中に直接語りかけてくるとか、テレパシーでも使ってるのかよ。

 あと凄く怖い。夜に部屋で一人きりの時、いきなり謎の声に呼びかけられるなんて恐怖でしかない。

――次々といろんな疑問や感情が溢れてくる。

 俺は平静を失いそうになったが、溢れる感情をなんとか抑え込み、これからどうするかに考えを巡らせる。


 まず、これからどうするかは2択に絞られると思う。あまり自信はないが……。

 無視するか、返答するかだ。

 無視した方が良いのだろうか、それとも何か答えた方が良いのだろうか、この場合どちらが正解なのだろう?

 どちらにしようか思い悩んでいたその時、またあの違和感が俺を襲う。


『おーい……きこえていないのか?』


 あっ、また聞こえてきた。若干、寂しげになってきた気がするが気のせいか?

 うーん、いろいろ気になる点もある事だしな……。

 よしっ。気合を入れ、緊張しながらも意を決し、なるべく丁寧に、出来る限り失礼のないよう心がけ謎の声に話しかけてみる。


「もっもしもし、聞こえてます。初めまして――で良いのかわかりませんが、冬崎柊太と申します。失礼ですが、お名前を伺ってよろしいでしょうか?」

『もっもしもし? まぁ聞こえているのなら良かったよ。ふふっ、初めましてであっているよ。私の名はオルレイア・グランディフ。レイアと呼んでくれ』


 オルレイアさんかぁ。名前からして日本人ではなさそうだけど……。 

 とりあえず名前は判明した。次はどこから、どうやって話しているのかを聞いてみるとしよう。


「あのー、そのー、レイアさんは一体どこから――」


 最後まで言いきる前に、レイアさんが質問を遮った。


『おっと、もう少しもつと思っていたんだが魔力(・・)の消耗が……あー、話の途中ですまないがあまり時間がないんだ。詳しい話はこちらに・・・・召喚(・・)してからするとしよう。』


 えーっと、魔力? 召喚? こちらって? もしかしてレイアさんって、病院に行っても治らないあの病――厨二病の方なのかな。かく言うオレも昔は……。

 いや、この事について思い出すのはやめておこう。

 そんなどうでも良い事をあれこれ考えていると、


『これでよしっ、準備完了だ。それではまた後程、こちらの世界で会おう』

「えっ! ちょっと待っ――」


 直後、いきなり足元に見たこともない模様が浮かび上がり、淡い光を放ち始めその光が部屋全体を一気に埋め尽くした。

 その光景はどこか幻想的であり、夢でも見ているんじゃないだろうかと錯覚してしまう程だった。

 それと同時に、瞼が重くなり意識が遠のいていくのを感じる。

 俺は徐々に薄れゆく意識の中で、マジか!? マジなのか? これってもしかして……


「異世界召喚!?」


 そう一言だけ叫び、意識を失った。


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