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Act.10

 ファル草原の手前に存在する、ニリアの街に俺とギルド《ガルーダファントム》のメンバーは帰ってきていた。拠点にしているという宿屋兼酒屋の椅子に腰掛けていると、上から眠たそうにアイチャが下りてきた。


 ギルド《ガルーダファントム》はわずか六人で構成される弱小ギルドだった。現在の最高レベルは確か47だったはずだが、このギルドはまだ全員30前半だ。一番レベルが高いのが生産職のアイチャだったというのが、なんとも泣ける話だ。

 現在最前線……フィールド夢見の丘のダンジョン、『夢魔の巣窟』に挑み続けている大手ギルドは三つだ。フィーリアが所属する《戦乙女》。ベータテストの時にトシが所属していた《守護騎士団》。そしてトシとキャリシーが結成した《ガドラムリスト》である。小規模ギルドなのに最前線に挑み続ける《HERO》は、イケメンがユニークスキルクエストを経て再びユニークスキル『救世英雄(メシアヒーロー)』をもって戦っているらしい。


 ちなみにガドラムリスト、通称GLはキャリシーがトシに『ギルドの上と揉めたくないなら、自分で作ればいいじゃないっすか』の一言によって結成された。ギルドマスターが率先して前線で味方を守るため、人気はすぐに出た。しかしトシは決してむやみやたらと人をギルドに入れるようなことはしなかったため、その人数はまだ三十数人である。


「へぇ、カグヤさんってGLのトシさんと知り合いなんですね! どうりで強いわけです」


「ああーもう4日くらい連絡取ってないな……あ、敬語じゃなくていいよ」


 ちなみに俺は《戦乙女》と《ガドラムリスト》の上位メンバーとはだいたい知り合いである。カルマさん怖かったなぁ……第一声が『君のプレイスタイルは私とは相容れないな』だったもんなぁ……。


「……そういえばカグヤさんってレベルいくつなんですか?」


「ん? 俺は今レベル43」


「すご……」


「高いなぁ……『夢魔の巣窟』も行けるんじゃないですか?」


「あそこは魔術師いないと難しいんだよ……物理攻撃軽減のMOBが多くて、効率が悪い。あ、敬語いらないよ?」


 銃を使って物理以外の攻撃をするには、魔弾を使うしかない。だが魔弾は一発ごとに使い捨てな上に、一発が高いから採算が取れない。


「魔弾ですか……尋常じゃない威力を誇りますけど、そもそも銃使いが少ないですしね」


「俺以外に見たこと無いぞ。あと敬語いらん」


 いい加減敬語をやめろ。アイチャもシュリガもカンヤもいつまで敬語を使う気だ。


「あ、俺1人知ってるぜ! ほら、軍曹!」


「マジで? カイガー、その話詳しく聞かせてくれ」


 やはり、銃使いはいるのだ。一万人もの人間が集まれば、そりゃあどうしても銃が使いたいって人もいるだろう。軍人ロールプレイをしたい人だって、な。


「えっと軍曹と知り合ったのは一週間前かな。アイチャに軍服みたいな鎧をつくって貰いたいって……」


 筋金入りの軍事マニアで、このゲームに銃があると聞いて参戦、そのリアルさに驚嘆したそうだ。俺はこのことに関して一つの仮説を立てている。


 きっと運営スタッフの中にはとても銃器が好きな人がいて、その人は茶目っ気あふれる性格をしていたのだろう。そして不遇職と言われてでも銃に関する職業を作り、特化ステータスになるように調整したのだ。


「軍曹も面白キャラだよな~」


「それは暗に俺も面白キャラだと言いたいのか、バカイガー」


「てめっ、バカイガーって言うな!」


 平和な笑いに包まれる居酒屋。《ガルーダファントム》の女性陣は、(白髪エルフのファムリと、金髪エルフのリシュナ)早々に部屋で寝ると言って上がってしまったので、男性陣五人で馬鹿話にふける。


「で、だ。カイガー、お前ファムリとリシュナどっちが好み?」


「ん? 俺はドラゴニアの人がいいなぁ。あの角かっこいいじゃん!」


「バカだぜ……こいつやっぱり本物のバカだぜ……」


 こいつは好みの意味を理解しているのだろうか、これではあまりに女性陣が不憫である。面白そうだからあとでドラゴニアのカルマさんにこいつのことを紹介するとして、俺たちは様々な話をした。面白かったのがこのギルドの生い立ちだ。


「最初はアイチャにシュリガ、カイガーとカンヤの男所帯だったんだよな。シュリガになんでおまえが魔法職じゃないんだってアイチャもカンヤも食ってかかってたんだぜ」


 そりゃそうだ、と大きくうなずく俺。バランス悪すぎだろそのパーティは。


「あ、でもその頃はカンヤはシーフだったんだ。でも、この大柄な体格が災いしてな、結局両手剣士に転向することになったんだ。」


「う……俺はゲームの中でくらい影に生きる、みたいなプレイスタイルをしたかったんだ……」


「隠密中に驚いただけで声を上げて解除されちまうし、不意を打とうとしても攻撃時に大声上げるからモンスターには逃げられるし、指が太いから罠解除には手間取るし」


 いや、俺は最初に選んだ種族がドワーフであることに一番の問題があると思う。そりゃDEXは高いけどさ……あの種族AGIの伸びが悪いんだよ。


「そういえば、シュリガとカイガーは種族何なんだ?」


「俺たちは二人ともヒューマンです。意外と多いらしいですよ、ヒューマン」


「マジか……ソロプレイ推奨とか書かれてたのに」


「これが、意外とパーティ向きの特性を持ってんだよな。経験値の取得にボーナスがついて、熟練度が上がりやすい」


 これの意味はすぐにわかった。パーティで他の職業に転向することになったとき、すぐにその職業になれるのだ。ちなみに転向はレベル15以上になると、始まりの町で巻き戻しシステムが使えるようになる。レベルは1に、ステータスも初期値に、熟練度もリセットされるが、成長値の振り直しもできるわけだ。


「しっかし今日のあいつは堅かったな……というかカグヤは夜のファル草原で何してたんだ?」


「俺? 俺はレベル上げ。【厚皮の犀】は結構良い経験値持ってるからなー」


「1人で狩ってるんですか? 銃で? ダメージが通らないというのは……?」


 シュリガが驚いたように矢継ぎ早に質問してくる。そりゃそうか、銃と言えば低攻撃力が常識だからな。


「俺の職業は狙撃手だ。で、こいつが相棒。ウェポンチェンジ、【SLBⅢ】」


 腰にぶら下がっていた二丁目の【セントラル・ドグマ】が消えて、俺の背中に長大な銃身を持つ銃が現れた。二回強化を行った【SLB】は、その射程距離と威力を伸ばし(ついでに要求STRも上がった)クラススキルも相まって一撃必殺の名を欲しいままにしている。逆に言えばきちんと弱点に当てたのに倒れなかったあの犀が異常なのだ。


「はー、狙撃手か……」


 という気のない反応を返したのはアイチャのみ。ほかの三人は俺の近距離での戦闘を目の当たりにしているため、絶句状態だ。


「おい?」


「はっ、すいません……でも狙撃手なのにあれだけ動き回れるというのは、若干心が折れそうですね」


「いや俺あの攻撃一撃でも食らったら死んでるから」


 紙装甲だしな、と付け加える。今まで強化してきたのは武器ばかりで、防具は【鬼族のライトアーマー】以来全く強化していないという話をしたら、アイチャがキレた。


「なに考えてるんですかッ今すぐ俺が防具作るからそこに正座ッ!!」


 ……………え?



    =============


 十数分後、俺はげっそりとやつれつつも満足げという矛盾した顔つきで居酒屋を出た。あの後俺に説教をかましながら作成されたAGIやDEXを強化する防具群一式は、俺に格安で譲渡された。四つほど持っていたあの犀の皮を一つ渡すと、アイチャはその場で【防犀頭巾(ぼうさいずきん)】という頭用装備にしてカイガーに渡していた。

 灰色一色のそれを渡されて、カイガーは微妙な顔でそれを頭にかぶったが、シュリガがボソッと『これでバカの進行具合が止まるかな……』と呟いていた。俺は無理だと思う。あの犀もどちらかというと馬鹿の類だから。


 アイチャは俺に渡した防具は、最前線で戦えるような人用の装備じゃないと言っていたが、俺はかなり満足していた。



 頭装備:【砂蜥蜴(サンドリザード)の御守り】 DEF+7 AGI+9


 胴装備:【暗殺鬼(ゴブリンアサシン)の死装束】 DEF+25 AGI+9

 特殊効果:隠蔽度プラス補正。鬼族に隠密が効かなくなる。


 腕装備:【砂蜥蜴のガントレット】 DEF+12 AGI+4


 腰装備:【砂蟲(サンドワーム)の腰巻き】 DEF+10 DEX+10


 脚装備:【ホビットの毛皮靴+3】 DEF+3 AGI+3

 特殊効果:ホビットが装備しているとき足音を消し、隠蔽度プラス補正。さらに移動速度微上昇。



 ホビットの毛皮靴は初期装備の一つだが、効果が優秀なので強化してそのまま使うことにした。やはり防具はモンスターの特徴を受け継ぐようで、AGIが高かった【砂蜥蜴】はAGI上昇の効果を持っている。気色悪い外見をした【砂蟲】からなぜDEX上昇の装備を作れるのか、という質問をしたら


「きっと器用だから砂に潜れるんだよ」


 という感心すればいいのか呆れればいいのかよくわからない仮説をアイチャから頂いた。


「さて、メッセでも送るか」


 キャラクターネームはそのまま『軍曹』。内容は、同じ銃使いとして一回会ってみたい、というもの。あとは返信待ちである。

 そして俺は移動制限がかかる【SLBⅢ】のかわりに【セントラル・ドグマ】を装備して、再び夜の狩りに戻っていったのだった。



           =======================



 Name:月姫(カグヤ)

 Class:狙撃手

 レベル43

 Tribe:ホビット

 種族特性:移動速度微上昇。隠密行動時隠蔽度+


 スキルスロット1:銃衝術       熟練度0052/1000

 スキルスロット2:心声        熟練度0063/1000

 スキルスロット3:隠密        熟練度0123/1000

 スキルスロット4:索敵        熟練度0142/1000

 スキルスロット5:ウェポンチェンジ 熟練度0084/1000

 スキルスロット6:単身軍隊(ワンマンアーミー)     熟練度0021/1000


 クラススキル:急死の一撃Lv.4


 発動中のパッシブスキル

 鷹目:相手の弱点が赤い光点となって表示される。

 暗殺:クリティカルダメージにプラス補正(中)。DEF減少。

 器用:DEX上昇。

 早足:歩行速度微上昇。

 狙撃:狙撃銃装備時、DEX上昇。

 気配:索敵スキルの範囲が広がり、隠密行動時に隠蔽度微上昇。


 ステータスは省略。



           =======================



 ある日のトシたちの話。

 彼らはギルドメンバー二人とギルドマスター、サブギルドマスターの四人で新規加入したいプレイヤーを面接していた。しかし途中でトシが悲鳴を上げる。


「ああ、もう! ギルドマスターってこんな面倒くさいのかよ! もう嫌だ!」


「ちょ、どこ行くんすかトシさん!」


「ちくしょう、みんないいよな! モンスター蹴散らしてストレス解消できるもんな! 俺なんか延々モンスターの攻撃受け続けなきゃいけないし、怖いんだよ俺だって! 痛いし! HPも味方のことも気にしなきゃいけないからストレス溜まるんだよ! ちょっと殴らせろキャリシー!」


「そんな、理不尽っす! ネートさん助けてください! あれ、無視っすか? 流行ってるんすか? 俺を無視するのはブームなんすか?」


「安心しろキャリシー。ここは安全圏だから殴られてもHPは減少しない」


「怖いんすよ! 殴られるのはトシさんの役目じゃないっすか!」


「……ほう?」


「あ、やば……」


「ちょっとフィールド行くぞ。大丈夫だ、俺がいないソロ戦闘の恐ろしさを教えてやるだけだからな。“万能魔術師”なんだろう?」


「いやそれ言い始めたの俺じゃないっす! 器用貧乏っすよ、しかもDEFはあげてないっす!」


 STRもあげてないため、筋力は互角の二人が無駄にいがみ合う。その光景は新規のギルドメンバーに『このギルド大丈夫かな』という思いを与え、二人いた古参組に『ああ、まだ仕事を増やしても大丈夫だな』と思わせた。



 こうして知らず知らずのうちにキャリシーもトシも苦労人のキャラを確立させていくのだった。


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