Act.15
Name:月姫
Class:狙撃手→変更可能:破壊の狙撃手、隠密の狙撃手、必中の狙撃手、即死の狙撃手
レベル50
Tribe:ホビット
種族特性:移動速度微上昇。隠密行動時隠蔽度+
スキルスロット1:銃衝術 熟練度0071/1000
スキルスロット2:心声 熟練度0092/1000
スキルスロット3:隠密 熟練度0125/1000
スキルスロット4:索敵 熟練度0161/1000
スキルスロット5:ウェポンチェンジ 熟練度0121/1000
スキルスロット6:単身軍隊 熟練度0021/1000
クラススキル:急死の一撃Lv.5
入手スキル
スキル:鬼族の天敵
鬼族に恐れられる殺戮者。その威光にオーガは震え、ゴブリンは従うという。
入手条件:鬼族のボスモンスターの体力を、一撃で五割以上削る。
効果:鬼族のモンスターへのダメージプラス十%。低確率で鬼族モンスターが仲間になる。
スキル種類:パッシブ
スキル状態:Off
なにこれ……まあいいや。Onにしとこう。
レベルが五十に上がったことで、二次職の選択肢が提示されていた。二次職になると二つ名のようなものが職業の文頭につくことが確認されている。俺の職業もそうなっている。
「破壊……オブジェクト破壊攻撃にプラス補正。腕とか吹っ飛ばせるわけか。隠密……銃をもっての隠密行動時隠蔽度にプラス補正。うぅむ。必中……DEX補正に狙撃銃の射程圏内に限りロックオン? 即死……狙撃銃の攻撃が急所に当たった場合、低確率で敵モンスターが即死。この効果はプレイヤーにも適応される。どれにしよう?」
「うむ。安定しているのは必中だが、即死も捨てがたいな」
「うおっ!?」
独り言のつもりだったのにガッツリ聞かれていた俺は、慌ててステータス画面を閉じる。照れ隠しのようなものだが、まあいい。なにか皆のこっちに向ける視線が生暖かいのもまあいいだろう。
「……さ、さーて、行こうか?」
じとーとした視線を振り払って、俺は第五階層に降り立った。
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リノサスオーガほどではなかった、というのが俺たちの感想だった。やたらめったら物理耐性が高かったリノサスオーガに比べて【鬼族王】は俺たち銃使いにとっては相性が良かったのだ。
「ていうか、予想以上にシュベルクが強いな……」
「わーいカグヤさんがデレたー!」
「そのネタもう終わったから」
抱きついてこようとするシュベルクの頭を抑えて牽制する。長身の体つきをしている俺に比べて背が低いシュベルクは手が届かず、一昔前のコメディのような状態になった。
「ああ、怖かった……というか痛かった、本当に」
「お疲れさm……」
「あ、グリネスはこっちよらないで」
「ひどくね!?」
拒絶を受けたグリネスが凹んで、床に座り込む。そこに近づいていったシュベルクが肩をたたいて顔を上げさせた。
「―――――――ごめんなさいっ!」
「うわあああああああああああ! トラウマがぁぁぁぁぁぁぁっ!」
遠慮も容赦もなく止めをさしたシュベルクはやりきった顔で俺に親指を立ててくるが、俺はそれに親指を下にすることで返した。お前は女性にごめんなさいと言われる辛さをわかっていない。
「で、レベルは上がったかシュベルク」
「うん。一応36まで上がったよ」
36……まあそこそこか。ギルド抗争イベントまで後三日。今朝調べたところ、今の最高レベルは56だったはずだから20差。これからは【擬態蛇】を狩ってレベル差を縮めなければならない。ひたすら作業をするのは人の精神を削るが、それでもやらなければならない。レベルというのはもっともわかりやすい強さの指標である――――それは裏を返せば、レベルが低い者は高い者には勝てないということだ。
もちろん装備や技術、気迫などでいくらでも結果は変動し得るが、それでもレベルというのは厳然として両者の間に横たわる壁なのだ。
「よし、じゃあ【擬態蛇】を狩りに行こう」
「それはいいが、どう見る? レギオンはギルド抗争で優勝できそうか?」
軍曹の問いに俺は腕を組んで考える。結論はすぐに出た。
「――――正直、厳しい。【擬態蛇】を使ったレベリングでも、司令が二次職になるのが限界だろう。三日後……あと二日と半日だが、リリアとグリネスが46、シュベルクが43あたりが限界だな」
それでも、驚異的なスピードではあるのだが。こういうゲームは基本的にレベルが上がるほど、次のレベルへの必要経験値が加速度的に増大していくようにできているからだ。シュベルクのレベルが36から43というのも、実はかなり早い。
「うむ。ところで、なんだが……」
軍曹が言葉を濁す。珍しい。普段はそれはもう軍人のようにはきはき喋るのに。
「どうしたんだよ軍曹」
「……うむ。ギルドホームを、購入したいと思ってな」
ギルドホーム。それはホームとは一線を画す施設だ。サイズはピンからキリまであるが、安いものでも値段は非常に高い。おいそれと購入できる物ではない。
「値段は十五万Eだ」
「うぇぇ。知っちゃあいたけど高いな……」
現在のギルドの貯蓄額がだいたい十二万くらい。目標額まで三万だから購入できないなんて事は無いと思うが、十五万貯まったから全額使って購入とはいかない。早くてもギルド抗争以降だろう……という俺の思考は、あることに気づいて止まった。
「軍曹……優勝賞金を狙ってるのか?」
ギルド抗争の優勝ギルドには、五万Eの賞金がでる。それと貯蓄を合わせれば目標額へは届く。残金二万Eというのは若干不安だが、別に少ない訳じゃない……余裕がない、程度だろう。
「なるほど、ギルドホームか……是が非でも優勝しなきゃいけなくなったな。仕方ない……一旦、始まりの町に戻って回復魔術のスキルを購入しよう」
これはシステムを逆手に取ったレベルの上げ方で、パーティー内のレベルが低いプレイヤーが前線で戦うプレイヤーに延々と回復魔術をかけ続ける、というある意味裏技的な技だ。銃使いとしてそれを使うのはどうなんだと思ったが、ギルドホームのためだ。
「よし、それで行こう。ギルドホームっていうのはあるだけで全然違うしな」
「私も賛成。そろそろ拠点が欲しかったのよ」
「ボクも賛成」
「新人のくせに偉そうだなシュベルク……確かに人手不足は深刻だが……まあいい。では別行動といこう。大威力の狙撃はパーティーでのレベル上げに効率が悪い。司令とグリネスとリリアとシュベルクは『鬼の集落』でレベル上げ。俺は少し用事があるから、装備を調えてくる」
俺の提案に少し軍曹は嫌そうにしたが、ここは俺の考えが正しいはずだ。四人よりもレベルが高く、一撃で敵を葬るスタイルの俺は与ダメージ調整などできない。
「俺はアイチャのところに向かう。それじゃあな」
「………ああ。何かあったらコールしてくれ」
「わかってるって。じゃあな」
俺は武器を移動制限のかからない最弱狙撃銃に変更すると、十五秒かがんで『無声発動』と『隠密行動』を発動させて歩き出した。隠密行動中のプレイヤーはほかのプレイヤーからは透明な空気の揺らぎに見えるらしい。注視すれば隠蔽は破かれるが、普通に見ている分には見過ごしてしまう程度のようだ。
「じゃあカグヤも行ったし……行こうか軍曹?」
「そうだな」
小走り程度の速度で移動しながら、ステータス欄を確認する。
スキル融合……銃術+遠視=狙撃銃術
スキル分解……銃衝術=銃術・体術・蹴術
索敵=遠視・気配探知
スキル分解は、一つのアクティブスキルを分解することで複数のスキルにわかれることだ。これはスキル販売店で能動的に行うことができる。熟練度は分解すると分けたスキルに平等に分配される……そしてスキル融合のためのスキルが分解することで得られる場合はこうして表示されるのだ。
とりあえず全部分解して融合する。狙撃銃術と蹴術と体術と気配探知を入手。
スキル:狙撃銃術
その目は獲物を見つける。放たれた銃弾は獲物の命を奪う。
入手条件:遠視と銃術を持っていて、狙撃手の二次職になること。
効果:狙撃銃を装備しているときに全ステータスプラス補正(小)。アビリティ『ピンポイントショット』使用可能。
『ピンポイントショット』……銃弾の当たり判定が三分の一になるかわりに威力が1.2倍。
スキル熟練度0/1000
スキル種類:アクティブ
スキル:気配探知
近付く者に気をつけろ。狙われてるぞ……。
入手条件:アクティブスキル『索敵』を分解する。
効果:フレンド登録していないプレイヤーもしくはモンスターが近付いてきたときにアラームを鳴らす。
スキル種類:パッシブ
スキル状態:Off
ふむ、とりあえずOnにしておくか。
スキルスロットには狙撃銃術と心声と隠密と蹴術と単身軍隊とウェポンチェンジを入れておいて……蹴術はそのうち何かと変えるかもな。職業欄の『隠密の狙撃手』の部分をタッチする。
クラススキル:見えない狙撃手Lv1
効果:狙撃銃を装備した状態で隠密行動をする場合、発声およびダッシュでは隠密が解除されない。隠蔽度プラス補正。
……マジでか。だったら心声は必要ない。かわりに体術入れとこう。破壊は使わないし、必中と即死はピーキーすぎる。
「これでよし、と」
さて、先を急ぐか。隠密が解けないならば心配する必要はない……走ればいい。
俺は猛ダッシュでアイチャのいる二リアの街に向けて進んでいった。
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「ふーん、で、この素材で一式作って欲しいんだね?」
「ああ」
「どうやってこんなに集めたのかは知らないけれど……まあいいや。じゃあ一式で五千だよ」
「はいはい」
作り上げられた防具一式を受け取る。かわりに五千Eを渡し、にやりと笑う。アイチャならばこの防具がどういうふうに使われるのかわかるはずだ。
「しかし、君はどんどん暗殺者らしくなっていくね」
「冗談。俺は狙撃手だよ」
アイチャの笑いを含んだ声に適当に返し、居酒屋を後にする。次は、切り札の準備をしなきゃいけないから最高の銃たちをリサに作ってもらわなければ。
アイチャにお礼を言うと、俺は始まりの町に走って向かった。




